Otology Japan
Online ISSN : 1884-1457
Print ISSN : 0917-2025
ISSN-L : 0917-2025
22 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
インストラクションコース2
  • ─聴神経腫瘍手術と前庭神経切断術での新技術─
    宮崎 日出海, 三浦 正寛, 三浦 康士郎, 中島 正明, 中冨 浩文
    2012 年 22 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    聴覚温存手術のためには、従来の聴性脳幹反応や蝸牛神経活動電位よりも反応が鋭敏で安定して得られ、かつ、手術操作を止めることなく持続的な情報を術者に提示する新たな聴覚モニタリングが必要であると考えた。私どもが開発した術中持続聴覚モニタリング手術の特徴は、モニタリング電位の変化によって蝸牛神経のダメージをリアルタイムに知ることであり、それに従って手術部位や操作を変え、時には電位回復のために全ての操作を中止して待機を行う点にある。より中枢側から安定した電位を持続して得られる本モニタリング法によって、蝸牛神経に低侵襲な手術が行えるようになり、また、DNAP電極を利用して蝸牛神経の走行を電気生理学的に確認することが出来るようにもなった。これらにより、聴神経腫瘍手術における聴力温存率が飛躍的に向上し、同様に、難治性メニエール病に対する前庭神経切断術がより安全、確実に実施出来るようになった。
公募シンポジウム4
  • 枝松 秀雄, 安田 真美子, 佐々木 優子, 小林 真由美, 松島 康二, 長舩 大士, 末次 敏成, 井田 裕太郎
    2012 年 22 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    若手耳鼻科医が、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの頻度の多い中耳手術を習得することは大切であるが、アブミ骨手術は比較的少ないが中耳の正常解剖と操作手技が理解できるため有用な手術教育プログラムである。
    若手医師への耳科手術の教育状況を調べるために、日本耳科学会の評議員にアブミ骨手術について、年間のアブミ骨手術件数、手術医師数、研修の開始時期と範囲、研修に必要または不適な項目、若手医師が希望する耳科手術、などの8項目についてアンケート調査を依頼し90%以上の回答を得た。高回答は、各施設責任者の若手医師教育への高い熱意の表れと考えられる。
    耳鼻科専門医の絶対数が減少し、耳科手術治療施設の増加が望めない現状では、多くの若手医師が耳科手術を体得して、患者の術後の聴力回復を実感することが必要である。このためには、アブミ骨手術のような基本的な耳小骨解剖を操作できる手術を身につけることは重要である。
  • 神崎 晶, 井上 泰宏, 齋藤 秀行, 小川 郁
    2012 年 22 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    目的) 若手医師、医学部生を対象に3次元 (以下3D) 動画による側頭骨臨床解剖、3D側頭骨CTに関する講習を行った。その教育効果を解析する。
    方法) 3D教材の効果をみるために、若手医師向け教材と医学生向け教材を作成し以下2つの試みを行った。
    1) 若手医師向けには側頭骨臨床解剖教育動画 (経迷路法、経中頭蓋窩法それぞれ2つの手術アプローチに関する動画) を作成した。その動画を専修医を含む経験年数の若い医師に視聴させた後、質問紙に回答してもらった。2) 医学部生には3D-CT画像あるいは2次元 (以下2D) -CT画像を用いた教材で講義を行い、教育効果について解析した。
    結果) 3D動画視聴により、新たに理解できた解剖部位は、1年目医師では「顔面神経」であり、4年目医師では「内耳道」であった。耳鼻咽喉科経験年数を経るにしたがって理解度も向上していた。学生では3D教材による講義は2D教材と比較してより短時間で同じ効果を得た。
    結論) 3D教材は理解度の向上、教育の効率化に貢献する可能性を見出した。今後も改良を行って医師・医学部生に対して3D画像・動画による教育システムを検討したい。理解度を評価する方法として試験や質問票の確立も重要である。また、本稿ではご遺体に関する最近のガイドラインについても紹介し、今後の臨床解剖教育の問題点についても言及した。
  • 角田 篤信, 伊藤 卓, 喜多村 健, 岸本 誠司
