マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
43 巻, 3 号
デジタル社会の新製品開発
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
  • 西川 英彦
    2024 年 43 巻 3 号 p. 3-5
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    The development and spread of digital technology has changed the digital environment, resulting in what may be described as a digital society. These events have caused significant changes in new product development and overall marketing. Changes related to new product development in the digital society can be roughly divided into two categories. First, changes in products themselves include the appearance of “digital goods” such as software (e.g., applications and games), content (e.g., music and movies), and information (e.g., weather forecasts and news); and “smart products” such as smartphones and smart speakers that are connected to the Internet and have small PCs built in. On the other hand, changes in product development methods include the emergence of “digital design” using tools such as CAD and analysis packages; “co-creation with external parties” such as open innovation, crowdsourcing, and crowdfunding; and “co-creation with AI and generative AI” using ChatGPT and Stable Diffusion. This special issue features five recent studies that capture the development of new products in the digital society.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― メザニンロースタリービジネスの勃興を事例として ―
    深見 嘉明, 福田 大年, 中村 暁子, 寺本 直城
    2024 年 43 巻 3 号 p. 6-18
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    本論文の目的は,コーヒー豆の焙煎の分野におけるDX(Digital Transformation)の一つの形であるスマートロースターがどのようにスペシャルティコーヒービジネスにおける製品の開発としてのコーポレートブランド構築に関与しているか,コーヒー焙煎プロファイルデータと焙煎士の相互作用に着目しながら,そのプロセスを解明することである。近年,スペシャルティコーヒーの市場が日本でも拡大するなかで,スマートロースターを導入する焙煎店や喫茶店も増えている。本稿では,日本のスペシャルティコーヒービジネスを支えるもう一つの大きな要素として,コーヒーの焙煎のDXの一つの形であるスマートロースターに着目し,それが製品のブランディング構築に関与するプロセスを解明する。そのために,日本国内におけるスペシャルティコーヒーの産業内での位置づけ(ポジショニング)について明らかにする。そのなかで事例研究からスマートロースターがスペシャルティコーヒーのブランディングにいかに関与し,焙煎士がどのような役割を担うのかについて考察する。

  • 石田 大典, 大平 進, 恩藏 直人
    2024 年 43 巻 3 号 p. 19-31
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    製品開発研究において,クラウドファンディング(CF)がマーケティング・リサーチやプロモーションの役割を果たすことが指摘されるようになっている。ところが,これらの役割の実態を実証的に明らかにする研究は試みられていない。そこで本研究では,日本の大手購入型CFプラットフォームにプロジェクトを掲載した支援者に対して調査を行い,いくつかの仮説の検証を試みた。分析の結果,CFの支援者と新製品パフォーマンスの間において,(1)支援者から学習し,新製品の品質を改善させる,(2)プロモーション効果が向上する,という2つの媒介効果が確認された。また,製品の非精通性によって,これらの効果が変化することも示された。一方,CFが競合の参入を促進し,新製品パフォーマンスを低減させるという媒介効果については,統計的に有意な関係を確認できなかった。

  • 岡田 庄生
    2024 年 43 巻 3 号 p. 32-43
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    デジタルの進化と共に,ユーザー共創型の新製品開発が増えている。そのような新製品を販売する際,ユーザーのアイデアから生まれたと伝えることで消費者の購買意向を高める「発案者効果」の存在が既存研究で明らかになっているが,その効果が失われる境界条件については十分に解明されているとはいえない。そこで本研究では,制御焦点理論に着目して,制御焦点の違いが発案者効果の境界条件に与える影響を探るための実験を行った。具体的には,複雑さが高い製品における促進焦点型の製品タイプに関する実験と,複雑さが低い製品における予防焦点型の広告メッセージに関する実験を行った。その結果,発案者効果が失われるとされる複雑さが高い製品であっても,促進焦点型の製品タイプでは発案者効果が得られることが明らかになった。また,複雑さが低い製品において,予防焦点型の広告メッセージとユーザー発案情報とは,負の交互作用効果があることも明らかになった。

