1980年代に海洋と大気を一つの結合システムとして扱う斬新な研究アプローチが登場した。赤道湧昇域で起きるエルニーニョを説明するビヤークネス・フィードバックに加えて,風・蒸発・海面水温フィードバックが熱帯収束帯の北半球への偏在を説明するために提案され,亜熱帯太平洋南北モードにも適用された。後者は,中緯度大気擾乱が熱帯気候へ影響を及ぼす重要なメカニズムとして,注目されている。1990年代以降,マイクロ波衛星観測により1,000キロメートルより狭い水平スケールを持つ現象が次から次へと発見された。ハワイ西方へ伸びる長い島陰,そして海洋フロントや中規模渦が大気境界層に及ぼす強制がその例である。地球温暖化に伴う海洋循環の変化に関して,風の変化よりは海面浮力強制が支配的であるという重要な結果が最近の研究から示唆された。進行する気候変化に現れる時空間パターンの解明は,海洋学および結合力学の新たな発展につながる。