日本信頼性学会誌 信頼性
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39 巻, 6 号
安全・信頼性のためのヒューマンファクタ―
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 伊藤 誠
    2017 年 39 巻 6 号 p. 310-317
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー
    自動車の自動運転に関する技術開発の進展は目覚ましく,報道を見る限り,もう間もなく実現され るのではないかという印象をうける.確かに,従来の運転支援の延長線上にあるようなシステムは少 しずつ市販され始めている.しかし,よくよく見てみると,運転者を全く必要としない自動運転が実 用に供されるようになる目途は今のところ立っていない.自動運転と呼ぶべきシステムも形を成しつ つあるが,それらはいざというときには人間のドライバを必要とする.人間の存在を前提とした自動 運転を考える場合,人間がいつどのようにかかわるかを適切に設計する必要がある.本稿では,自動 運転技術に基づくシステムに人間がかかわる際の諸問題について論じる.まず,自動運転のレベルと いう用語について,その定義とそれにまつわる諸問題を述べる.つぎに,それぞれのレベルについて, ヒューマンファクターの課題を説明する
  • 森本 裕二, 和田 一成
    2017 年 39 巻 6 号 p. 318-325
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー
    眠気の発生には人間の持つ複数の生体リズムが関与しているといわれている.西日本旅客鉄道株式会 社(以下「当社」)の乗務員は,通常泊まり勤務の形態を採用しており,深夜帯や早朝の乗務があるこ とから生活習慣が不規則になりやすい.生活習慣が不規則になると,睡眠・覚醒リズムを司る生体リズ ムが乱れやすくなる.運転士の乗務中における眠気に関する実態調査によって,眠気の発生に生活習慣 の乱れが関与している可能性が確認された.そこで,睡眠・眠気に関する基礎知識の習得,生活習慣改 善による眠気予防に向けて「運転士のための眠気防止ガイドライン」を作成し,全乗務員に配布した. また,睡眠日誌を活用した運転士の生活リズム改善にも取り組み,規則的な生活リズムを形成すること の有用性を発信した.さらに,良質な睡眠確保に向けた睡眠環境改善として,乗務員が夜間寝泊りする 乗務員宿泊所内の照明と寝衣の改善を行ったところ,睡眠の質と睡眠感の改善効果が確認された.これ らの研究・調査結果を受けて,現在当社では,睡眠・眠気に関する教育の実施や指導者の育成,睡眠に 適した乗務員宿泊所の環境改善など,乗務員の眠気予防に向けて様々な取り組みを進めている.
  • 大濱 有美, 西澤 智
    2017 年 39 巻 6 号 p. 326-333
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー
    地上約400Km上空にある国際宇宙ステーション(以下,ISS : International Space Station)はアメリカ,ロシア,欧州,カナダ,日本を含めた,宇宙機関に参加している全15カ国の国際協力のもと2008年より運用されている.日本は国際宇宙ステーションの一部である日本実験棟「きぼう」(以下,JEM : Japanese Experiment Module)の訓練,運用,利用を担っている.本資料では,国際宇宙ステーションに 搭乗する宇宙飛行士,及び地上から支援を行う運用管制要員の Crew Resource Management 訓練(以下, CRM 訓練)について紹介する.
  • 森泉 慎吾, 臼井 伸之介, 和田 一成
    2017 年 39 巻 6 号 p. 334-341
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー
    近年,安全に制御された環境下にて不安全行動を体験し,その危険性の学習を図る体験型の安全教 育が注目されている.本論文は,その有効性について消防士を対象に実践した研究結果を基に,安全 教育研究の諸問題や展望について議論するものである.本論文にて取り上げた安全教育は,PC ベース にて不安全行動を体験可能であり,そのメカニズムの解説や事故事例の紹介を行う「エラー体験プロ グラム」(臼井, 2008)であった.特に本論文では,プログラムの実践報告(森泉ら, 2014)での問題を 踏まえ,教育の内容評価に主に焦点を当てた.結果,エラー体験プログラムは教育内容の理解や態度 変容を適切にもたらす可能性が示唆された.本研究を含め,安全教育においては,有効性の判断材料 となる指標(ex. 教育前後の態度)の適切さ,教育内容の評価における社会的望ましさの影響,教育効 果のなかったプログラムが報告されにくいという公表バイアスなど,考慮するべき問題が多い.今後 の展望として,蓄積された研究成果の統合および整理を図るような安全教育研究の実施が期待される.
  • 佐野 雅隆, 金 海哲, 梶原 千里
    2017 年 39 巻 6 号 p. 342-347
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー
    医療において,事故の発生を低減することは重要な課題である.医療サービスの主たる提供者は人 間であるため,ヒューマンファクターに着目した管理が重要である.事故の低減にあたっては,イン シデントレポートを収集し,分析をしているが,施設内で発生するインシデントの件数が多く,すべ てを分析することは困難である.そこで,簡易的かつヒューマンファクターに着目できる分析手法を 開発し,また,その分析結果としてエラーモード・エラー要因を分析する手法を開発している.さら に,施設内で発生する事故事例に基づき, を実施することで,効果的な安全文化の醸成に取り組 んでいる. 本稿では,医療機関との共同研究を通じて,これまでに構築してきた報告システム及びその後の分 析・対策立案の流れを紹介するとともに,医療安全教育の実施に向けた分析例を示すことで,医療に おけるヒューマンファクターへの取り組みの一部を紹介する.
  • 宮地 由芽子
    2017 年 39 巻 6 号 p. 348-354
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー
    ヒヤリハット等の経験によって獲得される知識の多くは理解やノウハウといった暗黙的なものが多 く,うまく引き出すことができなければ消失してしまう.しかし,これを上手く引き出し,何らかの 教訓として活用すれば,失敗経験でも,組織にとって有効な情報となりうる.そこで,本論では,鉄 道におけるリスク情報(ヒヤリハット等)の情報収集・活用を支援するための近年の研究例として, 背景要因に関する情報を収集するための聞き取り調査手法,職場のコミュニケーションを活性化する ための管理者コミュニケーション評価手法,およびヒヤリハット情報の安全管理への活用方法につい て紹介する.
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