流通研究
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17 巻, 1 号
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投稿論文
  • ―カルビーの事例考察から―
    秋川 卓也
    2014 年 17 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     消費者嗜好の多様化が進み、急速に変化していく市場環境では、サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management)の課題の多くは、需要量と供給量の不均衡による需給リスクの回避や軽減に集約される。現在、需要と供給の均衡を管理する手法として S&OP(Sales and Operations Planning)が世界的に注目を浴びているが、日本では成功例は少ない。S&OP の実現要因に関する研究が皆無であることに鑑み、本論文は需給管理が難しい加工食品業界で S&OP を実現させたカルビーの事例から、その実現要因の考察を行う。特に、特売の存在が S&OP の障害となるが、その問題を営業担当者と小売業者の関係で考察した上でリサーチクエスチョンを設定し、リサーチクエスチョンに応える形で S&OP 実現のインプリケーションを提示する。
  • ―買い手企業の知覚から見た「ユーザー視点」の重要性―
    崔 容熏
    2014 年 17 巻 1 号 p. 23-49
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     本研究は生産財におけるブランド・ロイヤルティの形成に影響を及ぼす要因を実証的に分析したものである。消費財一般のブランドとは違い、生産財の場合、売り手企業と顧客企業以外に「顧客企業の顧客」という第三者が存在する。特定の部品・素材が完成品に含まれていることを彼らがどのように評価するかという部分が、顧客企業が特定の部品・素材に対するブランド・ロイヤルティを形成する際に影響を及ぼすだろうというのが、本研究の着目点である。生産財の買い手企業 124 社から収集したデータをもとに検証を行った結果、「顧客企業の顧客」が特定部品・素材の含有を高く評価すると顧客企業が知覚した場合に、当該部品・素材に対する顧客企業のブランド・ロイヤルティは高まるという効果が経験的に確認された。また、その効果の強弱は、完成品に占める部品・素材の重要度という調節変数により異なるという分析結果も示された。
  • ― スポーツ・アイデンティフィケーションの視点から ―
    李 炅泰
    2014 年 17 巻 1 号 p. 51-73
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     公式スポンサーとアンブッシャーによるスポンサーシップ、ならびにコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)が消費者反応に及ぼす影響について、スポーツ・アイデンティフィケーション(SID)の視点から分析した。スノーボール・サンプリング方法でデータ(n=897)を集め有効回答(n=722)を分析したところ、支援企業が公式スポンサーかアンブッシャーかはスポンサーシップの効果に有意な影響を与えなかった。一方、スポンサーシップと CRM を並行して行うと、消費者反応が有意に好ましくなることがわかった。さらに、スポンサーシップと CRM の効果は、消費者の内面的要因である SID(消費者個々人が知覚するスポーツの重要性)に影響されていた。例えば、SID 水準の高い消費者ほど、スポンサーシップ、ならびにスポンサーシップと CRM の並行について好意的な反応を示した。しかし、CRM 遂行による消費者反応の好転は、高 SID消費者より低 SID 消費者の方で著しくみられた。論文の終盤では、分析結果を踏まえて理論的・実務的インプリケーションが提示される。
  • ― クイーンズ伊勢丹の事例研究に基づいて ―
    片野 浩一
    2014 年 17 巻 1 号 p. 75-96
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     本研究では、小売業態研究の中で小売形態ライフサイクルを説明する最近の先行研究に着目し、特定小売企業のイノベーション・プロセスを詳述することで、その理論仮説の検証を試み、合わせて競争優位性とその能力を明らかにする。スーパーマーケット業態の中の高級スーパーグループを選び、その 1 つである三越伊勢丹ホールディングスのスーパーマーケット事業「クイーンズ伊勢丹」の事例研究を行う。1990 年代後半から始まった同事業の漸進的イノベーションは、小売ミックス戦略の差異化を一貫して追求し、ブランド戦略による市場主導型戦略の駆動力となってきた。結論として、上質スーパーマーケットという新たな小売フォーマットの可能性を議論し、その「変化」の能力について考察する。既存の小売業態のなかで、小売業態フォーマットを積極的に変えながら競争優位のポジションを維持し、それが新たな小売業態の破壊的イノベーションを伴う参入を阻止できる可能性を論じる。
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