臨床神経生理学
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49 巻, 2 号
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原著
  • 鶴田 菜月, 福本 悠樹, 東藤 真理奈, 谷 万喜子, 鈴木 俊明
    2021 年 49 巻 2 号 p. 45-53
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    実運動と運動イメージの併用が運動の正確性と脊髄運動神経の興奮性にどのように影響するか検討した。KVIQ3以上である健常者8名 (平均年齢20.1歳) を対象に実施した。安静F波測定後, 20%MVCのピンチ力に調節する練習中のF波を測定し, 直後にピンチ課題を与え, 予め規定した20%MVCのピンチ力値と, 被験者が実行し発揮したピンチ力値の誤差を絶対値で算出した。続いて, 運動イメージ中のF波測定後, 再度ピンチ課題を与えた。次に実運動と運動イメージの併用中のF波を測定し, その後ピンチ課題を与えた。最後に安静F波を測定した。振幅F/M比とF波出現頻度は安静に対して各試行で増加していた。また, 安静の振幅F/M比と比較した各試行での振幅F/M比の差で算出した振幅F/M比変化量と絶対誤差の関係は, 誤差が小さい者は振幅F/M比変化量が収束していた。実運動と運動イメージの併用で脊髄運動神経の興奮性が高まるが, 高まりすぎない場合で正確性が向上する可能性が考えられる。

  • 福本 悠樹, 鈴木 佑有可, 伊藤 浩平, 才野 茜音, 細尾 菜月, 鈴木 俊明
    2021 年 49 巻 2 号 p. 54-61
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    運動イメージの実施対象と同側で運動練習を行わせると, 運動イメージが運動の正確度を維持させると分かった。本研究では同側での運動練習が困難な場合を想定し, 運動イメージの実施対象と対側で運動練習を行わせていた場合でも同等の効果が得られるかについて検証することを目的とした。健常者20名に対し安静のF波測定後 (安静1回目), ピンチ力を目標値に調節する練習を右手で行わせた。次に, 運動練習したことをあたかも左手で行っているかのようにイメージさせF波を測定した (運動イメージ試行) 。運動イメージ後, 目標値へピンチ力を調節するよう指示し運動の正確度を評価した (ピンチ課題) 。別日には, 運動イメージ試行を再度の安静 (安静2回目) に入れ替えたコントロール課題も設定した。運動の正確度の指標は, 目標値からの発揮ピンチ力誤差を絶対値に変換した値 (絶対誤差) を採用した。結果, イメージ課題とコントロール課題間で絶対誤差に差はなかったが, 安静と比較した運動イメージ試行でF波出現頻度が増大した。

  • 橋本 朋久, 宇野 耕吉, 川北 晃平, 鈴木 哲平, 伊藤 雅明
    2021 年 49 巻 2 号 p. 62-70
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    経頭蓋電気刺激筋活動電位 (Muscle evoked potential after electrical stimulation to the brain: Br(E)-MsEP) は薬剤の蓄積などを原因とした振幅低下 (Anesthetice Fade) の対策が課題として挙げられる。今回, 刺激強度の増加が振幅値に与える影響を観察研究にて検討した。脊椎脊髄手術528例を対象とし, 120例の波形低下を認めた。この内, 刺激強度の増加により65例 (54.2%) の振幅回復を認め, さらにダブルトレイン刺激の追加によって9例 (7.5%) に振幅回復が得られた。刺激強度の増加で振幅回復が得られなかった患者46例の内, 28例では麻酔科・外科介入で振幅回復が得られた。振幅が回復した102例 (85%) は, 神経予後が良好であった。最終波形においてベースライン振幅値の30%未満を認めた18例中11例 (61%) では, 術後神経障害が発生した。Fadeが疑われる症例は刺激強度の増加により, 振幅回復が認められる傾向を認めた。