    2012 年 22 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    耳科手術医養成のために我々が行っている若手医師のためのプログラムについて紹介する。この教育プログラムの目的は側頭骨解剖の実践的な理解であり、解剖所見と画像所見の有機的な統合を目指すが、特にCT所見の徹底的な理解と解剖構築との結びつきを特長としている。薄いスライスのCTデータを研修者自身が操作し、画像上で伝音連鎖、耳管、半規管など機能解剖学的なつながりで追うことで空間的な理解が可能となる。同一のデータから作成された模型を用いた削開も可能であり、これらは研修者がいつでも自習可能である。乳突削開指導は前述の三次元模型のほか、実際の解剖体でも行うが、解剖の知識だけではなく、顕微鏡下の両眼視、吸引、ドリルの操作など両手操作の指導にも配慮している。また、頭蓋底手術では通常の耳科手術では得られない視野や操作を学ぶことが可能であり、耳科手術の理解がより深めることが出来る貴重な学習機会である。
  • ─自らの経験を基に─
    萩森 伸一
    2012 年 22 巻 3 号 p. 214-218
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    安全かつ成績のよい術者を育てるためには、教育システムの構築が必要である。大阪医科大学では以前、耳科手術数が少なく、系統だった手術教育はなされていなかった。筆者はこの15年、教育システムを構築に取り組んできた。まず手術の基本は側頭骨解剖の熟知であり、組織切片や高分解能CTによる学習、次いでcadaver dissectionによる手術解剖実習を導入した。cadaver dissectionは手術解剖の理解のみならず、手術器具の扱い方の習熟にも有用である。実際の手術の際には指導医は執刀医の傍に付き、限られた時間の中、一つの手術の中で担当させる範囲を予め設定したうえで集中した指導を行っている。手術記録や入院サマリーは詳細かつ正確に記入・作成することを義務付け、指導医による入念なチェックを行っている。このような教育システムの導入によって、手術成績は向上し、また手術合併症は減少した。また耳科手術数も大きく増加した。
公募シンポジウム2(その3)
  • 小森 正博
    2012 年 22 巻 3 号 p. 219-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    一側性難聴をもつ私の体験を述べ、本邦では検討が少ない日常生活や学業上の不自由さ、心理的問題などについて考察する。
    患耳側からの聞き取りの困難さにより、私は学会発表時に時にマイクの音が聞き取れないことや、患耳側の方と話すときに不便さを感じ座る席に気を遣うこと、話が聞き取れずに時に会話に入るのを諦めることがある。これらは社会人には支障となるもので、心理的負担となり、何らかの支援を必要としている例があるかもしれない。
    両親からの支援や学校の配慮により私は特に問題がなく幼少期や小学期を過ごせたが、大学卒業時に手術を受けることは両親に反対された。家族から患者へ正しい情報が伝わるとは限らず、また、先天的な疾患をもつ患者は治療によって何が改善するのか十分認識できていない可能性もあるので、しかるべき時期に正しい情報を提供してあげる必要があると思われた。
原著論文
  • 内田 育恵, 杉浦 彩子, 植田 広海, 中島 務
    2012 年 22 巻 3 号 p. 223-230
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    中耳の加齢変化は、解剖学的には鼓膜弾性、耳小骨筋、腱、靱帯の剛性、連鎖可動性等に現れるとされるが、個人差が大きく一致した見解はない。今回、中高年地域住民について、中耳機能の推移について検討を行った。10年の測定間隔の前後で評価できた950名[解析1)]と、1回以上の繰り返し参加を含む3333名[解析2)]を対象として、static admittance(静的コンプライアンスに相当)とピーク圧、共振周波数 (RF) の中耳機能3指標を解析した結果、10年前後の測定値相互に相関がみられ、10年では個体の特徴が保たれていた。解析1) と2) のRFで、stiffnessが高齢で軽微ながら増加または減少という、二つの相反する結果となり、加齢により、中耳stiffness減少と増加をもたらす、相反する解剖学的変化が個体ごとに様々な程度で混在して方向性が一貫しないことが、中耳加齢の特徴であると推察された。
  • 稲本 隆平, 宮下 武憲, 大崎 康宏, 星川 広史, 森 望
