臨床神経生理学
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50 巻, 1 号
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原著
  • 立川 諒, 木村 友昭
    2022 年 50 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー

    MMN (Mismatch Negativity) は, 脳内の自動処理過程を反映する神経生理学的指標の1つである。これまで, 運動負荷がMMNに及ぼす影響について検討した報告が少ないことから, 本研究はその影響について明らかにすることを目的とした。男子学生20名 (20.9±1.4歳) を対象に, 繰り返しの把持運動前後でERP (Event-related Potentials) を記録し, 差分波形からMMNを求め, その比較を行った。MMN潜時は運動負荷前後の有意な変化は認められなかった。前頭成分のMMN振幅が, 運動負荷後に有意に減少し, 側頭成分の有意な変化は認められなかった。このことから, 一定強度での把持運動負荷が, 前頭成分に反映される注意転換機能を低下させることが示唆された。一方, 側頭成分の有意な変化が認められず, 把持運動負荷は前頭及び側頭成分に対して異なる影響を与える可能性が示唆された。また, 本研究の結果は, 把持運動負荷により情報処理機能が抑制傾向へと変化したことを示す先行研究の結果と同様のものであった。

  • 貞廣 茂樹
    2022 年 50 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー

    頻度依存性伝導ブロックとは, 神経伝導において複合活動電位の頻度 (周波数) が増すにつれてその振幅が低下する現象である。この現象が起こる機序として, これまで頻度の増大に伴う安全因子 (=駆動電流/閾値電流) 分母の増大が想定されてきた。最近, 筆者はケーブル理論について理論的に考察することにより長軸方向の電流振幅が頻度に依存する可能性を見出した。すなわち, 軸索が理想的な導体ではなく導体と絶縁体両方の性質を併せ持つことを考慮して理論を修正すると, ある頻度以上では長軸電流振幅が頻度の増加とともに低下することを示すことができる。これは安全因子の分子を低下させることに他ならず頻度依存性伝導ブロックの原因となり得ると考えられる。

特集「脳深部刺激療法の現状と未来」
  • 藤井 正美
    2022 年 50 巻 1 号 p. 15
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー
  • 小林 正人, 氏原 正樹, 平田 幸子, 脇谷 健司, 藤巻 高光
    2022 年 50 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病 (PD) に対する脳深部刺激術は, 2000年の保険適用以来運動症状を改善しうる外科的治療手段として広く行われてきた。STN-DBSは抗PD薬 (抗パ薬) も減量しうる優れた治療手段だが, 抗パ薬の減量には時に注意を要する。近年GPi-DBSがSTN-DBSに比較して劣るものではないことが報告された。我々は低体重, BMI低値のPD患者ではSTN-DBS術後に薬剤や刺激条件の調整に苦慮しうることを報告して以来, 低体重患者にGPi-DBSを積極的に選択するようにしている。そうした治療方針で当院にて外科的治療を受けたPD患者を解析するとGPi-DBS術後には, 術後の減薬効果はSTN-DBSに劣るもののSTN-DBSと同様の症状改善が得られ, 術後の投薬量や刺激の調整はより容易でかつ術後経過も問題がないことが明らかとなった。すなわち, STN-DBS術を受けた低BMI (20未満) の患者は不安感や息苦しさ, 精神状態の不安定などのために救急受診を含めより頻回に外来受診を繰り返した一方GPi-DBSの術後は定期的な受診 (3か月間に3回以下) のみで術後早期の薬剤・刺激管理は容易であり, 運動合併症の改善の他, 息苦しさなどの訴えも軽減した。またGPi-DBS術後の70歳以上の高齢者において高次機能や精神症状の増悪を認めなかった。低体重, BMI低値の患者では, 投薬量の変更が病状に及ぼす影響はより大きく, STN-DBS後の投薬量・刺激調整に苦慮しうる。GPi-DBSは高齢者でも高次機能障害や精神症状を誘発することなく, 術後の投薬調整も容易で安全であった。GPi-DBSでも減薬やoff時間短縮効果は期待できるため低体重や高齢など術後の合併症が懸念される患者に対しては考慮すべき治療法である。

