管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
4 巻, 1 号
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論文
  • 丸山 義博
    1996 年 4 巻 1 号 p. 3-20
    発行日: 1996/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    温室で生産する鉢花の生産計画問題について,経済性の面から検討し,不確定要素について種種の優劣分岐分析を行った.検討の対象として,君子蘭をモデルにし,生産計画期間を有限とした.開花率を考慮し,仕上げ鉢の大きさを4.5号から7号の範囲で互いに排反的な関係にある複数の生産計画案を設定し,これらの案の選択にあたり種子の供給に関する複数の方策を立てた.検討すべき項目は,(1)資本コストの種子の供給の仕方,(2)苗の確保,(3)種子の購入価格と購入間隔,の3項目とした.結果について,(1)は標準利率を考慮し,種子費CSと出荷価格α7に関して,(2)は方策の間で相違する費用に着目し,歩留まり率τと苗費CNに関して,(3)は出荷価格α6,α7に関して,それぞれ平面上の領域で示した.検討で得られた結果としての歩留まり率τ,開花率,出荷価格に関しては,他の鉢花の生産計画の検討にも応用できると考える.

  • 今林 正明
    1996 年 4 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 1996/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    変動製造間接費の原価差異分析をおこなう場合,従来の方法では,総差異を単に能率差異,予算差異に区分するにとどまっている.これは,製造部門活動量に対して変動原価が線形的に変化することを仮定し,かつ暗黙的に補助部門活動量と製造部門活動量もまた線形的に変化することを仮定しているためである.しかし,これらの仮定が満たされ無い場合,例えば,補助部門の不能率によって補助部門に投入された原価要素が無駄に消費されるとその浪費額が予算差異に含まれ,従来の方法は誤った原価情報を与えることになる.

    そこで,本論文では補助部門相互間に用役の授受が無い場合について,製造部門から補助部門にいたる複数の活動量を考慮した,変動製造間接費差異分析の方法を提案するものである.

    本論文では,以下の3モデルについて差異分析法を提案する.モデル1製造部門に投入された変動製造間接費要素と製造部門活動量および製品生産量との関係で差異分析を試みるモデル.モデル2 1補助部門と1製造部門が存在する場合について,補助部門に投入された変動製造間接費要素と補助部門活動量,製造部門活動量および製品生産量との関係で差異分析を試みるモデル.

    モデル3 1からmまでのm補助部門と1からnまでのn製造部門が存在する場合について,補助部門に投入された変動製造間接費要素と補助部門活動量,補助部門から製造部門へ提供される用役の提供比率,製造部門活動量および製品生産量との関係で差異分析を試みるモデル.

    これらのモデルによって示された変動製造間接費差異分析法によって,原価管理に有用な情報が得られることを示した.

事例研究
  • 伏見 多美雄, 末松 栄一郎
    1996 年 4 巻 1 号 p. 37-58
    発行日: 1996/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,伝統的な原価管理・予算管理のシステムが企業実践を適切にサポートできなくなっているのではないか,という認識や批判が高まっている.その対応には,制度としての原価会計や予算管理会計といったフレームワークを度外視した改善策もあれば,このフレームワークそのものを改善するというアプローチもあり,さまざまである.しかしいずれにせよ,その成否の評価は,個々の企業のおかれた時代環境と製品特性,企業をとりまく競争構造や企業の収益構造,そして経営戦略にマッチしたものであるかどうか,という視点からなされなければならない.フィールド・スタディが重視されるゆえんである.

    本稿は,そのような問題意識から,自動化のための特殊な制御機器を専門に生産する日本の中堅メーカーS社の事例をとりあげ,同社が独自に開発した「基本原価」および「独算制」と名付けたコスト・マネジメント・システムの特徴を,上述のような視点から整理し,基本的な諸問題を論じようとするものである.

    第1節で問題意識と本稿のねらいを述べたあと,第2節でケース企業の概要を紹介する.そして第3節ではS社をとりまく企業環境と製品特性,競争構造・収益構造に目を向け,同社がとってきた高シェア・高収益戦略の背景を明らかにするとともに,基本原価システムを導入するに至った理由を検討する.第4節では,「基本原価」システムの考え方の本質を分析し,高シェア・高収益戦略をサポートする仕組みを明らかにする.第5,6節で近年の企業環境の変化が基本原価システムに与えたインパクトを整理し,基本原価システムに内在する問題点を分析・提示する.

  • 金 舜基, 李 健泳, 金 達坤
    1996 年 4 巻 1 号 p. 59-76
    発行日: 1996/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    半導体組立専門業者である亜南産業(株)は,アメリカ現地法人,AMKORからの勧誘により1990年9月にABC導入を決め,1992年から全社でABCを実施するようになった.半導体産業には独特な取引構造があり,そのため,同社の総製造原価で占める製造間接費の割合は非常に高く,同社の製造間接費の配賦基準は製品原価の算定に大きな影響を与えている.このような背景から,顧客との製品価格の交渉で他社との価格差による製品原価の妥当性が問題になり,営業側からの配賦基準の見直しの要請がABC導入の契機になった.

    同社は,ABC導入において予想される縦割部門組織での抵抗とシステム分析にかかる費用/便益を考慮し,同社の部門を中心とした部門別活動基準原価計算を行なっている.同社のABCは,まず各部門の目標原価としての予算額を,部門の活動分析によって把握された部門内の各活動に割り当て,その活動原価をコスト・ドライバーにより製品に跡付けるものである.既存研究では同社のこのようなアプローチが平均的な負荷量による任意配賦にもとづくために問題があると批判されているが,他方では部門別活動分析の有効性に対する支持も現われている.

    同社は,ABC導入により,製品原価の歪曲を是正した.その結果,顧客との製品価格交渉がABCからの情報に基づいて行なわれ,仕様の差による異なる製品価格の裏付けが容易になった.同社の部門別活動基準原価計算は,既存の部門組織での抵抗を円満に解決しながら,活動分析に基づく組織再編成にも有効であることが実証された.

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