流通研究
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6 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 成生 達彦
    2003 年 6 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿では、Anderson and Neven (1991) やPal (1998) によって展開された空間的数量競争のフレームワークの中で、テリトリー制および上限価格規制の機能について検討する。複数の販売業者が市場の各地点に店舗を持ち、そこで数量競争を行う場合、ある地点では複数の販売業者が財を販売することになる。各販売業者の仕入れ本部から店舗までの輸送費用が距離の増加関数とすれば、相対的に遠い仕入れ本部からの輸送はチャネルにとって費用の無駄となる。Matsumura (2001) が示したように、この種の非効率性はテリトリー制の導入によって回避することができる。しかしながら、テリトリー制の運営には多くの費用がかかるかも知れない。この場合の代替的な方策として、上限価格規制がある。生産者が出荷価格のみならず標準小売価格によって小売価格の上限を設定する場合、販売業者は輸送費用が小売マージンを上回る地点での販売を行わなくなる。その結果、チャネルの利潤のみならず、消費者余剰もまた増加する。
  • 中山 雄司
    2003 年 6 巻 1 号 p. 13-30
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本論文は流通機能の機関代替性を電子商取引の登場という文脈で理論的に分析する。具体的には既存の小売業者と電子商取引に従事する新しい小売業者の間の競争を記述する新しい円環型都市モデルにより, 次の2つの問題を分析する。第1の問題は, 流通機能は均衡において2つのタイプの小売業者と消費者の問でどのように分担されるのかという問題である。第2の問題は, 2つのタイプの小売業者の費用条件の変化は流通機能を機関間においてどのように代替させるのかという問題である。これまでは, 効率的に流通機能を担うことが出来る機関が市場での競争に勝ち, その機能を実際に担うと一般に考えられてきた。本論文は小売業者が同質な費用条件に直面せず, 価格支配力を持つことを前提とすると, この命題は必ずしも成立しないことを明らかにする。すなわち, 第1の問題に関しては効率的に流通機能を担える小売業者がそうでない小売業者を戦略的な観点より必ずしも市場から排除しない場合があることを示す。また, 第2の問題に関しては費用面で劣る一部の小売業者の費用条件が改善すると社会的な流通費用を大きくするように流通機能が機関間で代替されることを示す。つまり, 流通機能の機関代替性を議論する場合には市場構造を考慮する必要があることが本論文で明らかにされる。
  • ZARAに見るスピードの経済
    南 知惠子
    2003 年 6 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    ファッション・ビジネスには、連続的に製品の陳腐化を作り出し、かつ製造調整と流通在庫投資をコントロールしていくという、高度な需給整合システムが求められる。本稿は、短リードタイムと在庫回転率の高さにより実現されるスピードの経済をもとに、廉価な流行製品の製造・販売において高収益モデルを生み出したZARAのケースに焦点を当て、ファッション・ビジネスにおける一つのソリューションを分析する。
  • 川上 智子
    2003 年 6 巻 1 号 p. 43-58
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    現代の市場環境において, 多くの企業が, 変動する需要への俊敏な対応と低在庫かつ短納期の製品供給を同時に実現することを求められている。本稿では, 企業内の部門間関係という研究視点から, 部門ごとの部分最適から供給連鎖構造全体の最適化への移行が必要なサプライチェーン・マネジメント (SCM) の業務革新において有効な戦略に関する概念枠組を提示し, SCM革新の渦中にある白物家電産業のデータで経験的に検討する。
  • アブローチ誕生にみる歴史性について
    明神 実枝
    2003 年 6 巻 1 号 p. 59-79
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/08/16
    ジャーナル フリー
    1970年代以降、環境運動が欧米を中心に盛んになり、消費者志向のマーケティングの一流としてグリーン・コンシューマー市場への適応を課題とすべきとする理解が生まれた。これを「エコ・マーケティング理解」と呼ぶ。
    これに対して次のような批判がある。エコ・マーケティング理解が環境意識の高いほんの一部のグリーン・コンシューマーへの適応を課題としたために、ニッチ現象に留まってしまった。むしろ消費者の知覚し得るコスト・ベネフィット評価を総合的に考慮して適応することがエコロジー製品の普及につながる。
    これは非常に説得的である。しかし、なぜそう理解され得るのか。経済合理的志向を否定してグリーン・コンシューマーの市場に適応するために誕生したエコ・マーケティング理解が、グリーン・コンシューマーを否定して成り立ち得るのか。このような問題意識のもと、ドイツ環境法の歴史的展開を手がかりにしながら、エコ・マーケティング理解の拭い去れない歴史性を考察する。
  • 小宮 一高
    2003 年 6 巻 1 号 p. 81-93
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿は, 小売業者の経営意識の1つとして自己目的志向の概念を提示し, 自己目的志向による品揃え形成上の性質を議論するものである。自己目的志向は, 小売業者が店舗経営に関わる様々な行動に個人的な関心・嗜好を反映させ, その行動自体から喜びや楽しみを得ようとする経営意識であり, この志向による小売業者の行動は一般的に想定されるものと異なった側面をもつ。本稿では, 経済的な志向を強くもつ小売業者の品揃え形成との比較から, 自己目的志向による品揃え形成の独自性を検討し, そこでは需要量の極めて小さい「特殊商品」が取り扱われる可能性があることを指摘した。自己目的志向の概念は, これまで理論的に捉えられなかった小売業者の異なる側面に関する議論を可能にし, 商業の理論に新たな視座を提供することが期待される。
  • 長期間NO.1の実態とその要因について
    梅澤 伸嘉
    2003 年 6 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    新しい市場を創造した先発商品を「新市場創造型商品」と呼ぶならば、そうした「新市場創造型商品」は市場で長期間NO.1のシェアを保ち続ける確率が高いこと、その主たる要因が消費者の評価に関係していることを実証的に明らかにした。
    同時に、後発がその市場でNO.1になれる確率はきわめて小さいことなども検証し、先発優位か後発優位かの議論に関して1つの展望を切り開いた。
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