シックハウス対策の一環として,様々な建材からの室内空気汚染物質の放散に関する情報の蓄積が求められている。そこで本研究では,日本農林規格(JAS)および優良木質建材等認証(AQ)で認定されている計3種類の接着剤混入保存処理合板から放散される揮発性有機化合物(VOC)およびアルデヒド類の小形チャンバー法における平衡気中濃度を測定した。製造直後の測定値は,南洋材合板のJAS防虫合板2種類ともVOCおよびアルデヒド類は特段高い値は検出されず,さらにトータルVOC(TVOC)も低い値であった。一方,針葉樹(ロシアカラマツ)合板のAQ防腐・防虫合板ではアセトアルデヒドおよびTVOC値が高い値を示した。無処理のロシアカラマツ合板ではアセトアルデヒドがAQ防腐・防虫合板と同等の値を示したことから,アセトアルデヒドの発生源は合板由来であることが明らかとなった。しかし,TVOC値はAQ防腐・防虫合板と比較して無処理合板では極めて低かったことから,使用薬剤の溶剤の影響であると考えられた。また,21日間の養生後は各化学物質の気中濃度が低下し,明瞭な養生効果が認められた。以上の結果から,接着剤混入保存処理合板からのVOCおよびアルデヒド類の放散には,単板の樹種および接着剤といった合板の種類および/または使用薬剤の溶剤が影響することが明らかとなり,当該合板を一定の養生期間を設けた後に使用する必要性が示された。
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