日本信頼性学会誌 信頼性
Online ISSN : 2424-2543
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41 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
展望 「人間と信頼性」
  • 中西 美和
    2019 年41 巻6 号 p. 356-362
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2025/08/09
    ジャーナル フリー

    安全を「受け入れがたいリスクが存在しないこと」と定義する従来的な安全戦略“Safety-I”に対し,安全に「変化する状況下で機能を維持し続けること」という異なる定義を与える新たな安全戦略“Safety-II”が提唱され,安全致命性の高い産業領域のみならず,広い業種からの関心と期待が高まっている.前者が作業をできるだけ標準化して徹底的なエラー防止に注力する安全管理を指向する一方,後者は人のレジリエンスに注目し,成功を確実にすること,増やすことの観点での安全管理を指向する.本稿では,これまでSafety-Iに基づく安全活動を懸命に実践してきた中で,未来に向けて一度立ち止まる機会を持った組織,職場,従事者が,Safety-IIに新たな可能性を感じ実務で活用する方法を探っている現状を踏まえて,その課題と展望を工学的な観点からまとめる.具体的には,Safety-IIに基づく安全活動を現場に落とし込むことを考えたとき,どのようなアプローチがありうるのか,現場に落とし込むにはまだやや距離があるのであれば,その距離を解消するために何から始める必要があるのかについて,研究紹介も交えながら検討する.

  • 北島 創
    2019 年41 巻6 号 p. 363-373
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2025/08/09
    ジャーナル フリー

    近年,追突事故をはじめ交通事故を未然に防止する安全技術を搭載した自動車が普及している.この技術開発の背景には,自動車運転中にドライバが追突するリスクをいかに認知し,制御しているかを理解するための追突リスク認知評価指標の研究が数多く積み重ねられてきた.本稿では,それぞれの評価指標がどのような狙いに立脚してドライバの認知特性を解釈しようとしているかを比較する.追突リスクを表す代表的な指標について,それぞれの定義や特徴を整理し,追突事故防止のための警報や自動ブレーキシステム設計へ応用された例について述べる.その一方で,将来の普及が見込まれる自動走行システムを実現するためには,前方の衝突リスクだけではなく自車両の周辺に潜む多方向の衝突リスクを適切に評価できることが求められる.そこで,自動走行システムの安全性評価手法に関する国際動向をふまえて衝突リスク評価研究の今後の方向性についても展望する.

  • 鈴木 大輔, 山内 香奈, 佐藤 友彦
    2019 年41 巻6 号 p. 374-379
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2025/08/09
    ジャーナル フリー

    運転中に前方に発生する異常事象に気付くためには,運転士の注視行動(眼球運動から計測された注視時間や注視対象物)のあり方が重要だと筆者らは考えている.本研究では,異常時対応シミュレータ訓練において異常事象を発見できた運転士(発見群)と発見できなかった運転士(非発見群)の注視行動をグラフ化して比較することを目的とした.注視行動を比較した結果,発見群は前方正面への視線配分割合が高く,一回あたりの注視時間の平均値が長いことがわかった.さらに,これらの知見を運転士の訓練に活用するためのフィードバック方法(結果の提示の仕方)について検討した.シミュレータ訓練の指導員を対象とした質問紙調査の結果,時系列の視線移動を示したうえで,前方風景の静止画や動画上に注視行動を可視化し,当該運転士の傾向を説明することが指導に役立つ可能性が示唆された.

  • 廣瀬 文子, 武田 大介
    2019 年41 巻6 号 p. 380-387
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2025/08/09
    ジャーナル フリー

    災害原因の大多数を占めると言われている不安全行動を減少させ,安全行動を促すことができれば,災害発生の減少が期待できるであろう.本稿では,不安全行動の背景要因のうち,作業者個人の要因に焦点を当てた安全教育手法について当所の調査・実験結果を紹介する.まずは,多くの不安全行動に共通する背景要因をアンケート調査により抽出し,【焦り】と【慣れ・過信・油断】の2要因に焦点を当て,既存の教育手法について文献調査を実施した.文献調査の結果,特に焦りについては実例が少なく,またいずれの要因についても,他分野に比して運転手(自動車の運転手,以下同じ)を対象とした分野での教育手法検討が先行していることが示唆されたため,まずは焦りに着目した教育手法を開発した.本手法には,様々な既存教育手法における知見を取り入れ,「焦りを体験する」,「焦り状況での自らの変化や行動特性に気づかせ,自身で対処法を考えさせる」,「対処法を同じ状況下で実践し,その効果を自ら確認する」という3つの特徴をもたせた.本手法を40名に実施させたところ,多くの実験参加者が焦りを誘発させる状況下においても適切な安全行動を実践できるようになったことが確認できた.

  • 中村 竜
    2019 年41 巻6 号 p. 388-394
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2025/08/09
    ジャーナル フリー

    コミュニケーションエラーとは,指示や情報が送り手の意図通りに相手に伝わらないことをいい,大きな事故につながることもあることから鉄道においても重要な課題の一つである.鉄道現場作業で発生したコミュニケーションエラーの分析からは,コミュニケーションエラー防止のためには情報の送り手が情報を正確に伝えるだけではなく,情報の受け手が不明点等を積極的に確認することが重要であることが明らかとなった.また,分析からはコミュニケーションエラー防止対策として用いられている復唱や確認会話を効果的に実施するためには,何を確認すべきなのかに気づく能力が必要であることが示された.さらに,これまで復唱や確認会話の実施方法には明確な決まりがなく効果の検証も実施されていなかったことから,これらの実施方法を提案した.本稿では,鉄道現場で発生したコミュニケーションエラーの分析結果,復唱や確認会話で確認すべきポイントに気づく能力の向上を目的としたコミュニケーションエラー要因学習教材,効果的な復唱と確認会話の実施方法について解説する.

編集後記
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