木材保存
Online ISSN : 1884-0116
Print ISSN : 0287-9255
ISSN-L : 0287-9255
46 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
解説
資料
  • 須原 弘登
    2020 年46 巻4 号 p. 190-195
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    木材を製材として利用する際は,乾燥に伴う割れや変形を抑制するために,予め,乾燥する事が現在の主流となっている。この際,乾燥機内で熱をかけて短期間で乾燥させる人工乾燥法が広く用いられている。木材を乾燥させる際に,木材の水分は木材の匂い成分,即ち精油成分と共に大気中に放出される。本研究はこの大気中に放出されている精油を低コストで回収する装置を開発することを目的として行った。
    フィンプレートを用いた空冷の冷却装置2機を試作し,製材所の中温(60℃)及び高温(120℃)乾燥機にそれぞれ取り付け,3年間精油回収量の調査を行った。検討の結果,高温乾燥機に取り付けた装置では3年間の平均で木材1立方米あたり106.6 ml の精油を,中温乾燥機に取り付けた装置では16.4 ml/m3の精油を回収できた。排蒸気温度の測定結果から高温乾燥機では冷却能が不足しており冷却能の改善が必要であることが示唆された。一方で,中温乾燥機では排蒸気は十分に冷却されており,中温乾燥では精油揮発量が少なく本装置での精油回収には向いていないことが示された。回収した精油のガスクロマトグラフ質量分析の結果,高温乾燥・中温乾燥共にdelta-cadinene が約40%を占めており,その他の成分についても似たようなプロファイルを持つことが示された。試作した精油回収装置は3年の試験期間の内に木酢液による腐食を受けており,長期運用が難しいことが明らかとなった。本研究で試作した装置の実用化には,冷却効率の改善と耐腐食化が必要であり,現在これらを改善するための取り組みを進めている。
  • 酒井 温子, 角谷 俊和, 手塚 大介, 茂山 知己, 須貝 与志明, 新谷 岳史, 山口 秋生
    2020 年46 巻4 号 p. 196-201
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本産業規格(JIS)や公益社団法人日本木材保存協会規格(JWPAS)では,木材および木質材料の室内耐朽性試験や,木材保存剤の室内防腐性能試験等において,オオウズラタケおよびカワラタケの指定された菌株を供試菌として用いる。しかし,自然界には多種類の木材腐朽菌が存在する。そこで,JIS等における2種の指定菌株と,腐朽木材や子実体に由来する10種の分離菌株を用いて,スギ心材,ヒノキ心材,ヒノキアスナロ心材および加圧注入処理木材の耐朽性試験を行った。
    その結果,スギ心材に対しては,60日間の培養期間で,指定菌株のオオウズラタケが最も高い質量減少率を示したが,ヒノキ心材に対しては,いくつかの分離菌株は指定菌株よりも大きな質量減少をもたらした。ヒノキアスナロ心材に対しては,12菌株すべてが質量減少率0%であった。また,大部分の菌株において,スギ心材≧ヒノキ心材≧ヒノキアスナロ心材の順で抗菌操作による質量減少率が低くなった。さらに,加圧注入処理木材については,いずれの菌株においても培養期間12週間で生じた質量減少率は3%以下となり,指定菌株と分離菌株の結果にほとんど差はなかった。
情報
feedback
Top