海の研究
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12 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 金子 新, 江田 憲彰, 鄭 紅, 高野 忠, 山岡 治彦, 朴 在勲, 山口 圭介
    2003 年 12 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    外洋の水温・流速場の三次元断層撮影法として発展してきた海洋音響トモグラフィーが沿岸海洋に応用されようとしている。特に,わが国の沿岸海洋では,船舶の通行や漁船の操業のため対象海域全体の沿岸潮流場を長期間連続計測することが困難であった。このような困難さは,沿岸音響トモグラフィー(CAT)の適用によって大幅に改善される。CATは,わが国の沿岸海洋学の近い将来における飛躍的発展のための起爆剤になるものと期待される。
  • 関口 秀夫, 石井 亮
    2003 年 12 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    有明海は本邦全体の干潟面積の約20%に相当する広大な干潟をもち,その中で最大の干潟面積をもつ熊本県ではアサリ漁業が盛んである。本邦全体のアサリ漁獲量は1975~1987年にかけて14万~16万トンあったが,これ以降激減している。有明海全体のアサリ漁獲量を代表する熊本県の漁獲量は,1977年に約6万5千トンあったが,2000年にはその1%にまで激減している。アサリ漁獲統計資料の解析によれば,アサリ漁獲量の減少パターンは有明海固有のものであり,漁獲量激減に関与している要因は本邦全域に及ぶような要因ではない。また,有明海の二枚貝類各種の漁獲統計資料の解析によれば,有明海のアサリ漁獲量の減少パターンは他の二枚貝類と異なっており,アサリ漁獲量の激減に関与している要因はアサリに固有の要因である。有明海のアサリ資源の幼生加入過程に関する過去の研究成果を踏まえれば,アサリ浮遊幼生の生残率の低下が,さらに言えば,この生残率の低下を引き起こしている要因が,アサリ漁獲量の近年の激減に関与している可能性が高い。ここでは,この推測を検証するための,併せて着底稚貝以降の死亡が関与する可能性を検証するための,プロジェクト方式の研究計画についても,提案をおこなう。
  • 水野 恵介
    2003 年 12 巻 1 号 p. 37-57
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    観測を終えたアルゴフロートに関して法的規制や環境負荷等を検討し,その運用方法を考察した。法的には占有の意志を明示したラベル等が不可欠であり,回収計画を持つことが好ましいため,一定回数観測後に海面を漂流するようフロートを制御することを推奨する。回収計画立案のため,観測終了後のフロートの挙動を海面漂流ブイの既往資料から推定し,観測終了後1年以内に全球で17%が漂着,7%が海上で拾得されると予測した。太平洋に関しては,亜熱帯循環系において漂着率は比較的低いが,南北緯30度付近に顕著な収束域がある。亜寒帯循環系での漂着率は高く,北米沿岸に漂着が多い。赤道海域はその中間で,赤道帯の島々や西岸へ1年以内に漂着するものが多い。また,フロートの積極的な回収が可能なことを実証するとともに,海面を漂流するフロートは生物付着による重量増加で1年以内に水没する可能性を示した。回収は科学的に有益なため可能な限り多くの回収が望ましい。
  • 稲葉 栄生, 安田 訓啓, 川畑 広紀, 勝間田 高明
    2003 年 12 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1992年3月上旬,駿河湾口東部および同湾奥西部沿岸の2係留観測地点で,約5.5日間に約5.5℃に及ぶ顕著な水温急上昇が観測された。この水温急上昇は同湾沖の黒潮系暖水の流入による影響であり,さらに流入した暖水は同湾沿岸を反時計回りに伝播することが分った。両係留観測地点の水温急上昇の時間差と距離から求めた暖水の伝播速度は0.79m s-1である。この値は暖水の移動を沿岸密度流の先端部の速度(Kubokawa and Hanawa, 1984)と見なして計算した値0.93ms-1におおむね等しい。同様な現象は相模湾でも発生することが知られていて,それは急潮と呼ばれていることから,今回観測した水温急上昇は駿河湾の急潮と呼ぶことが出来る。また,今回の急潮をもたらした黒潮系暖水の流入の原因は黒潮の接岸であり,それには石廊崎沖での黒潮の小さな蛇行の発生が関係している可能性が考えられる。なお,同湾内各地の水位変動には急潮に伴う水温急上昇の効果はほとんど現れなかった。
  • 磯田 豊
    2003 年 12 巻 1 号 p. 69-84
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    日本海の深層域が閉じているという地理的条件と対馬暖流による南側上層への熱供給という条件のために,定常状態の熱バランスを考えると,日本海の表面は必ず海面冷却となる。これは深層域が閉じているために,対馬暖流域から深層へ輸送された熱が北側表層へ輸送されなければならないという熱輸送経路で説明される。北部海域における下層から上層への熱輸送経路は下層加熱の状態にあり,鉛直的に水塊が混合され易く,形成される極前線(対馬暖流の北限)は非常に明瞭な水温前線となることが期待される。そしてある年の冬,比較的大きな海面冷却によって,底層にまで至る冷たく重い深層水が形成される。この水塊は均一な水温で特徴付けられ,底層水(Bottom Water)と呼ばれる。このような深い深層水形成後の熱輸送経路は,対馬暖流域から深層水上部を経由して極前線の北側海域の表層へと向かう浅い経路をとる。それゆえ,底層水は次回の深い深層水形成までの間,この浅い熱輸送経路から加熱され続け,その厚さは次第に減少することが推測される。
  • 宇野木 早苗
    2003 年 12 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    有明海の潮汐減少に関して,宇野木は観測データの解析から,最大で減少量の約65%は諌早湾干拓事業に伴う内部の地形変化の効果,残りは外海の潮汐減少によるという結果を得た。一方,塚本と柳は数値シミュレーションに基づいて,上記と逆に内部の地形変化の効果は10~20%に過ぎず,減少の主体は外海の潮汐減少の効果であると発表した。現実の観測データと比較した結果,塚本と柳が潮受堤防の締切り後の開境界における条件として,M2分潮の振幅減少を2.5cmと過大評価したことが,地形変化の効果の過少評価を導いたと推測された。他方,宇野木は有明海内の地形変化が湾口の潮汐に及ぼす影響は微小なことを前提にして上記結果を得たが,観測資料と理論による検討の結果,この前提は妥当であることが認められた。かくして有明海における潮汐減少の主体は諌早湾干拓事業に伴うものであることが確認できた。また,潮流の減少の面からも,内部の地形変化の効果が外部の効果よりもかなり大きいことが指摘され,とくに潮受堤防の前面で潮流が80%~90%も減少していることは干拓事業の影響を強く示している。
  • 塚本 秀史, 柳 哲雄
    2003 年 12 巻 1 号 p. 97-98
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
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