臨床神経生理学
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50 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 宮林 知誉, 林 浩伸, 高谷 恒範, 重松 英樹, 本山 靖, 中瀬 裕之, 川口 昌彦
    2022 年 50 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    脊椎外科手術における術中の運動誘発電位 (MEP) モニタリングは, 運動経路の機能的評価に有用である。神経筋遮断薬はMEP波形を抑制するため, 麻酔導入時に挿管を容易にする目的で投与した神経筋遮断薬の効果を十分に回復させてからMEPモニタリングを開始する必要がある。近年, 当院では, ベースラインMEP記録時に神経筋遮断状態が残存している場合, 筋弛緩薬の拮抗薬であるスガマデクスを用いて神経筋遮断を解除している。我々は, 当院におけるMEPモニタリング開始のためのスガマデクス投与の頻度を後方視的に調査した。さらに, スガマデクスの投与が筋弛緩薬投与からベースラインMEP開始までの時間とベースラインMEP振幅に及ぼす影響について評価した。対象は2013年から2018年に全身麻酔下脊椎脊髄手術中にMEPモニタリングを実施した471症例 (20~96歳) とした。全症例471例に対するスガマデクス使用例の割合は59.4% (280例), スガマデクス非使用例の割合は40.6% (191例) であった。スガマデクス使用群は非使用群と比較し, 筋弛緩薬投与からMEP記録開始までの時間が有意に短く, 除圧操作前に記録したベースラインMEP振幅が有意に高かった。MEP記録開始のためのスガマデクス投与は, 速やかな手術進行とMEP記録の精度向上に貢献するものと考えられた。

特集「電磁気生理学検査のAI診断」
  • 平田 雅之, 野寺 裕之
    2022 年 50 巻 2 号 p. 57
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
  • 藤原 幸一, 宮島 美穂, 山川 俊貴
    2022 年 50 巻 2 号 p. 58-63
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    てんかん発作を発症前に予測できれば, てんかん発作による怪我や事故を回避できるため, てんかん患者のQOLを改善できると期待される。心拍変動 (HRV) は, 自律神経活動を反映する生理的な現象として知られる。てんかん発作起始前における過剰な神経活動は自律神経系に影響を与え, 自律神経系の変化はHRVにも影響するため, HRVを監視することにより発作を予知することができると考えられる。我々は, これまでにHRV解析と異常監視技術を統合したてんかん発作予測AIアルゴリズムを開発した。さらに, 実用化を目指して, 心拍データを測定するウェアラブルカメラと予知AIアルゴリズムを組み込んだスマートフォンアプリを開発している。本稿では, てんかん発作予知AIシステムの開発状況や展望を紹介する。

  • 平田 雅之, 平野 諒司, 江村 拓人, 中田 乙一, 中嶋 俊治, 朝井 都, 下野 九理子, 貴島 晴彦
    2022 年 50 巻 2 号 p. 64-68
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    てんかんの脳磁図検査には等価双極子法が用いられているが, 解析に多大な時間がかかる。そこで, 等価双極子解析を完全自動化する手法を目指し, 今回, 深層学習によりてんかん棘波を自動検出する手法を開発し, その性能を評価した。解析済みの脳磁図てんかん検査例を対象とした。医師がてんかん棘波と判断して等価双極子解析したデータを棘波有データ, 医師が棘波なしとしたデータを棘波無データとして, それぞれ切り出し, 学習に用いた。てんかん棘波の有無の分別には, SERes2Netを用いた。その結果, 棘波検出性能はAUC 0.957, 特異度 0.981, 感度 0.720であった。心電・筋電ノイズ, μ波等の棘波様波形の誤検出はなかった。解析済みデータを深層学習に学習させることにより, 実用レベルで脳磁図てんかん棘波の自動検出ができた。今後は等価双極子解析の完全自動化を目指す。

  • 野寺 裕之
    2022 年 50 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    針筋電図放電の判別には, それぞれの放電に特徴的な音の性質をつかむことが有用である。我々は安静時放電の自動判別のために機械学習とディープラーニングを用いた2種類の方法を用いた。音声特徴量を抽出し, 機械学習アルゴリズムにて学習・判別を行うことにより6種類の安静時放電の正判別率が90.4%だった。ディープラーニングを行うため, 音声データをメルスペクトログラムに変換し画像判別のタスクを用いた。判別率上昇のためにはデータ増幅と一般画像判別の重み使用 (ファインチューニング) の組み合わせが有用であり, 機械学習よりも高い判別率を示した。AIによるアシストシステムを用いた針筋電図検査環境が近い将来に整備される可能性がある。

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