海の研究
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21 巻, 3 号
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原著論文
  • 手塚 公裕, 片野 俊也, 濱田 孝治, 加 瑞, 日野 剛徳, 速水 祐一, 伊藤 祐二, 大串 浩一郎
    2012 年 21 巻 3 号 p. 69-81
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    1997年,諌早湾に潮受け堤防が建設されて以来,調整池底質の栄養塩調査はあまり行われてこなかった。今後予想される排水門の開放に伴う底質の巻き上げの影響を評価するため,2011年2月に諌早湾8地点と調整池5地点、の底質調査を行い,栄養塩分布を調べた。底質問隙水のNH4-N濃度とPO4-P濃度は,諌早湾と調整池で有意差(P>0.05)はなかった。開門に伴い調整池全域の底質が深さ10 cmまで巻き上がった場合における間隙水からの栄養塩放出量を試算した結果,NH4-N量は7.1 t (5.1 x 105 mol), PO4-P量は1.0 t (3.2 x 104 mol) と見積もられた。底質の平均吸着態NH4-N量は,諌早湾で1.8 μmol gDW-1, 調整池で8.0 μmol gDW-1であり,有意差(Pく0.05)があった。これは淡水化で塩分の低下した調整池底質のNH4-N吸着能が高まった結果と考えられた。開門に伴う調整池の塩分増加により調整池底質からNH4-Nが脱着し,海水に拡散する可能性がある。そのため,開門に伴う諌早湾と調整池の栄養塩濃度変化を正確に予測するには,底質の巻き上げの程度や脱着するNH4-N量について詳細な検討が必要である。

2011年度日本海洋学会賞受賞記念論文
  • 安田 一郎
    2012 年 21 巻 3 号 p. 83-99
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー

    北太平洋中層水の形成・輸送・変質過程について受賞者の研究を総括した。厚い低温低塩分水塊が,海氷形成に伴う陸棚高密度水沈降や千島列島付近の強い乱流鉛直混合に影響されて形成される。このオホーツク海モード水が太平洋へ流出し,薄い太平洋水と混合して親潮水が形成される。厚い性質を保持した親潮水の一部は,北海道・東北沿岸を南下し,黒潮続流と合流・混合して,北太平洋中層水を更新する。黒潮水と親潮水の等密度面混合は,厚い中層親潮水に起因する不安定によって促進される。北太平洋中層水は,亜熱帯循環に沿って輸送され北太平洋亜熱帯循環域に広く分布する。その北端部分は,移行領域と呼ばれる海域で低塩分亜寒帯水が表層に層重し,塩分極小が消失した海水が,アラスカ湾に流れ込み,北太平洋亜寒帯海域での中暖構造を作る。北太平洋亜寒帯中層は,この高温高塩分水の流入とオホーツク海での低温低塩分水の流入でほぼバランスしている。千島列島付近やアリューシャン列島付近の潮汐に起因する乱流鉛直混合は,水塊変質と変動に大きな影響を与える。潮汐18.6年周期変調は水塊変動の一因であり,海洋を通じて気候にも影響を与えている。

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