  • ― 「AI(愛)のプリン」開発におけるAI生成情報と開発者との対話によるイノベーション ―
    廣田 章光
    2024 年 43 巻 3 号 p. 44-54
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    人間と人工知能が連携しイノベーションを促進する枠組みが「ハイブリッド・インテリジェンス」(Dellermann et al., 2019; Piller et al., 2022)である。その実現にむけての要件を,対話の視点によって明らかにすることが本研究の目的である。ハイブリッド・インテリジェンスは枠組みの提示がなされているものの,共働の内部については十分な議論が進んでいない。ある領域で豊富な開発知識,経験を有する開発者をここでは「スペシャリスト」と呼ぶ。本研究はAIとスペシャリストが共働し製品を開発するプロセスを調査し,対話の枠組みによって考察をする。AI生成情報と開発者だけで思いついた情報が,一致する場合もあれば,思いつかなかったがAIによる生成情報によって新たな製品の開発につながる場合がある。一方で,開発者がAI生成情報を理解できないためその情報が開発に結びつかない場合も存在する。本研究ではAI生成情報の中でもスペシャリストが「意外な関係」と認識する情報が新らたな「関連づけ」を創造する「きっかけ」と「手がかり」を提供することを示す。

  • ― チューハイのパッケージデザインを例に ―
    小川 亮, 小口 裕, 千田 彩花
    2024 年 43 巻 3 号 p. 55-67
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    本稿では,生成AIが人の創造性にどのように貢献するかについて研究を行った。マーケティング,心理学,認知科学における創造性研究レビューを行い,創造プロセスを考察した上で,生成AIの仕組みとの類似性から仮説を構築した。生成AIの活用が創造性のプロセスに寄与する,生成AIが作成した情報を段階的に提示することが創造性に寄与する,専門知識が高い創造主体の方が生成AIを活用して創造性を発揮しやすいという3つの仮説を立て実験を行った。実験ではAIを活用して制作したデザインとAIを活用せずに制作したデザインをそれぞれ6案用意し,3名のパッケージデザイナーのエキスパートインタビュー,85名のパッケージデザイナーへの定量調査,200名のユーザー調査を行った。検証の結果,ユーザー調査からは生成AIによる創造性寄与が見られた。一方,85名のパッケージデザイナーへの調査からは段階的な情報提示による創造性への寄与は見られなかった。また同調査から,生成AIが経験年数の短いデザイナーの創造性を向上させること,また経験年数の長いデザイナーに対しては目的から距離のあるAI生成画像であっても創造性に寄与する点が確認できた。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 小野 雅琴
    2024 年 43 巻 3 号 p. 68-75
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    広告音楽は,広告の非言語的手掛かりとして,消費者の反応に影響を与える重要な広告構成要素である。広告研究の分野では,1980年代から,広告音楽に関する研究が盛んに行われてきた。本論は,これらの膨大で多様な広告音楽研究を整序するに際して,依拠している理論基盤に着目し,広告音楽研究を,3つのカテゴリー,すなわち,(1)古典的条件付け理論を援用した研究,(2)精緻化見込みモデルを援用した研究,および,(3)処理流暢性を援用した研究に分けてレビューする。そして,レビューの結果として浮上する今後の研究の方向性として,(A)インターネット広告の音楽の効果に関する研究や,(B)消費者個人の要因やマーケティング情報の要因など,様々な要因の適合による処理流暢性の向上,すなわち,無意識的な情報処理に焦点を合わせた研究が,求められるということを指摘する。

マーケティングケース
  • ― パタゴニアのサーキュラーエコノミーへの取組み ―
    岩嵜 博論
    2024 年 43 巻 3 号 p. 76-84
    発行日: 2024/01/10
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    サステナビリティへの取組みの中で,資源を使用した後も循環させ再び資源として活用する循環型経済であるサーキュラーエコノミー(CE)に注目が集まっている。本論では,いち早くCEを前提としたビジネスとマーケティングを確立したパタゴニアのケーススタディを行う。本論では,サービスデザインの領域で発展し,近年ではマーケティング研究の中でも参照されているカスタマージャーニーを用いて,カスタマージャーニーの中でも特に購入後ステージにおけるメンテナンス・修理,リユース,リファービッシュ,リサイクルに注目して分析を行う。パタゴニアは,顧客とのダイレクト接点を活用したマーケティング変革を行うと同時に,購入後ステージにおける使用後の製品に関わる顧客体験をCEに適応する形でデザインしたことがわかった。

書評
編集後記
feedback
Top