臨床神経生理学
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50 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 田中 聡, 山本 建太, 工藤 淳子, 赤尾 法彦, 西松 輝高
    2021 年 50 巻 3 号 p. 77-82
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー

    経頭蓋MEPの問題点は開頭手術における感度の低さと脊髄手術における特異度の低さ, Anesthetic fadeによる偽陽性の多さにある。これらに対する末梢神経刺激compound muscle action potential (CMAP) 補正の有用性を検討した。術前麻痺を認めなかった238例の開頭手術の524筋と423例の脊髄手術の1536筋で感度と特異度を末梢神経刺激CMAP補正の有無それぞれでROC解析にて算出した。術前後を通じ運動神経症状の変化がなかった215開頭手術の505筋と416脊髄手術の1598筋で振幅低下が始まる手術時間前後の振幅相対値と振幅相対値が1未満となる割合を末梢神経刺激CMAP補正の有無で比較した。開頭手術の感度はCMAP補正なしで84.0%, 補正下で95.2%であった。脊髄手術の特異度は補正なしで95.2%, 補正下で96.9%であった。開頭手術では160分, 脊髄手術では270分以上の手術でAnesthetic fadeが観察されたが, いずれも末梢神経刺激CMAPにて補正された。【結論】経頭蓋MEPにおいて末梢神経刺激CMAP補正は開頭手術における感度を高め, 脊髄手術における特異度を高め, Anesthetic fadeを回避する上で有用である。

特集 「救急医療と神経生理」
  • 久保田 有一
    2022 年 50 巻 3 号 p. 83
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー
  • 松原 崇一朗, 中島 誠
    2022 年 50 巻 3 号 p. 84-88
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー

    急性期脳卒中には, しばしばてんかん発作 (seizure) が合併する。発症早期のearly seizureは, 近年は国際抗てんかん連盟の定義に基づいて急性症候性発作 (acute symptomatic seizure) と呼称されることが増えてきている。急性症候性発作は脳卒中の病態を修飾することで転帰の悪化につながる他, 脳卒中後てんかん発症のリスクにつながる可能性がある。急性期の病態悪化に関連する病態として, てんかん重積状態 (SE) があり, 中でも検出が遅れ重篤化しやすい非けいれん性てんかん重積状態 (NCSE) の合併も稀ではない。NCSEを含む長時間遷延したSEは, てんかん発症のリスクであることが近年報告された。コントロール不良のSEは二次性脳損傷を引き起こす可能性があり, 脳卒中を含む神経疾患では, 本病態のコントロールが患者の転帰を改善するために重要であることが, 神経集中治療領域で注目されている。一方慢性期脳卒中の合併症である脳卒中後てんかんの発症に関連する因子については, 様々な観察研究が行われ, 大脳皮質病変, 病変の大きさ, 若年, 出血性病変, 高い重症度に加え, 急性症候性発作が高リスク因子として認識されている。近年では, 脳卒中後てんかんの発症を予測するため, これらの因子を統合したスコアが提唱されており, 脳梗塞においてはSeLECTスコア, 脳出血においてはCAVEスコアが, それぞれ高いてんかん発症の予測精度を示すことが報告されている。これらのスコアに基づく高リスク症例においては, 早期の治療介入が脳卒中後てんかん発症抑制に期待されている。近年急性期脳卒中診療は目まぐるしい発展を見せているが, 急性期からのてんかん原性抑制や転帰改善のための治療について, 今後のエビデンス集積が期待される。

  • 吉村 元
    2022 年 50 巻 3 号 p. 89-93
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー

    神経救急疾患では後遺症を最小限にするため, 病態を迅速に明らかにして適切な治療を早急に開始する必要があるが, 臨床神経生理検査はその病態を明らかにする鍵となりうる。したがって, これらの検査は緊急で迅速に実施できることが重要である。本稿では脳卒中を除く主な神経救急疾患を末梢性の救急病態 (四肢筋力低下, 呼吸筋麻痺, 嚥下障害) と中枢性の救急病態 (意識障害) に分けて臨床神経生理検査の有用性とピットフォールについて概説する。具体的には, 前者に関しては, ギラン・バレー症候群急性期における神経伝導検査と重症筋無力症クリーゼにおける反復刺激試験の異常検出感度について, また血管炎性ニューロパチー急性期に認めるpseudo-conduction blockについて述べる。後者に関しては, 非けいれん性てんかん発作/非けいれん性てんかん重積状態の診断における持続脳波モニタリングの有用性と実施方法について解説する。