    2012 年 22 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    1992年から2010年までに当科で初回手術を施行し、術後1年以上経過観察しえた先天性真珠腫手術症例30例について検討した。低年齢で発見される傾向があり、発生部位は鼓室型が多く、なかでも後上象限型が多かった。一期的手術を行ったのは26耳、段階的手術は4耳であった。術式は、外耳道後壁保存型が27耳、経鼓膜的に摘出したものが3耳であった。伝音再建はI型10耳、IIIc型4耳、IVi型11耳、IVc型5耳で、成功率はそれぞれ100%、50.0%、54.5%、75.0%であった。全体では66.7%の成功率であった。一期的手術を行ったもののうち5耳、段階的手術を行った4耳で遺残性再発を認めた。急性中耳炎や滲出性中耳炎の治療中に発見される症例が多く、外来では先天性真珠腫の可能性も念頭に置きながら診療する必要があり、光学機器のさらなる発達・導入により低年齢で早期発見が可能となり、治療成績が向上すると思われる。
  • 竹田 将一郎, 羽藤 直人, 岡田 昌浩, 暁 清文
    2012 年 22 巻 3 号 p. 238-243
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    髄膜腫は原発性脳腫瘍の中では最も頻度の高い組織型であるが、頭蓋内病変を伴わず、頭蓋外に孤立して見つかることは稀である。今回我々は、中耳内に限局する髄膜腫の1例を経験したので、報告する。症例は50歳女性。主訴は左耳閉感。近医耳鼻咽喉科にて加療されるも改善なく、近くの総合病院耳鼻咽喉科を受診。MRIにて中耳腫瘍疑われ平成21年11月27日愛媛大学耳鼻咽喉科を受診。左鼓膜後象限に白色塊が透見されたが、陥凹や穿孔認めなかった。標準純音聴力検査では、聴力に左右差なく正常範囲内であった。MRIにて左上鼓室~乳突洞口にT2強調像でやや高信号、造影効果のあるMassを認めた。また、CTでも同部位に軟部組織陰影を認めるも、頭蓋内には髄膜腫を疑う所見はなかった。平成22年2月16日経乳突洞的に腫瘍生検を施行。Meningioma; WHO grade Iと診断された。平成22年4月16日、左中耳腫瘍摘出術を施行した。明らかな硬膜や神経との連続性は認めず全摘出しえた。特記すべき後遺症や再発はなく、現在愛媛大学耳鼻咽喉科外来にて経過観察中である。
  • 太田 有美, 長谷川 太郎, 川島 貴之, 宇野 敦彦, 今井 貴夫, 諏訪 圭子, 西村 洋, 大崎 康宏, 増村 千佐子, 北村 貴裕, ...
    2012 年 22 巻 3 号 p. 244-250
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    人工内耳手術においては手術手技に関係した合併症もあるが、電極のスリップアウトや機器の故障など特有の問題で再手術を要することがある。再手術は患者にとって負担となるものであり、避けうるものは避けなければならない。また術前に起こりうる合併症について患者に情報提供する必要もある。そこで、これまで当科で行った人工内耳手術症例について術後の合併症、特に再手術に至った症例の手術内容、原因を検討することとした。
    対象は1991年1月から2011年3月までの20年間に大阪大学医学部附属病院耳鼻咽喉科で人工内耳手術を施行された症例494例(成人319例、小児175例)である。
    何らかの理由で再手術を行ったのは、成人27例(8.5%)、小児20例(11.4%)であった。再手術の原因は、機器の故障8例、音反応不良11例、電極スリップアウト・露出6例、皮弁壊死5例、真珠腫4例などが挙げられる。小児では外傷(2例)や内耳奇形に起因するgusher(1例)や顔面痙攣(1例)がみられた。手術内容としては電極入れ替えが最多であったが、本体移動や真珠腫摘出、人工内耳抜去もあった。複数回手術を要している例もあり、特に小児において成人に比べると有意に多い。小児では皮弁の感染・壊死や真珠腫形成などで手術を要する状態になると複数回手術を要していることが多かった。このことから小児では皮弁の感染、壊死に特に注意が必要であると考える。電極スリップアウト・露出した例13例中8例(61.3%)という高い割合で中耳疾患の既往がみられており、中耳疾患の既往がある場合は、電極が露出しないような工夫を行う必要がある。
    人工内耳手術は重篤な合併症の割合は低く、安全な手術といえるが、皮弁壊死や真珠腫形成で複数回の再手術を要することがあり、患者指導や専門医による定期的な経過観察、長期の経過観察が必要と考える。
