脳磁図を用いて測定できる聴性誘発脳磁界 (N1m) は, 約100 ms前後に生じ, 一次および二次聴覚皮質が起源となり, 聴覚心理現象に相関した変化を観察できることが利点である。聴覚的なマスキング現象には, 末梢性および中枢性の古典的なエネルギーマスキング以外の要素も存在し, より高次的な処理も行われている。音楽により誘発されるN1mを用いた検証では, 音の複雑さや訓練, 学習, 音楽経験によってN1mが増強される一方で, 音楽自体が別刺激由来のN1mを妨害 (非エネルギーマスキング) しうることも報告される。そのほか, N1mは音刺激に注意を向けると増強し, 別の音や視覚的な刺激に注意を向けると抑制されることも知られる。聴覚の選択的注意の定量化については, 聴覚注意課題を用いた報告もあるが, MEGを活用した例としては, 時間周波数解析を用いた報告も近年増えてきており, 選択的注意のさらなる知見が加わることが期待される。
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