海の研究
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12 巻, 6 号
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  • 久保田 雅久, 南 大介, 大木 崇史, 鈴木 聡
    2003 年 12 巻 6 号 p. 551-563
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    QSCAT/SeaWinds海上風データと気象庁の6隻の船舶によって観測された海上風データとの比較を行った。両者の観測位置が25km,観測時間が5分以内で一致しているデータについて比較した結果,風速については残差の平均値(バイアス)が-0.10ms-1,残差のRoot mean square: (RMS差)が1.33ms-1,相関係数が0.92と高度に有意な一致が見られた。さらに,両者の観測位置が5Km以内で一致しているデータについて比較した結果では, RMS差は, 0.91ms-1にまで小さくなり,風速の観測精度が非常に良いことを示した。一方,風向については,不確定性除去アルゴリズムによる選択値を選ぶと,バイアスは2.0゜, RMS差が29.2゜となり,RMS差の値は, QSCAT/SeaWindsのミッション要求条件の20゜より大きい値になった。しかしながら,風向の4つの候補の中から船舶データの値に最も近い値を選ぶと,RMS差は著しく減少して,18.9゜であった。
  • 柳 哲雄, 原島 省
    2003 年 12 巻 6 号 p. 565-572
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    大阪と別府を結ぶフェリーを用いて得られた瀬戸内海表層における溶存態無機リン(Dissolved Inorganic Phosphorus:DIP),溶存態無機窒素(Dissolved Inorganic Nitrogen: DIN),溶存態珪素(Dissolved Silicate: DSi)濃度の観測結果から, 1994年~2000年冬季の平均値を用いて,瀬戸内海におけるDIP, DIN, DSi分布の特徴を比較した。その結果,大阪湾で最も高濃度となり瀬戸内海西部で低濃度となるDIP・DIN濃度分布と異なり,瀬戸内海におけるDSi濃度分布は大阪湾と別府湾で高濃度となることことがわかった。その理由は,これらの海域に対する単位容積当たりのDSi負荷量が大きいことに加えて. DSiはDIPやDINと比較すると,植物プランクトンに取り込まれ,懸濁態化された珪素が窒素やリンより分解されにくく,それぞれの灘・湾におけるDSiの平均滞留時間がDIPやDINと比較すると長くなるからである.また備讃瀬戸は単位容積あたりのTP (Total Phosphorus: 全リン),TN(Total Nitrogen: 全窒素), DSi負荷が大きいにも関わらず, DIP, DIN, DSi濃度は低い。それはこの海域の強い潮流が流入したDIP, DIN, DSiをすみやかに隣接海域に輸送するためである。
  • 佐々木 克之, 程木 義邦, 村上 哲生
    2003 年 12 巻 6 号 p. 573-591
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1997年に諌早湾を締め切って作られた調整池から流出する汚濁物質が諌早湾や有明海の環境悪化を引き起こしていると懸念されているので,調整池からの排出量を検討した。調整池から諌早湾へのCOD,全窒素(TN)および全リン(TP)の負荷量を,調整池内の濃度に排出水量を乗じた場合と,さらにこれに排出時に想定される底泥の巻き上げによる懸濁物質(SS)増加分を加えた場合の二通りについて解析した.また,ボックスモデル解析によって締め切り以前の干潟浄化力を推定した。締め切り後年間負荷量は,CODは3,000~4,800 t,TNは430~550 t , TPは20~70t増加したと推定された。調整池が作られた後の負荷量の大きな増大は,調整池を締め切って淡水化したため,海水交換による希釈効果,干潟の生物的浄化力に加えてSSの凝集・堆積という物理化学的浄化力が失われたためと推定された。
  • 西田 芳則
    2003 年 12 巻 6 号 p. 593-602
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    春季の津軽暖流の形成過程を明らかにすることを目的に. 1998年3月に実施したCTD観測,ADCP訓読データを用いて,海峡東西口の流動構造,および海峡内の水塊変質について解析した。海峡西口では,日本海から対馬暖流表層水(高温・低塩分)とそれより深層に分布する水塊(低温・高塩分)が流人し,二つの水塊間に密度躍層を形成する.この日本海深層に分布する水塊は,海峡西口の北海道西方で上昇し,海峡内へ流人すると推察された。海峡西口の二つの水塊は海峡を東進する際に物理的な混合を受けるため,密度一様な水塊に変質し,津軽暖流として太平洋へ流出することが判明した.一方,この津軽暖流水(高温・高塩分)と沿岸親潮水(低温・低塩分)が存在する東口では,二つの水塊間に熱塩フロントが形成される。このフロント形成に伴う等密度面上の混合により,水温5~7℃,塩分33.5~33.8の水塊が新たに形成され,この水塊も津軽暖流として太平洋へ流出することも明らかになった。
  • 井桁 庸介, 北出 裕二郎, 松山 優冶
    2003 年 12 巻 6 号 p. 603-617
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    台風通過に伴う相模湾の急潮の発生機構を解明する目的で,連続成層モデルを用いた数値実験を行った。モデル海域に台風8818号を事例とした風応力を与えたところ,台風による強い北風の連吹により,房総半島東岸で強い沿岸流を伴う孤立沿岸捕捉波が発生した。この沿岸捕捉波は,陸棚幅が急激に狭くなる房総半島南東岸の勝浦沖で,順圧的な構造から傾圧的な構造へと性質を変化させると共に,岸近くで表層の沿岸流を強めることが判明した。この強い沿岸流を伴う沿岸捕捉波が相模湾へと伝播し,急潮を引き起こしたと考えられる.孤立沿岸捕捉波の伝播による急潮によってパ目視湾表層水(30m以浅)の約43%が交換された。
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