海の研究
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13 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 田上 英一郎
    2004 年 13 巻 1 号 p. 7-23
    発行日: 2004/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    懸濁態及び沈降粒子態有機物,金属に親和性を有する有機配粒子及び溶存態有機物に関するこれまでの研究を概観し,解明したこと,研究過程で生じた疑問,そして,これからなすべき事について論述した。懸濁態及び溶存態有機物のアミノ酸・タンパク質の研究から,海洋有機物プールには,生物が合成する高分子有機物がそれ程修飾されないまま残存・蓄積していることが判明した。しかし,海洋有機物プールを構成する有機物の多くは,低分子状態で存在していることも明らかになった。海洋有機物の99%以上は非生物態有機物である。何故,ある有機化合物は高分子状態のまま,ある有機化合物は低分子化した後,海洋有機物プールの構成員として残存・蓄積できるのか?ある時間スケール下では,海洋有機物プールの動態の変化やそれに伴うプールサイズの消長は,地球表層の物質循環に大きな影響を及ぼすだろう。海洋科学が目指す研究方向の1つとして,海洋有機物プールを構成する有機分子の化学的性質から,その謎を読み解き,海洋有機物プール動態や維持機構への理解を深める研究の必要性を提案した。
  • 松村 剛, 石丸 隆
    2004 年 13 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2004/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1997年度と1998年度の東京湾への淡水流入量,およびN(窒素)とP(リン)の流入負荷量を究明した。流入源としては28河川,27下水処理場,直接流入(主に大規模工場)を研究対象とし,さらに淡水の収支については降水量と蒸発量も研究対象とした。両年度を平均した各流入源からの淡水流入量は,河川352m3s-1, 下水処理場50.0m3s-1, 降水38.9m3s-1, 直接流入31.4m3s-1であった。一方,蒸発により海面から失われる淡水量は38.5m3s-1であったから,これらを合計すると純流入量は433m3s-1であった。Nの負荷量は,河川から172td-1, 下水処理場から77.0td-1, 直接流入36.7td-1で合計285td-1であった。Pの負荷量は,河川から9.6td-1, 下水処理場から6.0td-1, 直接流人から0.9td-1で合計16.5td-1あった。淡水流入やNとPの負荷の季節変動は,ともに4月~10月にかけて多く,11月~3月にかけて少なかった。淡水,NとPの流入は湾奥(川崎および木更津以北の海域)に集中しており,湾奥への流入量が湾全体に占める割合ぱ淡水で88%, Nで79%, Pで78%であった。流入するNとPの形態は,大部分が溶存無機態(DIN, P04-P)であり,その割合はNで87%, Pで77%であった。
  • 西 桂樹, 多部田 茂, 藤野 正隆
    2004 年 13 巻 1 号 p. 37-59
    発行日: 2004/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    オホーツク海表層における物理場の季節変動を,海洋と海氷とを結合させた数値モデルを使って研究した。モデルの再現性を検証するために海氷の漂流速度,海水流動,水温,塩分に関して観測資料との比較を行なった結果,本モデルによって良好に物理場の季節変動が再現された。また,サハリン沿岸域の南下流に関しては,主として北寄りの季節風に伴うエクマン収束に起因する地衡流として説明できることを示した。その海流の強弱の変動様式には,サハリン北部と南部(Terpenia湾付近)とでは違いがあることが明らかになり,その理由の一つとしてサハリン沿岸部における風系の南北差が考えられることを示唆した。さらに,オホーツク海表層低塩分水の消長に関して計算結果に基づき考察を行なった。まず,表層低塩分水に関して,生成・移動・消滅のプロセスを連続的に再現することができた。海氷の融解量分布とアムール川による流出量とを比較することによって低塩分水の源を解析した結果,表層低塩分水は北からシベリア沿岸部の融解水,アムール川の流出水,サハリン沿岸部の融解水の三つが構成要素となって生成されることをが明らかになった。
  • 柳 哲雄, 屋良 由美子, 松村 剛, 石丸 隆
    2004 年 13 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2004/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    東京湾のリン・窒素循環過程をボックス生態系モデルを用いて解析した。その結果,以下のことが判明した。1)上下層で溶存態無機リン(Dissolved Inorganic Phosphorus; DIP)から植物プランクトンヘ同化されるリンフラックスは,陸から供給されるDIPフラックスの4.0倍,溶存態無機窒素(Dissolved Inorganic Nitrogen; DIN)から植物プラクトンヘの窒素フラックスは陸から供給されるDINフラックスの1.4倍である。2)リン・窒素フラックスの主要経路は上下層とも栄養塩→植物プランクトン→デトリタス→栄養塩であるが,下層では植物プランクトンから動物プランクトンヘの摂食フラックスが,植物プランクトンからデトリタスヘの枯死フラックスより僅かに大きい.3)基礎生産は8月に最も大きく一日当たり約6.6 gC m-2 d-1 となり,3月に最も小さく約1.4 gC m-2 d-1 となる。4)5月~10月の間は上層の植物プランクトン濃度が高く,光を遮蔽してしまうために下層での光合成は不可能であるが,上層の基礎生産が小さくなり,植物プランクトン濃度が減少して下層にも光が届く11月~4月には,下層でも0.1~0.3 gC m-2 d-1 程度の基礎生産が行なわれる。5)東京湾に存在するDIPの69%は分解により, 23%は陸から,7%は溶出により,1%は外洋から供給されているが. DINの50%は分解により, 49%は陸から,1%は溶出により供給されている。6)供給されたDIPの93%が光合成に用いられ,湾外に流出する割合はわずか7%に過ぎない。これに対して,供給されたDINのうち光合成に用いられる割合は68%に過ぎず, 32%が湾外に流出していく。
  • 岩坂 直人, 佐藤 誠
    2004 年 13 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2004/01/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    宇宙開発事業団が編集公開した熱帯降雨衛星降雨レーダ(PR)観測に基づく月平均降水量データを,太平洋の島々,TAO/TRITONブイ,PIRATAブイ,日本の気象官署やAMeDASなどの地上観測点180箇所の月平均雨量データと比較した。その結果,PRと地上観利点の個々の観測値との相関は0.53で,降水量は対応する地上観測値の約66%の値を示すことが判明した。PR観測値については,定量性に課題が残るものの,海洋上での降水分布や時間変動の研究に利用できると考えられる。
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