流通研究
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17 巻, 4 号
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特集論文
  • 金 昌柱
    2015 年 17 巻 4 号 p. 1-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究は、小売バイヤーによる交渉戦略の選択において、小売企業がアウトカムベースでバイヤーを管理する場合、それが仕入先企業との関係管理及び小売成果にどのような影響を与えるのかを考察するものである。この考察は、主に最寄品を取り扱う日本の小売企業を対象とする質問紙調査のデータに基づき、共分散構造分析の手法を用いて行われた。その結果、アウトカムベース管理の下で、バイヤーは仕入先企業と長期継続的な関係を形成するとともに、この関係を基盤として協調的戦略を積極的に行っていることが明らかとなった。同時に、この協調的戦略では、小売企業の競争力を強めることで、高い売上高成長率を達成しているという結果が得られた。さらに、本研究では長期継続性の媒介効果をクラン文化から解釈することを通して、バイヤーの管理問題に関する理論的・実践的示唆が提供された。
  • 横山 斉理
    2015 年 17 巻 4 号 p. 21-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、日本の小売流通構造を特徴づける要因のひとつである中規模小売商業者の相対的な競争優位がどこにあるのかを探るために、小売ミックスと顧客満足の関係を検討することである。この目的のために、本研究では、多様な買い物先の選択肢がある都市部で店舗展開する中規模チェーン小売業の顧客を対象とした調査を行い、小売ミックスと顧客満足の関係を経験的に確認した。
    分析の結果、顧客満足に影響を与える小売ミックス要因は、影響力が強い順に、価格、品揃え、サービスであることが明らかになった。このことから、都市部で店舗展開する中規模小売チェーンは、一見不利に思われる低価格競争においても大規模小売チェーンに対して優位性を持っていることが示唆された。
  • ─ 小売イノベーションのライフサイクルと個体群の進化 ─
    岸本 徹也
    2015 年 17 巻 4 号 p. 37-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    日本の食品スーパー業界には、低価格の商品を訴求する店舗がある一方で、食生活の提案を積極的に展開する店舗もある。日常の食材を提供する同じ食品スーパー業態ではあるが、その顧客価値の提供方法にはさまざまな違いがある。この違いは些細なものではなく、チェーンストア組織の体制まで異なったものとなっている。このような小売業態が分化し小売フォーマットが多様化している現象に対して、小売業態論等の先行研究では、ほとんど説明が試みられてこなかった。本研究では日本の食品スーパーを素材とし、小売フォーマットの多様性は小売イノベーションによる進化プロセスを経て生じてきたものであるとの立場から、初期スーパーからどのような進化の系統を経て現在の多様な小売フォーマットが生まれたのか、その歴史的なプロセスを理解するための理論的分析枠組を構築する。
  • ─寄付つき商品の意思決定プロセスの解明─
    大平 修司, 薗部 靖史, スタニスロスキー スミレ
    2015 年 17 巻 4 号 p. 61-89
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,混合研究法を用いて,東日本大震災後の日本で,消費を通じて社会的課題の解決を図るソーシャル・コンシューマーの意思決定プロセスを明らかにすることにある。具体的には,まずアンケート調査に基づき,寄付などの実施というシビック・アクションと寄付つき商品などの購入というソーシャル・コンサンプションによる過去の社会的課題解決行動を変数として,消費者を 3 つのクラスタに分ける。次にクラスタごとのデモグラフィクスにおける特徴を比較する。さらに行動統制を有効性評価と入手可能性評価に置き換えた計画的行動理論モデルを用いて,クラスタごとの寄付つき商品の意思決定プロセスの違いを検討する。最後にインタビュー調査と現実の事例に基づいて,分析結果のマーケティング戦略への示唆を検討する。
    分析では,定量分析と定性分析による混合研究法を用いた。まず上記モデルを用いて,アンケート調査によって得られたデータの全サンプルを対象とした共分散構造分析を実施した。その結果,主観的規範のみ,統計的に有意とならなかったが,行動に対する態度と有効性評価,入手可能性評価は意図に影響を与える点が明らかとなった。次に過去の社会的課題解決行動を用いて,クラスタ分析を実施し,サンプルを現在のソーシャル・コンシューマー層と潜在的ソーシャル・コンシューマー層,無関心層に分け,χ2検定と残差分析,分散分析を実施したところ,クラスタ間のデモグラフィック変数に差が認められた。さらに多母集団同時分析を実施し,クラスタ間で意思決定プロセスが異なる点が明らかとなった。最後にグループインタビューの結果と現実の事例を用いて,本研究の分析結果から得られた寄付つき商品のマーケティング戦略への示唆を議論した。
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