臨床神経生理学
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41 巻, 4 号
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原著
  • 鴨 宏一, 村松 歩, 多屋 優人, 横山 浩之, 浅川 徹也, 林 拓世, 水野(松本) 由子
    2013 年 41 巻 4 号 p. 193-201
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究では携帯端末による情動刺激下での脳波を用いた脳機能の評価を目的とした。被験者は健常成人24 名で,Cornell Medical Index(CMI),日本版State-Trait Anxiety Inventory(STAI),簡易ストレス度チェックリスト(SCL)によって心身状態を評価し,心理検査低値群と心理検査高値群に分類した。情動刺激は,情動的視聴覚セッション(安静,快,不快)と情動的文章セッション(快文章,不快文章)を用意し,携帯端末からの視聴覚刺激として被験者に提示し,脳波を計測した。脳波は離散フーリエ変換を行い,パワースペクトル値を算出した。α2 帯域の結果から,心理検査高値群は不快刺激および不快文章刺激時に側頭部でスペクトル値が高値を示した。以上より,携帯端末による情動刺激が精神安定度と関連して,脳機能の反応に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 吉田 翔太, 桐本 光, 松本 卓也, 小島 翔, 鈴木 誠, 大西 秀明, 田巻 弘之
    2013 年 41 巻 4 号 p. 202-208
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    主動作筋の活動に先行して姿勢調節筋群が放電開始する現象は, 先行随伴性姿勢調節 (APAs) と呼ばれ, 補足運動野 (SMA) がその生成に関与すると考えられている。本研究では, SMAに対する経頭蓋直流電流陰極刺激 (陰極tDCS) が, APAsの機能に影響を及ぼすか否かを検討した。健常被験者11名が, 自己ペースで右上肢を急速拳上する課題を重心動揺計上で行い, この時の右三角筋と右大腿二頭筋の活動を表面筋電図で記録した。左側M1 (Cz上) とSMAに陰極tDCS (2 mAで15分間) 及び疑似刺激を行い, 刺激前後における両筋の放電開始時間差 (ΔEMG onset) の変化を比較した。陰極tDCS後におけるΔEMG onsetの有意な短縮はSMA刺激時にのみ認められた。APAsの生成にはSMAが重要な役割を果たし, また陰極tDCSはSMAの予測的姿勢調節機能を抑制し得ることが示唆された。
  • 浦上 裕子, 川村 光毅, 鷲沢 嘉一, 日吉 和子, チホツキ アンジェイ
    2013 年 41 巻 4 号 p. 209-219
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    音を聴覚的に認識し, ハーモニー, 音韻, 旋律など音楽を認知することで前頭前野が活動し行動が起こる。本研究は音楽大学学生5名,音楽専門家1名, 非音楽大学生5名 (21–25歳: 男9女2) を対象とし60 ch脳波を用いて安静閉眼時, 「新世界より」「レクイエム」聴取時, イメージ時の脳活動を計測し, 音楽認知の神経基盤を明らかにすることを目的とした。Morlet waveletによる時間周波数解析を行い, 各周波数帯域の平均信号強度をroot mean squareとして求め成分比較を行った。音楽聴取時は無音安静閉眼時に比べ, δ, α, β, γ活動に有意な減少を認めた。γ活動の減少が最も大きく, 全脳部位で有意に減少した。音楽家は音楽聴取時・イメージ時ともに前頭部γ活動が減少, 非音楽家はイメージ時には前頭部γ活動が増加した。音楽家と非音楽家のγ活動の差は, 音楽という経験による意識や注意, 情動の統合や潜在記憶の差を反映する可能性がある。
  • 小林 昌弘, 原田 譲, 庄司 和彦
    2013 年 41 巻 4 号 p. 220-224
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/01
    ジャーナル フリー
    末梢性顔面神経麻痺 (PFP) における積分筋電図と誘発筋電図の予後推定能の比較を行った。PFP患者123名を対象とし, 回復が6カ月以上を予後不良群, 3カ月以内を早期回復群とした。眼輪筋において積分筋電図および誘発筋電図の測定を発症直後, 発症2週間後に行い, 患側値/健側値比を求めた。これら4種類の患側値/健側値比がいかに予後不良群, 早期回復群を識別できるかROC曲線を作成し, ROC曲線下の面積 (AUC) および, ロジスティック回帰分析を用い比較した。予後不良群, および早期回復群いずれの識別においても発症2週間後の誘発筋電図のAUCが最も高値であり (予後不良群の識別: 0.894, 早期回復群の識別: 0.931), ロジスティック回帰分析においても予後との間に有意性がみられた (p<0.01) 。しかし予後不良群の識別や発症直後における予後推定の信頼性を高めるためには今後さらなる検討が必要である。
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