海の研究
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29 巻, 3 号
海の研究
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原著論文
  • 山口 卓也, 磯田 豊, 伊藤 海彦, 向井 徹, 小林 直人
    原稿種別: Original article
    専門分野: Physical Oceanography
    2020 年 29 巻 3 号 p. 71-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/29
    ジャーナル フリー

    成層期の津軽海峡西口付近における合成開口レーダ(SAR)の人工衛星海面画像には,2~3 本のストリーク帯(同一水塊内の海面収束帯)を伴う内部波群が映し出され,その波長は数100 mのオーダであった。このような内部波群のほとんどは,浅いシル(海堆)地形付近で観測された。シル上に捕捉されたようにみえる内部波群の経時変化を捉えることを目的に,2017年の夏季,高周波計量魚群探知機を用いた25時間連続観測を実施した。得られた音響画像は,海峡通過流強化時期のシル下流側において,全振幅が150 mを超える内部波群が遷移的に発達する様子を示した。内部波群は連なった2~3 本のストリーク帯で構成され,そこでは強い沈降流で生じたと思われる非常に乱れた海面状態を呈していた。シル上で発達する内部波の力学過程を調べるために,水平移流の影響や有限振幅波が表現できる非線形項を含む非静水圧モデルを用いた。モデルの密度成層及び強制力である順圧海峡通過流の経時変化は,本観測に近い状況を設定した。モデル再現の結果,フルード数が臨界点となるシル下流側付近では,シル東端斜面上で励起された上流伝播する内部波が同海域に停滞して効率的に重なり,内部波振幅の顕著な増幅を引き起こしていることが推測された。ただし,この力学過程では大振幅まで波が成長しても内部ソリトン波の構造を示さず,波の強い分散性よる散乱現象がむしろ支配的と思われる。

総説
  • 久木 幸治
    原稿種別: Review
    専門分野: Physical Oceanpgraphy
    2020 年 29 巻 3 号 p. 91-106
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/29
    ジャーナル フリー

    短波海洋レーダによる波浪研究の現在までの進展について紹介する。短波海洋レーダが受信する波浪からの後方散乱電波のドップラースペクトルには,波浪を構成している全ての自由波成分が関与している。このため,ドップラースペクトルから波浪スペクトルを推定することが可能である。その推定手法には,半経験的な手法,パラメータ適合による手法,線形インバージョン法,非線形インバージョン法がある。この中で,半経験的な手法が最も広く使われている。半経験的な手法とは,ドップラースペクトルと波浪パラメータとの関係式において未知の係数を経験的に求めることによって波浪パラメータを求める手法である。パラメータ適合による手法は,広ビーム型短波海洋レーダで得られるドップラースペクトルの解析のために開発された。線形インバージョン法は,狭ビーム型短波海洋レーダで波浪スペクトルを求める手法として最もよく知られた手法であり,ドップラースペクトルと波浪スペクトルとの関係式を波浪スペクトルについて線形な式に近似してから,波浪スペクトルを求める手法である。非線形インバージョン法は,日本で最も精力的に開発が進められている手法であり,線形インバージョン法を高度化した手法である。短波海洋レーダによる波浪推定精度を高めるためには,推定手法の高精度化とともに,SN(信号対雑音)比の高いドップラースペクトルを選択する手法の開発が必要である。このことによって, 沿岸域における波浪の高い精度での予報が可能となることが期待される。

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