柵工は植生復旧を促すことを目的とする治山工種である。これには木杭が大量に消費されている。そこで,木杭の実際の耐用年数を求めるため,富山県内の柵工を中心とする44箇所の施工地を延べ111回調査した。調査は抜取りと現地調査の二法で行った。抜取り調査では採取木杭の玉切り試料から被害度と縦圧縮強さの関係を,現地調査では木杭15本の地際部平均被害度と折損率および経過年数との関係を調べた。被害度の評価は森林総合研究所の6段階評価法(表-1)に準拠して行った。得られた結果は以下のとおりである。
1)調査した全ての木杭が無処理のまま用いられていた。樹種はスギとカラマツが多く,両者で約85%に達した。寸法は平均で頂部直径約11cm,長さおよそ1.2m,設置地上部長さは約40cmであった。
2)縦圧縮強さは試片の被害度が大きくなるにつれて直線的に低下し,被害度5(破壊)で0となった。
3)地際部平均被害度と折損率の関係プロットから,折損率は10%付近からの急激な上昇が認められた。この折損率を柵工の耐用限界とすると,被害度は約3.4と計算され,スギ,カラマツ木杭の推定耐用年数はそれぞれ約7.4, 8.7年となった。
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