特集 「神経生理検査における医師と検査技師の連携 (技師はどこまでするべきか)」
  • 髙橋 修, 幸原 伸夫
    2021 年 49 巻 2 号 p. 71
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー
  • 髙橋 修
    2021 年 49 巻 2 号 p. 72-75
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    生理検査は, 患者に直接接して行う検査であり, 医師と臨床検査技師の両者が携わる分野であり, 検査によっては, 医師よりも臨床検査技師が行う頻度が高いものも少なくない。したがって臨床検査技師は, 医師と十分な信頼関係の中で, 精度の高い検査記録を報告する責任があり, 相応の知識と技術が要求される。本稿では, 臨床検査技師が日常的に関わる神経生理検査について概観し, 検査を施行する上で医師との連携や検査を行う上での役割や心構えなどを述べる。

  • 松下 隆史, 佐々木 一朗, 幸原 伸夫
    2021 年 49 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    患者さんの身体の状態を評価するための, 臨床検査を行う専門の技術者が臨床検査技師とされており, それは医師あるいは歯科医師の指示のもとに行われる医療行為であるとされているが, その権限の行使についての考えが不確かになりつつあると思われる。その原因は, 環境要因・医師と技師の連携不足・技師の認識不良などが考えられる。そこで今回我々は, 臨床検査技師の立場や権限を再確認し, 日常の医療行為を行う中で, 「神経生理検査における医師と技師の連携 (技師はどこまでするべきか) 」について当院の神経生理検査における実状を踏まえて報告するとともに, その良い点, 問題点についても考えていきたい。

  • 石郷 景子
    2021 年 49 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    当院で行っている脳波検査とポリソムノグラフィ検査 (PSD検査) に絞って話を進めていきたい。脳波検査は, 電子カルテにオーダーが入り, 臨床診断, 検査期日を見るだけで脳波検査を実施するだけではいけない。無呼吸, 酸素低下, 足がピクピクするなど, 患者さんの現状を引き出す記録を追加するのが必要である。また, 症状や発作のでる時間帯など主治医と相談して決定する。20年ほど前から脳波レポートは医師と共有のものを使用している。ポリソムノグラフィ検査は, 簡易検査, PSG検査, CPAP (Continuous Positive Airway Pressure) 導入, CPAP面談の一連を行っている。CPAP面談では, アドヒアランスの向上のため患者さんの話を傾聴し, いろいろなアドバイスを行っている。患者さんの間ではCPAP面談は好評である。検査も日々進歩し技師も知識と経験が要求される。医師も専門技師だからと検査室に質問や相談に来る。絶えず勉強し新しい知識を習得し, 臨床医に答えられるように努力していきたい。

  • 大崎 裕亮, 高松 直子, 和泉 唯信
    2021 年 49 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    筋電図検査は患者個別に最適化を要し, その最適化には検査特性や神経筋疾患の病態に関する専門的知識が求められる。筋電図検査が神経筋疾患の診療に有効であるためには, 少なくとも専門知識を持った監督者が検査実施現場に配置される必要がある。その監督業務を担うための技能取得が, 今後ますます検査技師に求められていく可能性がある。厚生労働省はタスク・シフティング等医療勤務環境改善推進事業において, 検査業務を医師から技師に移していく方針を掲げているためである。本稿では, 筋電図検査における検査技師の役割は何かという問いに対して本学会内での議論を活発化させることを目的として, 筋電図検査実施体制について当院での体制を例示し, 現状とタスク・シフトが求められている時流を踏まえた理想像について述べる。

  • —急性期の一般病院で働く脳神経内科医の立場から—
    幸原 伸夫
    2021 年 49 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    医師と技師は実際の検査では重なる部分はあるが, 記録のプロフェッショナルとしての技師, 病態解釈のプロとしての医師の特性を生かした役割分担が大切である。また日常的なコミュニケーションが可能になるような工夫も必要だろう。連携の上で問題が生じた場合には「不十分な検査と誤った解釈は検査をしないよりももっと悪い」「適切な検査と正しい解釈は患者さんの治療に直結する」ことを判断基準にして真摯にディスカッションすることで, 課題を解決し, よりよい関係へと前進できると思う。

日本臨床神経生理学会第10回学会賞
その他
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