流通研究
Online ISSN : 2186-0939
Print ISSN : 1345-9015
ISSN-L : 1345-9015
5 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 栗木 契
    2002 年 5 巻 2 号 p. 1-16
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    マーケティングによる消費者へのコミュニケーションは、オープン・コンティンジェンシー構造に直面することになる。オープン・コンティンジェンシー構造とは、偶有性 (=他でもあり得る可能性) を閉ざそうとするときに、さらなる偶有性に開かれていくという関係の構造である。
    本章では、理論的な検討を通じて、このオープン・コンティンジェンシー構造の2つの基本的な系列、すなわち時間の流れのなかで偶有性に開かれていく関係の系列と、論理階型を通じて偶有性に開かれていく関係の系列のもとに置かれたマーケティング・コミュニケーションが、一定の理解や評価をその受け手の間で確立する機制を提示する。この局面で解釈の再帰的循環が果たす役割と限界が指摘される。
  • 杉本 宏幸, 中西 正雄
    2002 年 5 巻 2 号 p. 17-34
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本論文は、卸売企業がその取引先である中小小売業に対して行うリテール・サポート活動の効果とその意義について、ゲーム理論的分析を基礎に検討を行ったものである。これまでリテール・サポートは主に卸売企業間の水平的競争の一手段と考えられ、卸売企業の将来戦略の方向を示すものとして論じられてきた!これに対し本論文では、リテール・サポートの分析に、卸売企業が取引先中小小売企業とともに、大規模小売企業と競争する「段階問競争」という新たな視点を導入し、リテール・サポートは卸売企業と取引先中小小売企業にとっての「共存共栄」のための方策として機能しうることを指摘した。さらに卸主導のフランチャイズ制の下で遂行する卸売企業がリテール・サポートを推進する誘因があることが示された。
  • RBVの理論的貢献の可能性について
    宮崎 哲也
    2002 年 5 巻 2 号 p. 35-49
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿は、近年、戦略的経営の領域において注目を集めている資源ベース論 (Resource-BasedView, RBV) の現実的な知見を、これまでの経済理論では十分には明らかにされてこなかった寡占的市場構造の形成過程を説明するための有効なツールとして導入することを目的としている。
    まず、RBVを概説し、次いで産業組織論に属するSCPパラダイムとマルキシアンビュー (Marxian View, マルクス経済学およびそこから派生した諸説、MXV) で重要な概念となっている寡占的市場構造に関するロジックを交えながら、RBVの理論的貢献が可能な領域について論及する。特にRBVに基づき、寡占体制成立前と成立後の競争抑止の機構をディターラントメカニズムという新たに創作した概念を用いて整合的に説明することを試みた。
  • 簡 施儀
    2002 年 5 巻 2 号 p. 51-62
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿では、ジェンダーのアプローチを利用して既存研究を理論的に再考察し、『就業構造基本調査』と『事業所統計調査』及び『事業所・企業統計調査』にもとついて主な家族従業者の属性を確認し?家族従業者の構成に関して考察した。その結果、既存研究では家族従業を家族従業そのものとして捉えていたため、家族従業の内部構造を無視していたことが明確になった。そして、主な家族従業者は女性であり妻であることが明らかになった。最後に、男性家族従業者、主に後継予定者の減少が家族従業者の構成を変化させたということを示唆した。
  • 坂田 隆文
    2002 年 5 巻 2 号 p. 63-75
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿は小売業態論の既存研究において想定されているいくつかの前提を再考し、小売業態論の新たな発展可能性を見出すことを目的としている。既存の小売業態論では小売業態を考察する意義、その中心課題となる事柄、小売業態を規定する小売ミックスや商品取扱い技術といったさまざまなテーマを議論してきており・その研究蓄積も多数存在する。しかしながら、それらの研究においては、わが国における荒川 (1962) 、欧米における McNair (1958) といった小売業態論の嚆矢とも言える研究において想定されてきた「小売業態とは小売商における競争過程を分析するための概念である」という前提がほとんど問われることなく発展してきたように思われる。
    本稿では、これまでの小売業態論が小売ミックスや商品取扱い技術による小売業の分類としての小売業態によって小売商の競争過程を眺めようとしてきたのに対して、以下の3つの結論を導いている。それは第1に、小売業態とは一旦規定された後にも、いかようにも変容する可能性をもっているという結論である。この結論は次の結論を導くものである。すなわち第2に、小売商の競争過程の中から生じてきた小売商どうしの「差」こそが小売業態に他ならないという結論である。さらに第3に、この「差」を規定する要素には価格や品揃え、販売方式、営業時間、店舗特性、など多岐にわたるものがあるが、何が小売業態間の「差」を規定できるのかは競争を通して事後的に判断されるという結論である。その上で、このように「差」としての小売業態という概念から、今後議論されるべきテーマとして、特定の小売業態に特化した小売業態分析を挙げている。
  • 共約不可能性の問題について
    水越 康介
    2002 年 5 巻 2 号 p. 77-94
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    共約不可能性は、これまで、理論の妥当性1を問うてきたマーケティング方法論研究にとって致命的な問題であるとされてきた。というのは、共約不可能はその定義からして、理論の妥当性を確保するための判定基準の存在を否定するからである2。ゆえに、共約不可能性と理論の妥当性は二律背反関係にあるとみなされてきた。しかし、それは本当だろうか。本稿の目的は、共約不可能性の存在を前提とした上での、理論の妥当性確保の可能性を示すことにある。仮に共約不可能性が存在していたとしても、共約不可能性がパラドキシカルな性格を有しているとすれば、理論の妥当性確保の可能性は常に存在するといえる。なぜならば、共約不可能性は強固になりつつも、一方で常に崩壊する契機を内在させているとすれば、共約不可能性は外部からの判定基準があろうとなかろうと自らの理由で壊れるといえるからである。共約不可能性が壊れたその時が、新しい妥当性が生まれる瞬間となる。換言すれば本稿は、判定基準によって理論の妥当性が得られるのではなく、逆に、共約不可能性が壊れることによって理論の妥当性が得られる可能性、あるいは、さらにその後で判定基準が得られる可能性について言及している。
feedback
Top