理論と方法
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10 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
会長講演
  • 原 純輔
    1995 年 10 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     性は、人間の重要な行動領域の1つであることは間違いない。けれども、性行動を主要な研究対象としている社会学者は、少なくとも日本では、ほとんどいないと思われる。それ故、これまでの調査・分析の経験についてあらためて考察を加えてみることは、社会学における研究のありかたに示唆を与えてくれるのであろう。
     第1は、調査方法についてであるが、性が個人の最高のプライバシーに属することがらであるだけに、通常の調査以上に、実施には困難がともなう。そして、必ずしも教科書どおりにはいかない、さまざまな工夫が必要になる。
     第2に、これまでそれを視野に収めてこなかった研究領域でも、性行動という観点を導入することによって、よりよく見えてくるものが少なくないと思われる。そのような事例として、発達過程研究、階層研究、ジェンダー問題研究をとりあげ、検討を加える。
特集 ゲーム理論の可能性
  • 佐藤 嘉倫
    1995 年 10 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 1995年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
  • ―社会的ジレンマに関する実験社会心理学的研究とゲーム理論的研究の対話の試み―
    土場 学
    1995 年 10 巻 2 号 p. 115-132
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     社会的ジレンマに関する実験社会心理学的研究のなかでもっとも有力な立場の一つに「社会的価値理論」がある。これは、自己の利得と他者の利得の考量の仕方に含意される個人の価値指向の「社会性」に注目して、個人の価値指向と状況認知が社会的ジレンマ状況における個人の行動にどのような影響を及ぼすかを解明しようとするものである。本稿はまず、この社会的価値理論が考察している問題状況をゲーム理論にもとづいて「不完備情報ゲーム」としてフォーマライズすることを試みた。そしてそのゲーム理論モデルから、ある特定の条件のもとでは社会的価値理論にもとづく実験研究から得られた経験命題とは対立する事態が成立することを明らかにした。本稿では、そうした結果を踏まえて、社会的価値理論における社会的価値指向の概念化にそもそも問題があることを指摘した。
  • 石田 淳
    1995 年 10 巻 2 号 p. 133-146
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     社会科学において、複雑な社会現象の分析にゲーム理論を適用する際に問題となるのは、合理的意思決定の主体である。国際政治理論において、国家間の戦略的相互依存関係を分析するにあたって、国家という集合体を、いわばゲームのプレイヤーとして仮定し、その対外政策を、国家という分析単位において合理的な選択の結果として解釈するという理論的手法がアメリカ合衆国を中心にこれまで広範に用いられてきた。本稿は、この方法がもたらす分析上のバイアスを方法論的個人主義の観点から考察する。ここでは、国家間の関係を選挙に参加する投票者からなる民主主義国家間の関係として捉え、所得配分が、国内の総所得とは独立に、選挙を通じて決定される軍事支出に与える影響をモデルを通じて分析する。このモデルの分析から、不平等な所得配分が軍事費を引き下げるメカニズムを明らかにする。また、民主体制において、低所得層の人口が増加するにつれ、高所得層の政策意向が一層政策に反映されるというパラドクスを合理選択の枠組みの中で説明する。
  • ―ゲーム理論による分析―
    武藤 滋夫, 大西 匡光, 小野 理恵
    1995 年 10 巻 2 号 p. 147-163
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     本論文では、代議員制度において、各選挙区の投票者が代議員の選出を通して議会での決定にどれだけの影響力をもちうるかを、特に2政党制の場合に議論をしぼり、シャープレイ・シュービック(SS)指数によって分析する。ます、伝統的な投票ゲームによる定式化においてはSS指数は必ずしもわれわれの直観にそぐわない結論を導くという、既知の結果を振り返る。ついで、その原因が投票ゲーム表現の不十分さにあることを指摘した上で、投票者のグループのパワーを彼らが当選させうる代議員の数によって与えるような新たなゲーム表現を与え、その下では、各投票者のSS指数は、その投票者の属する選挙区の代議員定数をその区の投票者数で割った、いわゆる「1票の重み」に一致すること、さらに、いくつかの選挙区をまとめたブロック別の比例代表区を並立する場合には、各投票者のSS指数は、その投票者の属する選挙区における1票の重みとその選挙区が属するブロックにおける1票の重みとを加えたものとなること、を示す。最後に、衆議院議員選挙の新制度、参議院議員制度における各選挙区の投票者の影響力について、修正されたゲーム表現とその下でのSS指数を用いて評価した結果を与える。なお、SS指数と並んでよく用いられるバンザフ指数は、投票ゲームによる定式化、修正されたゲーム表現の双方において、直観にそぐわない結果を導くことを本論文の最後に付録として与える。
  • 数土 直紀
    1995 年 10 巻 2 号 p. 165-179
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     本稿では、サンクションを有する正当化された権力(公式権力)を問題にする。一般には、権力が正当化されるためにはその権力が組織の維持に貢献している必要があると考えられている。しかし、公式権力の行使がパレート劣位な状態を導く場合が存在する。したがって、組織の維持に対する貢献は、公式権力の本質的な規定ではない。また、本稿では、この事実をゲーム理論を用いて明らかにすることで、ゲーム理論が社会現象の分析にとって有効な方法であることを明らかにする。
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