流通研究
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5 巻, 1 号
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  • 「アメ横」商店街の事例研究
    畢 滔滔
    2002 年 5 巻 1 号 p. 1-26
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本論文では, 広域型商店街に立地する大型店舗は商店街全体の集客力にどのような影響を与えるか, また, 商店街内部の大型店舗と中小小売商の共存共栄の関係はいかにして形成されるか, という問題を, 東京都台東区の「アメ横」商店街の事例研究を通じて明らかにした.
    広域型商店街内には, 買回り品を中心的に取扱う大型店舗が立地するため, これらの大型店舗はより広い地域の消費者を引き付けることができる.しかし, 大型店舗に引き付けられる顧客は, 商店街の中小小売商の店舗までにも商品を探しに行く保証がなく, 広域型商店街において大型店舗と中小小売商が自然に共存共栄の関係にはなりえない.商店街内部の中小小売商は, 大型店舗と共存共栄の関係を形成するために, 大型店舗によって引き付けられた消費者の欲求を注意深く観察し, その欲求を満たすことができるように業種と品揃えを調整すべきである.これによって, 商店街内部の小売店舗の競争は激化するが, この競争活動の存在こそが, 商店街全体の集客力が向上し, 商店街の小売店舗間の共存共栄の関係が形成される最も重要な要素である.
  • ビブレのケース
    近藤 公彦
    2002 年 5 巻 1 号 p. 27-46
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は、ニチイ (現マイカル) によるビブレの業態開発プロセスをケース・スタディの対象としながら、イノベーションと競争の視点から業態開発における研究モデルを探ることにある。このケース・スタディを通じて発見された事実は、次の2点である。第1に、新業態の開発は既存業態との異業態性を克服するなかで行われるものであり、そのプロセスにおいて商品調達、商品政策、および販売方法の3つの側面でイノベーションが引き起こされたこと、第2に、開発された新業態の競争優位は地域的可変性と時間的可変性から構成される業態可変性を基礎としていること、である。
  • 熊倉 広志
    2002 年 5 巻 1 号 p. 47-59
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本研究においては、20/80 の法則の形成メカニズムに依拠し、任意のパッケージ財市場を分析・比較する手法を提案する。20/80 の法則は、パッケージ財市場において遍く成立する。そして、同法則の形成メカニズムは、新製品の発生と製品の成長に注目したシミュレーション・モデルにおいて明らかにされている。そこで、新製品の発生確率と製品の成長率を用いて、任意の市場を分析・比較できる手法を提案する。そして、この手法による市場の記述と市場に対する一般的な認識とが合致することを、事例を用いて示す。さらに、ポートフォリオ戦略への実務的な示唆を導出する。
  • 内部競争と顧客志向の連動
    松尾 睦
    2002 年 5 巻 1 号 p. 61-78
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本研究は、顧客志向と内部競争に焦点を当て、これまで曖昧にされてきた営業組織の革新性を解明することを目的としている。実証データを分析した結果、内部競争と顧客志向の連動が、営業部門の革新性を促進していることが明らかになった。すなわち、顧客が重視されている営業部門では、重視されていない部門に比べて、内部競争が協調志向や革新志向と強く関係していた。こうした結果は、顧客志向が内部競争と連動することで、非生産的な対人コンフリクトを抑制し、生産的なタスク・コンフリクトを促進しているためであると解釈された。
  • 豊島 襄
    2002 年 5 巻 1 号 p. 79-100
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    経営やマーケティングの研究者の問でも、研究の「方法論」の問題は避けて通られがちであるという。しかし、経営やマーケティング研究に実務へのインプリケーションを求め続けてきた筆者30年の実務経験の中で絶えず感じてきた不満の根本原因を辿ると、それらが拠って立つ方法論の問題に行き着く。具体的にはその不満は、「実証主義」が無批判的にメインパラダイムになっているというところにあり、それが依拠する「存在論と認識論」にあるように思われる。
    この筆者の問題意識に応える研究が、幸い、近年アカデミズムの世界でもなされ始めた。日本では、石井淳蔵『マーケティングの神話』 (1993) や、沼上幹『行為の経営学』 (2000) であり、アメリカではK.J.ガーゲン『もう一つの社会心理学』 (1998) などである。それらは、それぞれマーケティング、経営学 (組織論) 、社会心理学と直接の研究領域は異なるが、大きく自然科学とは違う「社会科学」の方法論として捉えれば、同じ土俵で議論できる。
    それら先行研究のレビューを通じて、ひとまず、一般的な社会科学の「存在論と認識論」を問い、続けてマーケティング研究という社会科学の一分野において、「実証主義的アプローチ」の位置づけの見直しと「解釈主義 (学) 的アプローチ」の必要性についての議論を行なう。
    マーケティング研究のみならず実務においても、過去の理解や未来に向かう意思決定において「解釈」と「読み」が欠かせないことを主張する。
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