  • 富山 俊一, 渡邊 健一, 斎藤 明彦, 増野 聡, 斎藤 亜希子, 草間 薫
    2012 年 22 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    内耳自己免疫病でプレドニゾロン60mg漸減治療無効95症例146難聴耳、めまい併発31症例に対する2年間のシクロフォスファミド治療効果を検討した。
    初回CPM治療では正常回復18耳、著明回復28耳、回復27耳、不変73耳、悪化0耳で難聴耳改善率が50%の成績であった。2年間に41名64耳が再発した。2年後成績では各々17耳、25耳、25耳、69耳、10耳であった。難聴耳改善率は46%で初回治療成績と有意差なかったが、悪化率は有意に増加した。非再発群での初回治療成績別2年後難聴耳改善率は、正常回復耳100%、著明回復耳81%、回復耳71%、不変耳11%であった。一方、再発群では各々50%、67%、77%、17%であった。正常回復耳の2年後難聴耳改善率は、非再発群が再発群に比較して有意に高率であったが、著明回復耳や回復耳では両者間に有意差なかった。この結果、初回治療回復以上の改善耳は再発しても2年間は50%以上の改善率を維持した。既病名別の難聴耳改善率は急性低音障害型感音難聴69%、メニエール病55%、突発性難聴49%、対側型遅発性内リンパ水腫25%、特発性感音難聴22%の順であった。回転性めまい発作は治療開始後3カ月で有意に減少した。めまい症例と非めまい症例との難聴耳改善率には有意差なかった。ステロイド難治性難聴、めまいの内耳自己免疫病症例のCPM治療2年後には難聴耳の46%が改善し、めまい症状の全例が有意に改善した。
  • 李 佳奈, 牧野 邦彦
    2012 年 22 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    迷路気腫は蝸牛や前庭に空気が存在する状態である。ほとんどの症例は側頭骨骨折に伴うものであるが、アブミ骨手術後・中耳真珠腫・中耳の悪性腫瘍・内耳奇形に伴うものなどが報告されている。我々は側頭骨骨折や耳かき外傷にともなわない迷路気腫の4例を経験した。1例は山頂でのバルサルバ手技に伴って起こったものであり、その他は中耳真珠腫に伴って起こったものである。迷路気腫の症状はすべてのタイプの難聴、めまい、耳鳴、耳閉感などである。診断にあたっては、高分解能CTが有用であり、我々の経験した症例でも前庭や蝸牛に空気像をみとめた。治療はベッド上安静や頭部拳上などの安静加療、薬物加療、手術などである。手術は進行性の難聴やめまいが続く症例に有用であり、特に高度の難聴症例は手術によって改善する可能性がある。
  • 福留 真二, 鳥原 康治, 平原 信哉, 長井 慎成, 東野 哲也
    2012 年 22 巻 3 号 p. 266-273
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    両側の混合難聴を伴った肥厚性硬膜炎の2症例を経験した。2症例ともにMPO-ANCA陽性で、滲出性中耳炎を合併しており、MRI検査にて肥厚性硬膜炎の診断に至った。症例1においては肥厚した硬膜の生検を施行しているが、血管炎の病理所見は認められなかった。すでに患側は聾に至っており、ステロイド大量投与によって肥厚性硬膜炎の改善はみられたが、聴力の改善は認めなかった。比較的早期に診断がついた症例2では、ステロイド大量投与により肥厚性硬膜炎および聴力の改善を認めた。
    難治性滲出性中耳炎に骨導閾値の上昇、MPO-ANCA陽性を合併した症例に対しては本疾患を念頭に置く必要があると思われた。また不可逆性の聴力障害を来す前に、早期治療が必要と思われた。
  • 福田 潤弥, 合田 正和, 藤本 知佐, 池園 哲郎, 中川 尚志, 日比野 浩, 北村 嘉章, 阿部 晃治, 田村 公一, 武田 憲昭
    2012 年 22 巻 3 号 p. 274-279
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/12
    ジャーナル フリー
    Perilymphatic oozerが疑われたCTP陽性の耳性髄液漏症例を報告した。外傷により外リンパ瘻が生じ、髄液が蝸牛小管を通して内耳窓からperilymphatic oozerとして漏出、髄液と外リンパが混合して漏出した可能性が考えられた。perilymphphatic oozerでは膜迷路に機械的障害がなければ、外リンパが失われた分、髄液で補われるため骨導聴力が保たれ、めまいや眼振を認めず、CTPが陽性となる症例が存在する可能性が示唆された。
feedback
Top