流通研究
Online ISSN : 2186-0939
Print ISSN : 1345-9015
ISSN-L : 1345-9015
19 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
レター論文
  • ~ハプティック知覚に関する研究の展開と課題~
    朴 宰佑, 石井 裕明, 外川 拓
    2016 年 19 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    製品の評価や選択などにおいて、触覚情報は大きな影響を及ぼしている。マーケティングおよび消費者行動の領域においては、消費者が自らの手で自由に対象物に触れることで得られた知覚、すなわちハプティック知覚について様々な研究が取り組まれている。ところが、各研究は個別的な関心に基づいて行われており、全体を体系的にとらえた研究は行われていない。そこで本稿では、ハプティック知覚に注目した研究を対象にレビューを行った。その結果、接触の基本的な効果から個別の触覚属性の効果へと研究対象が変化した点、それらの効果の有無からメカニズムの解明へと研究関心が変化している点など、研究展開において複数の変化が生じていることが明らかになった。一方、調整変数に関する議論の精緻化や他感覚との相互作用など、ハプティック知覚に関する研究を進めていくうえで、今後取り組まなければならない課題についても議論を行った。

  • ─卸の機能と情報提供サービスに関する実証研究─
    櫻井 秀彦, 丹野 忠晋, 増原 宏明, 林 行成, 恩田 光子, 山田 玲良
    2016 年 19 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    わが国の医薬品流通においては,総価取引,未妥結・仮納入や過大なアローアンスなどの問題点が長きに渡って指摘されてきた。本研究で病院と薬局を対象とした調査を行い,卸との取引実態や情報提供の評価に関する回答データを収集し,取引実態の影響要因を探った。

    単品単価取引を基準として,全品総価(一律値引き),全品総価(除外あり),単品総価(品目で値引き)を比較対象とした選択肢を従属変数とする分析を行った。総じて施設規模や取引卸数等の基本的な競争要因が取引形態に影響を及ぼすことが示された。

    次に,納入前に価格が決定している場合と,未妥結・仮納入との比較について分析を行った。DPC,土日休日配送対応,医薬品に関する情報提供の評価が未妥結・仮納入の抑止に有効であった。

    以上から,病院や薬局の規模の大きさは,総価取引を助長すること,自由な取引による取引数の増加や後発医薬品の普及は有効な施策であると考えられる。

  • 羽藤 雅彦
    2016 年 19 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、ブランド・コミュニティのメンバーが、いかなる要因の影響を受けてコミュニティに参加するのかを明らかにすることである。本稿により、企業がメンバーをコミュニティへ参加させ、ブランド・コミュニティを活性化させるためには、メンバーが有するコミュニティへのコミットメントを高めると同時に、ブランドへのコミットメントを高めることが求められることがわかる。さらに、その双方のコミットメントの影響力には差が見られないことも明らかになった。

  • 田中 祥司, 髙橋 広行
    2016 年 19 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ブランドの本物感を構成する要素を抽出し,その要素に従って尺度を開発することである。先行研究では,限られたカテゴリーやブランドを対象とした研究が多かったため,本研究では,カテゴリーやブランドをあえて特定せず,より多くのデータを回収することで,要素を網羅的に抽出し,分析を行った。具体的な手順は次の通りである。最初に,本物感を問う質問表調査で自由記述回答(質的データ)を回収し,その質的データをコーディングしながら先行研究の構成要素と比較検討することで,探索的に21の要素を抽出した。その後,抽出した要素を測定するための尺度候補を設計した上で,新たなデータを回収し,尺度開発を実施した。

    その結果,当初,132項目21要素であったが,尺度の適合度を維持しつつ,精緻化を重ねていくことで最終的には,75項目15要素を抽出するに至った。

  • ~日本の消費者を対象に~
    李 炅泰
    2016 年 19 巻 1 号 p. 53-66
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、他者の影響に関連した社会的規範(命令的規範・記述的規範)とデモグラフィック要因(性別・年齢・教育水準)に着目して、日本人のコンシューマー・エスノセントリズム(CET)に関する検討を行った。分析の結果、命令的規範と記述的規範がともにCETと有意な関係を示した。ただし、デモグラフィック特性によって両規範がCETに与える影響は一様ではなかった。例えば、29歳以下・男性・高校教育以下の消費者群では、記述的規範とCETとの関係だけが有意であった。半面、50代以上のCETは、命令的規範とだけ有意な関係を示した。また、デモグラフィック要因によるCET水準の相違については、性別に比べて、年齢と教育水準による差異が目立った。

研究ノート
  • 角谷 嘉則
    2016 年 19 巻 1 号 p. 67-82
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、商店街のまちづくりにおける多様な主体間の連携に着目し、商店街組織や中心市街地活性化協議会によるイベントを分析している。研究目的は「函館西部地区バル街 (B.R-G.I)」から「伊丹まちなかバル」への情報提供とその経路をコーディネーションの過程から明らかにすることである。分析対象は、情報の授受に関わったキーパーソンである。キーパーソンへの聞き取り調査を基にコーディネーションの過程を解明している。コーディネーションは、新たな解決策を模索した「働きかけ」である。その結果として対等な関係を構築した「つながり」が生まれるという前提に立っている。

    「伊丹まちなかバル」は、「函館西部地区バル街」からイベントの仕組みについて情報提供を受け、地域性を生かしながら独自に修正を加えて開催した。その後、「伊丹まちなかバル」は、「近畿バルサミット」を設置し、他地域へとイベントの仕組みを伝達する役割と各地域の活動を情報共有する場づくりの役割も果たしたのである。さらに、結論では「伊丹まちなかバル」と「函館西部地区バル街」との共通点や相違点を比較しつつ、情報が伝達された経路を再考し、その過程をコーディネーション概念で示している。

feedback
Top