理論と方法
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15 巻, 2 号
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特集II 社会学と数理的視座
  • 織田 輝哉, 斎藤 友里子, 太郎丸 博
    2000 年 15 巻 2 号 p. 233-234
    発行日: 2000年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
  • ―架橋を促すためのノート―
    髙坂 健次
    2000 年 15 巻 2 号 p. 235-248
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     古典理論の数学的定式化の試みは少なからず存在するにもかかわらず、一般にはなぜか不十分だと考えられている。本稿では、数理社会学と古典理論の関わりを、理論的アイディアの写像、構造・過程の写像、概念・命題の写像の3レベルに整理したうえで、両者を架橋するために何が必要かを提案する。数理社会学に必要なのは社会学的センス(古典理論の素養、経験的洞察、歴史認識、実践的動機)であり、古典理論に必要なのは数学的センス(明確化、表現、説明)であることを指摘する。
  • ―「生活環境主義」、「地域共同管理論」との対話へ向けて―
    長谷川 計二
    2000 年 15 巻 2 号 p. 249-260
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     「生活環境主義」、「地域共同管理論」と、社会的ジレンマ研究に代表される数理的アプローチはともに、利用者としての地域住民自身が、いかにして自分たちの居住する地域を再編成し環境を保全していくかを問題とする点で探求の方向性を共有している。本稿は、資源管理問題と環境保全問題の具体的事例を手がかりに、これら諸アプローチ間の相互理解を図り、より一層の対話を促進することを目的としている。「生活環境主義」は、その方法が明確であり、数理的アプローチにおいて、たとえばゲームの構造を事例に即して考察し比較する上できわめて有効である。また「地域共同管理論」は、地域住民による主体的な地域の運営・管理を可能とする条件の解明に取り組んでおり、そこで明らかにされた諸条件は社会的ジレンマの新たな解決可能性を示唆する。他方、数理的アプローチは、地域社会に共通して見られるシステム安定化装置(たとえば、村八分)の存在根拠を示すとともに、地域管理に向けた諸条件の有効性を明らかにすることで、「生活環境主義」、「地域共同管理論」による研究に貢献することができる。
  • 他者危害原則のフォーマライゼーションとそのインプリケーション
    永田 えり子
    2000 年 15 巻 2 号 p. 261-272
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     個人に合理性のみならず倫理性を求める。具体的には、他者危害原則に従う合理的な個人を想定し、かれらによる非協力ゲームのナッシュ均衡点は必ずパレート最適となることを確認する。すなわち「人に迷惑をかけない限り何をしてもよい」という倫理原則は、個人の自由よりもむしろ全員一致性、全体合理性を意味するものであることがわかる。
  • ―意図,行動,解釈図式のファジイ集合による定式化―
    都築 一治
    2000 年 15 巻 2 号 p. 273-286
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     非協力ゲームに依拠する相互行為理論が想定する行為と,理解社会学が対象とする思念された意味を付与された有意味的行為とは,いくつかの点で異なっている。本稿は,その異同を行動と行為意味の概念的な分離の点で検討し,さらに,通常は離散的集合として分析される行為の意図および行動それぞれをファジイ集合と見なすことによって,非協力ゲームにおける離散的戦略概念を拡張し,有意味的行為の概念との接合を試みる。その結果,一般化された行為概念がファジイ集合によって記述されることを示し,さらに,二者関係における双方向の行為の提示・解釈過程のモデル化を試みる。
  • 太郎丸 博
    2000 年 15 巻 2 号 p. 287-298
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿のねらいは、社会学における合理的選択理論の伝統を概観し、今後の発展の可能性を示すことにある。合理的選択理論は行為の目的合理性を過剰に強調すると同時に、選好と機会構造の形成過程をしばしばブラックボックスのままにしてきたため、社会学の中では異端でありつづけてきた。しかし、マイクロ-マクロ・リンクおよび行為の多元的合理性を梃子にしながら社会批判・政策提言を行っていくことは、社会学の良質の伝統に属する。そして合理的選択理論もそのような良質の伝統に属する。そのことが一見異端とも思える合理的選択理論が社会学の中で発展してきた理由の一つであり、このような伝統を共通の基盤にしながら他の学派との対話も可能であることを示す。
  • 志田 基与師
    2000 年 15 巻 2 号 p. 299-312
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     権力を主題とする社会理論を権力理論と呼ぼう。権力理論は、理論であるからには現象を説明する能力をもとめられ、与件から被説明項である社会状態を一義的に演繹するものでなければならない。この性能は理論が備える法則的言明あるいはそれらの組から導出される命題が担っている。権力理論は、理論に備わる法則あるいはそこから導出される命題のいくつかが非対称的な決定(ディタミネーション)の形式となる社会理論のことである。この非対称な命題を権力命題と呼ぼう。このことはすべての変数が一般には相互に連関するという社会理論に持ちこまれた特殊な仮説であり、つねに無条件に成立することではない。非対称的な決定形式を持つ法則的言明が理論に含まれるとはどのような場合であるのかまたどのような条件のもとでそれは可能となるのか検討すると、権力は一つの理論体系の中でも多様なものでありうることが明らかになる。またそれらの可能性に応じて権力理論がどのようにして可能になるのかについて、いくつかの権力理論の一般性と特殊性とについて検討する。
  • ―結果の平等、機会の平等および効率―
    与謝野 有紀
    2000 年 15 巻 2 号 p. 313-330
