本研究では, 粗雑な地表面である森林火災跡とマイクロ波 (Lバンド) との関係を理論的に調査した。まず, 解析モデルは3つの媒質である自由空間, 森林火災跡, 泥炭地から構成される。ここでは, レーダの後方散乱係数と森林火災跡の厚みの関係を得るために, vv偏波とhh偏波の散乱電磁界を導出した。この解析法の計算の流れとして, まず自由空間と森林火災跡間の境界における散乱界と透過界を導出した。そして, この透過界を使用して, 森林火災跡と泥炭地間の境界における散乱界を導出した。この計算を繰り返し行い, 最後に自由空間における散乱界の総合電界強度を使って後方散乱係数を導出した。本研究の結果を検証するために, Transmission-line method (TLM) による前解析法の結果との比較検討を行った。この結果として, 地表面の粗雑度の影響によって両解析法の結果の間に誤差が生じることを確認した。また, その他の理由として, 本研究で提案した理論解析モデルには, 解析を簡単にするために, 燃焼した樹幹による散乱を無視したことが考えられる。本研究の結果はJERS-1 SAR画像を用いて, 1997年に中部ボルネオ島に生じた森林火災地域を対象として, 森林火災跡の厚みの推定に応用した。その結果, 本研究による推定結果は現地調査データの範囲 (0~0.5m) に入ったことを確認した。
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