海中における輝度分布の形成過程を理解するには,各散乱次数における輝度分布を解析的に把握する必要がある。そこで,各散乱次数における輝度分布の解析的な理解を目的とし,1次散乱輝度を算出する平行平面層モデルを開発した。体積散乱関数の定義式から展開し,積分範囲を平行平面層の厚さに止めることにより,平行平面層モデルとして開発した。平行平面層の厚さを無限小にした場合,既存の1次散乱モデルと一致する式を得た。平行平面層モデルにしたことによって,放射伝達の数値モデルとして高次散乱までの展開が期待できる。
丹後半島沿岸において係留観測を継続して行ってきた結果,台風や温帯低気圧の通過前に急潮が発生し,定置網に被害をもたらす事例が少なくないことが分かってきた.本研究では,台風0514号の最接近前から発生した急潮について,現象の詳細な記述と発生機構の解明を試みた.係留観測記録から,丹後半島沿岸の水温が低下すると同時に半島東部に0.8 m s-1に達する強い北上流が生じたことが示された.この時の流れ場は,EOF第1モードとして,広い範囲で岸を左に見る流れの構造を形成しており,丹後半島の太鼓山の東西風と高い相関を持つことが示された.密度を水平に一様とし,風応力のみを与えた数値実験では,台風最接近前に丹後半島東部に生じた北上流や水温低下変動がほぼ再現されたことから,台風最接近前に丹後半島東部で発生した急潮は,主に風によって励起された沿岸ジェットであることが示された.