2007年に新潟県中越沖地震により新潟県出雲崎沿岸沖5~8kmの約70~100m深さの海底に噴出したマツ属完新世古木(放射性炭素年代:3,093±45yBP)に,半深海性で食材性の二枚貝の1つであるチョウチョウキクイガイ(
Xylophaga indica)が定着していた。貝殻は放射性炭素年代測定により現代のものであり,最大殻長が10.8mmであること等から,古木は地震前に一部が海水中に露出していたと推定された。古木は既にヒメコマツ(
Pinus parviflora)またはキタゴヨウ(
P. parviflora var. pentaphylla)として同定されている。古木の化学分析の結果,ホロセルロースおよびリグニン含量は,それぞれ18.4および55.2%であり,古木のホロセルロース含量は現生マツ材の約75%より顕著に低かった。チョウチョウキクイガイは木材を穿孔してセルロースを栄養源とするが,このようなホロセルロース含量の少ない木材中でも生息することが初めて明らかとなった。
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