スギ(Cryptomeria japonica D.Don)辺材に,ホウ酸(B(OH)
3)―メタノール溶液として注入されたホウ素の化学的挙動および乾燥後のホウ素の分布について,重量変化の計測とラマン分光法による分析結果に基づき検討を行った。含浸処理後に風乾したスギ辺材試験体は,本実験で用いた処理溶液の濃度範囲(1.8×10
-1~1.1mol/dm
3)でホウ素濃度にほぼ比例して重量が増加していた。ラマン測定から,風乾中に少量のホウ素は揮発性化合物として放散するが,処理後の試験体では注入されたホウ素の大部分がB(OH)
3として木材中に残ることが明らかになった。これらから,メタノールを溶媒として用いることにより,水溶液よりも多量のホウ素を容易に木材中に含浸できることが示された。しかし,ラマン測定の結果から,風乾による溶媒除去法では,ホウ素は試験体表面近傍だけに偏在してしまうことも示唆された。
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