せん妄は入院中の高齢者において頻度が高く, 予後の悪い疾患であるため, 早期発見, 介入が重要であるが, 見過ごされやすく適切な治療が行われないことも多い。現在よく使用されているせん妄スクリーニングツールであるConfusion Assessment Method (CAM) などは感度や特異度は優れているとされるものの, 多忙な臨床現場においては感度が著しく低下することが報告されている。その一方で脳波計によってせん妄が検出できることは以前より良く知られており, diffuse slowingと呼ばれる全電極での徐波が特徴的所見とされている。しかしながら, 電極の配置や判読には専門的知識が必要とされており, 機器自体も大きいためスクリーニングツールとしては使用しづらい。そこで我々は, せん妄の特徴的所見に着目して, 限られた電極から得られる脳波を用いたBESEEG (bispectral EEG) と呼ぶ独自のアルゴリズムを開発し, せん妄の検出や転帰予測に用いることができることを示した。本稿では, これまでの研究の概要と発展の過程, 研究成果を示したうえで, 今後の展望について述べる。
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