流通研究
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3 巻, 1 号
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  • 指令性分配から市場取引への過渡期的特質
    塩地 洋
    2000 年 3 巻 1 号 p. 23-45
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿の課題は、中国において、1978年の改革開放政策以後の計画経済から社会主義市場経済への移行期に自動車流通経路がいかに変化してきたのか、その実態を明らかにすること、とくに自動車メーカーの流通経路へのコミットメントを中心的に分析し、流通経路の中国に固有な過渡期的特質を検出することである。
    本稿での検討の結果、次の7項目にわたる特質を検出した。 (1) 流通チャネルの多種多様性、 (2) 流通経路の多段階性、 (3) 流通企業間の規模格差、 (4) テリトリー制の非存在、 (5) 流通企業の乱立と過多性、 (6) 専売制の限定的存在、 (7) 競合の多面性。
  • 白井 美由里
    2000 年 3 巻 1 号 p. 47-68
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    これまで、販売価格と売上との問には消費者の価格の知覚が介在することが認識されてきたが、価格の知覚と購買数量決定との問の直接的な関係については分析されてこなかった。本研究の目的は、この価格の知覚と購買数量決定との関係について実験を行ない分析することである。また、値引きシグナル、および代替ブランドの存在が購買数量決定に及ぼす影響についても分析している。
    その実験結果より次のことが明らかにされた。第一に、値引きが行われないブランドに対する消費者の価格の知覚は、そのブランドの販売価格と消費者の期待価格の差よりも、代替ブランドの価格の影響を受けて生じる。第二に、値引きが適度な頻度 (消費者が多すぎるとも少なすぎるとも感じない程度) で定期的に行われるブランドでは、購買数量決定は家にある買い置き量の状態よりも価格の知覚の影響をより大きく受ける。第三に、値引きが適度な頻度で定期的に行われるブランドでは、購買数量に対する値引きシグナルの効果は消費者が買物環境に慣れていないときに大きい。この効果は、消費者が買物環境に慣れてくると小さくなり、代わって価格の知覚の効果が大きくなる。第四に、代替ブランドの値引き価格が魅力的であればブランド・スイッチが行われる傾向があるが、ブランド・スイッチしたときの購買数量は、計画通りの買物をした場合の購買数量ほど多くはない。第五に、複数の値引き幅が設定される値引きパターンも一定である値引きパターンも戦略期間中の値引き幅の平均が同じ水準にあるときは、代替ブランドの購買数量決定に及ぼす影響に違いはないが、当該ブランドに対しては違いがある。
  • 春日 教測, 鳥居 昭夫
    2000 年 3 巻 1 号 p. 69-87
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿は、日本の物流市場における荷主とトラック運送事業者との垂直的関係を、取引費用経済学を応用して、実証的に分析することを目的としている。
    我々が得た主要な2つの結論は以下の通りである。第一に、荷主とその主要な製品の輸送を委託しているトラック運送事業者との取引期間は、交換される情報のレベルや委託先提案により導入された流通加工用設備の存在と、有意に正の相関を持つことが観察される。これは、共有される情報項目や流通加工用設備が高い関係特殊性を有しており、これらの業務を遂行する労働者の熟練やノウハウのような関係的な人的資産の蓄積が、全体的な物流システムの効率性を改善するために重要であるとする我々の仮説を支持している。同時に、これらの資産は、長期的関係を維持するための人質として機能している。第二に、しかし、このような継続的取引関係は、荷主企業の属する業種の需要変動の大きさに影響を受け、需要変動が大きい業種ではよりスポット取引に近い取引を、トラック運送事業者と行う傾向がある。以上の結論は、商流についての先行研究と整合的な結論となっている。
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