海の研究
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32 巻, 2 号
海の研究
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総説
  • 高木 悠花
    原稿種別: 総説
    2023 年 32 巻 2 号 p. 17-35
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    単細胞動物プランクトンである浮遊性有孔虫には,藻類との細胞内共生関係を築く種がおり,その関係性を「光共生」と呼んでいる。浮遊性有孔虫は,炭酸カルシウムの殻が微化石として地層中に保存され,かつ殻に生きていた当時の海洋環境および生態のシグナルが残されるという特徴があり,長時間スケールでの地球環境と生命の相互作用を探る上で,格好の研究材料である。また光共生は,生物進化的に重要な生態であるだけでなく,貧栄養海域における栄養戦略として,また炭素を中心とした物質循環の観点からも,地球表層システムにおいて重要な役割を果たしている。本稿では,浮遊性有孔虫と光共生に関する過去の知見を振り返りながら,著者らがこれまで行ってきた研究を,光共生シグナルの抽出,および光共生に関わる生物学的現象の解明を中心に概説する。また最後に,今後の光共生プランクトン研究の展望についても述べたい。

  • 増永 英治
    原稿種別: 総説
    2023 年 32 巻 2 号 p. 37-65
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    沿岸域における物質輸送過程は陸域と外洋間の物質収支の把握に重要であり,物質輸送過程の解明には混合現象の調査が必要不可欠である。本稿では,筆者がこれまでに行なってきた沿岸域における内部潮汐により発生する混合現象と関連する物質輸送に関する観測的研究や,数値計算を用いた内部潮汐のモデル化について紹介する。沿岸海域における混合現象はスケールが小さく直接詳細な構造を計測することが難しいことを着眼点に曳航式の観測装置を開発し,河口周辺における河川プリュームの混合状態や非線形性内部潮汐が斜面上で砕波する様子を観測することに成功した。大槌湾で観測した内部潮汐の砕波は,強い乱流混合による底質の巻き上げと中層高濁度層の形成を伴っていた。緩斜面においては,非線形性内部波の引き波と次の波が斜面上で衝突することで強い混合を発生させることを海洋の直接観測から始めて明らかにした。さらに内部潮汐の砕波を再現するモデルを開発し,内部潮汐砕波の詳細な構造の評価を行なった。また大スケールの海洋モデルを用いて,伊豆諸島周辺において日周期の内部潮汐が島々にトラップされ共振することで強化されることや,黒潮と内部潮汐の相互作用により黒潮上流方向への強い内部波エネルギーの伝播が起こることを発見した。本稿では,筆者が近年海洋観測技術を応用した湖沼における混合状態の研究事例も紹介する。

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