  • —特に短潜時体性感覚誘発電位検査に注目して—
    守谷 俊
    2022 年 50 巻 3 号 p. 94-98
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー

    救命救急センターには, 刺激に対して反応を示さない昏睡状態の患者が多く搬送される。いかなる疾患であっても気道, 呼吸, 循環の状態を安定化させるために蘇生行為を行い, 診断および治療を行いながら予後予測をできるだけ早く行うことは重要である。特に成人における心停止後の昏睡状態にある患者の予後評価は単独の検査で判断せず, 時間をかけて慎重に対応するよう日本蘇生協議会蘇生ガイドライン2020にも記載されている。その内容の多くは, 予後不良の所見を確認する作業に終始する。その一方で, 我々は, 蘇生直後の短潜時体性感覚誘発電位N20の陽性所見のみに注目し, 予後良好例は全例陽性であったことが明らかとなった。初期診療室における検査には困難が多々あるが, 蘇生直後の良好な予後が期待できる条件として短潜時体性感覚誘発電位N20陽性の所見が有用となる可能性があるかもしれない。

  • 福地 聡子, 久保田 有一
    2022 年 50 巻 3 号 p. 99-106
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー

    通常のICUでの脳波検査といえば, 臨床検査技師がポータブル脳波計を用いてベッドサイドで30分程度の記録を行うことである。しかし, 近年では救急・集中治療分野で持続脳波モニタリング (cEEG) の有用性が注目されている。cEEGとは, 脳卒中・頭部外傷・中枢神経感染症等で原因不明の意識障害患者を対象に24時間から数日間にわたり脳波を記録しつづける検査であり, 主な目的は非痙攣性てんかん重積状態 (NCSE) の検出である。つまり, NCSEの診断には脳波が必要不可欠である。cEEGは緊急検査であり, 臨床検査技師による速やかかつ安定した脳波測定, 医師による即時かつ正確な脳波判読, そして早期の適切な治療介入がきわめて重要になってくる。その結果, 重篤な脳損傷を防ぐことができ神経学的機能予後の改善に大きく貢献することができる。本稿では, cEEGの実際と陥りやすいピットフォールについて述べる。

総説
  • —脳波セミナー・アドバンスコース小委員会レポート—
    宇佐美 清英, 赤松 直樹, 飯村 康司, 井内 盛遠, 今村 久司, 榎 日出夫, 木下 真幸子, 國井 尚人, 小林 勝弘, 小林 勝哉 ...
    2022 年 50 巻 3 号 p. 107-112
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/06/17
    ジャーナル フリー

    臨床神経生理学会が主催し, 臨床脳波の専門的知識・技術習得を目的とした脳波セミナー・アドバンスコースは2020年で5回を数えた。この経験を踏まえ, 本邦の臨床神経生理学の臨床・教育・研究の発展に係る問題点と方向性をまとめた。未だ臨床実用段階ではないが, 今後, 臨床脳波は情報通信技術とAI (artificial intelligence) の発展・活用が期待される。同時に, 脳波判読にかかる各科の医師, 技師の養成を継続しつつ, 脳波報告書の解釈の標準化や, ICU (intensive care unit) での長時間脳波モニタを含む脳波保険点数加算の要望など, 脳波学を一般臨床へ還元できる体制を整えていく必要がある。脳波教育・研究の発展に関し, 国内外の関連学会と協力する余地がある。そして, 基礎と実践 (ハンズオン) の教育機会の均てん化のため, Webの活用や各地域で講師育成を行って最適化する必要がある。また, 生涯教育, ICU専従医師などさまざまなキャリアを持つ医療者向けに教育対象を広げるのが望ましい。

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