近年、eリテイルによる販売手法が注目されているが、わが国では、eリテイルをきっかけに小売ビジネスに挑戦する「ベンチャー小売商」型の事例は少ないとされてきた (向山2002) 。
ところで、従来の商業集積地とは別に、若者に支持され活況を呈している街区が出現してきたことが指摘されている。大阪では堀江や南船場などにあたる地域は「新しい街」と呼ばれ、その特徴として若者向けの店舗が主力であることがあげられる。
その第二世代の候補として中崎町が注目されている。筆者の調査によれば、現在、中崎町においては、新しい店舗が集積しつつあるが、これらの特徴として、 (1) 生活雑貨店が多い、 (2) インターネット上の店舗からスタートし実店舗に移行する形態のものがかなりみられる、などのことがわかった。
本研究では、雑貨の新しい類型化を導入することにより、ある種の類型はインターネットに親和性があるが、完全にはデジタル化できないので、そのギャップを埋めるために実店舗戦略が機能していると理解できることがわかった (インターネットから実店舗展開戦略) 。
こうしたネットベースドの店舗は、集客において優れ、その来訪者層は、すでに情報を共有する親密な顧客や作家の関係者などの特徴をもち、強いコミュニティ形成力を武器に、新しい街を支える有力な要素となりつつあるといえ、上記の「ベンチャー小売商」型の事例となっているといえる。本稿ではこうしたメカニズムを分析する。
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