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿では、「結果の平等」がどのような状態のときに、もっとも経済発展しやすいかをまず問題としている。この目的のために、Nelsonの「低水準均衡の罠」のモデルを概観し、そこでの帰結が、結果の平等―不平等とどのような関連性を持つかを数理的に解析する。数理解析にあたっては、個人の所得―投資曲線の期待値として、平均所得―平均投資曲線を考え、その形状の変化を不平等度との関連で考えている。結果として次の2つの命題が明らかとなった。1.任意の所得―投資曲線について、どのような所得分布をかんがえても、平等な状態において平均所得に対する平均投資はもっとも少ない。2.パレート分布を考えた場合、任意の所得-投資曲線について、不平等であるほど平均投資が増える。また、より一般的に投入―産出曲線を考えた場合、その形状にしたがって、これらの命題に対応する結論が異なることが明らかとなった。
     さらに、「機会の平等」が投入―産出曲線の形状の変化と結びつきうることを議論し、「機会の平等」、「結果の平等」、「効率」の3者の連関パターンの整理をおこなった。
原著論文
  • ―「プロテスタンティズムの倫理」のフォーマライゼーション―
    鈴木 譲
    2000 年 15 巻 2 号 p. 331-344
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿では、これまで主に哲学者、論理学者の間で議論されて来たニューコーム問題を数理社会学の観点から論ずる。ニューコーム問題とは、予言者の存在を仮定したパラドックス的設定の下での意思決定の問題である。予言者の能力によってこの問題の性質は大きく異なるが、本稿ではいわゆる予言者の完全性を仮定した場合に議論を限定し、この問題を2つの観点から論じる。第一は数理論理的な観点、特に公理系の無矛盾性の観点である。結論としては、ニューコーム問題は合理的意思決定の問題としてはそもそも決定不可能な命題であり、因果律の方向が本質的に重要であることを示す。因果律はその方向に応じて、順因果律と逆因果律の2種類を考えることが出来る。第二は社会学的観点であり、前述の数理論理的観点から得られた定式化を社会現象に応用することを試みる。この応用の具体例として、Weberのプロテスタンティズムの倫理のフォーマライゼーションを行い、カルヴィニズムにおける信徒の意思決定が逆因果律の論理に対応していることを示す。
  • 中井 豊
    2000 年 15 巻 2 号 p. 345-358
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     流行には、1960年以降3回あったスカートの流行や、幕末以降4回あった新宗教ブームなど、「ほぼ同一の様式がある程度周期的に普及と沈滞を繰り返す循環型」の流行現象が存在する。
     このような循環型流行現象の原因としては、従来いくつかのメカニズムが提案されていたが、本研究では「社会の気質」が周期的に変化している可能性に注目し、石井モデルを拡張したモデルを立てて、気質の周期的な変化が自律的に生じることがあるかどうかを検討した。
     具体的には、石井モデルにおける流行採否戦略の社会的分布を社会の気質と解釈し、それを学習によって変化させるモデルを立ててシミュレーションを行った。その結果、あるパラメーターにおいて、採否戦略の周期的な変動と、それに伴うアイテムの流行の周期的な変化が見出された。
     更に、採用に敏感な者同士のクラスターの発生と消滅が、この変動を駆動していることが分かった。
  • ―高校生女子のアスピレーションの規定因に関する計量的研究―
    神林 博史
    2000 年 15 巻 2 号 p. 359-374
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     女性のアスピレーション(教育アスピレーション、職業アスピレーション、就業キャリア希望)形成に関しては、「性役割の内面化がアスピレーションを形成する」という主張がなされてきた。しかし、この主張は操作的なモデル構築においても、実証的な分析技法においても不十分な点が多い。本稿ではこれらの問題点を整理した上で、高校生女子のアスピレーションの規定要因について、多項ロジットモデルを用いた分析を行う。分析の結果、教育アスピレーションは学校および家庭要因に規定され、性役割意識には影響されないことが明らかになった。このことは、先行研究に見られた性役割意識とアスピレーションの間の効果が、疑似相関である可能性を示唆するものである。ただし、就業キャリア希望に関しては性役割意識は有意な効果を持っていた。これらの結果は、「性役割の内面化がアスピレーションを形成する」というモデルの再検討を示唆するものである。
研究ノート
  • A Simple Model
    Kunihiro KIMURA
    2000 年 15 巻 2 号 p. 375-382
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
         This paper explores a micro-macro link: to explain the relationship between women's expanding economic independence and the rate of the unmarried in terms of a model of women's rational decision-making. An expected utility model is developed and combined with the assumption of random matching of men and women. The major propositions derived from the model are as follows. (1) The severer the sex discrimination in the sense that the difference in the means of the logarithm of income between men and women is large, the lower the probability of being unmarried. (2) The severer the sex discrimination as measured by the probability that a married woman, relative to an unmarried woman, can stay in her job, the higher the probability of being unmarried. (3) It is predicted that in most industrial societies, the higher the degree of inequality within the sexes, the higher the probability of being unmarried.
書評特別企画 James S. Coleman, Foundations of Social Theory
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