  • 藤井 正美, 長綱 敏和, 長光 逸, 金子 奈津江, 安田 浩章, 浦川 学, 山下 哲男
    2022 年 50 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー

    不随意運動症に対する脳深部刺激療法 (DBS) は確立された治療として普及が進んでいるが, 刺激のプログラミング法については, 一般に理解されているとはいえない。さらに近年新機種が次々と上市され, 操作が複雑化している。今回我々はDBSのプログラミングについての基本と応用について概説する。刺激の基本は刺激幅 (パルス幅) を60–90 μs, 刺激頻度を130–185 Hz程度の高頻度刺激とし, 刺激強度 (mAまたはV) を変えることで調整する。最近は定電流設定がよく用いられている。脳内リードには4極または8極の電極が埋め込まれており, 効果および副作用をみながら至適電極を決定する。刺激方法には単極刺激と双極刺激がある。近年ディレクショナルリードの導入により特定の方向に刺激が可能となり指向性が高くなった。さらにMRIおよび術後CTの重層画像より標的核や白質線維とリードとの位置関係が可視化できるようになり, プログラミングに有用な情報が得られるようになった。刺激装置 (IPG) の進歩も著しい。複数のプログラム設定 (通常4設定) ができるようになり (グループ設定), 患者自身が自宅でプログラムや強度の変更ができる。またBluetooth®機能でIPGと通信しワイアレスでの刺激調節が可能になっている。さらに脳内の局所神経活動を検知し, その変化に応じて刺激強度を自動調整する機種も開発された。これからの時代, 日進月歩するIPGに対応できるよう医療従事者の教育を進め, 装置を埋込んだ患者が困らないような体制作りが求められている。

  • 池田 俊勝, 大島 秀規, 深谷 親, 吉野 篤緒
    2022 年 50 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー

    本邦において, 2020年末に世界に先駆けて, “closed-loop”調整機能を持つadaptive DBS (aDBS) を使用することが可能となった。これは, 症状の変動と相関する神経活動を検出し, それに応じて脳深部刺激を調節するものである。パーキンソン病を始め, DBSの適応となる不随意運動症の症状を検出する方法は様々な方法が試されてきたが, 刺激を行うために脳深部に留置した電極を利用し, 基底核のlocal field potential (LFP) を利用する方法が選択された。LFPからは周波数帯によるoscillationが観察され, 特にlow-β帯域のoscillationはパーキンソン病の運動症状と相関することが知られている。LFP解析のこれまでの研究は, パーキンソン病の新しい病態生理の解明にもつながった。当施設での使用経験から, 発展中のaDBSの問題点を考察し, 今後の展望を述べる。

  • —特にてんかんと精神科疾患について—
    杉山 憲嗣
    2022 年 50 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー

    脳深部刺激療法は, 1960年代に難治性疼痛への治療法として登場し, 1987年から不随意運動疾患に対しても適応された。脳内のループ回路障害の治療法として脚光を浴び, 世界的に神経難病の中でループ回路障害の探索がなされ, 回路障害が推定されたものに対してDBSの試行が行われた。その中に, てんかんに対するDBSと精神科疾患に対するDBSが存在した。てんかんに対するDBS では, 薬剤難治性の部分発作に対して, closed loop DBSを使用するシステムと視床前核へのDBSがFDAで認可された。精神科疾患に対するDBSで, うつ病に対するものは, 長期的オープン試験での症状改善が報告され, 今後, 長期に渡るランダム化比較試験が必要と思われる。また強迫性障害に対するDBSは, まだ「確立された治療」とは見なされなかったが, 本邦での施行に向け, 精神科医が関心を持ち, 脳外科医との間の議論が続くことを期待する。

  • 深谷 親
    2022 年 50 巻 1 号 p. 38
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/10
    ジャーナル フリー
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