産業連関表でとらえた国内生産に占めるサービスの比率は1992年の47.5%から6年後の1998年には54.6%まで7.1パーセンテージポイントも上昇したが,「サービスとは何か」についての定説は未確立である.わが国ではサービスは無料という考え方が強いが,英語本来の意味から考察すると,サービスの本質は「ライブのアクション」であり,「サプライヤーの立場に立つ経済主体(個人・企業・政府)がベネフィシャリーの立場に立つ経済主体とその所有物に対して直接的または仕組みを通して間接的にベネフィットを与える行為」ということができる.「ライブのアクション」という観点に立つと,(1)在庫がない,(2)需要と供給のリアルタイムでのマッチングなどグッズとの対比においてその特徴が明らかになる.サービスの品質は,(1)行為そのことに関わる品質と,(2)設備・器具あるいはネットワークに関わる品質の観点からの検討が必要とされるが,前者は,行為を客体化するのが難しいだけでなく,行為の評価がベネフィシャリーの主観に基づいて行われるという越え難い難しさを伴っている.サービスの内容が同じであるにもかかわらず,繁閑によるサービス価格の乖離現象が強く,その品質の評価はさらに難しくなっている.サービスの品質評価は新しい手法と新しい測定基準を必要としているのである.
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