陸水学雑誌
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74 巻, 2 号
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短報
  • 内田 朝子, 大八木 麻希, 加藤 元海, 中西 正己
    2013 年 74 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2013/05/10
    公開日: 2014/05/15
    ジャーナル フリー
     本研究は矢作川に生育する付着藻類群落の栄養状態をHillebrand and Sommer(1999)が提唱する比(懸濁態の炭素(PC),窒素(PN),リン(PP)比がモル比で119:17:1)を用いて評価することを目的とした。
     調査は矢作川の5カ所で2008年8月から2009年9月に行った。矢作川の付着藻類群落の現存量の指標としたクロロフィルa量は,5.0-193.7 mg m-2の範囲で季節変動を示した。付着藻類群落は,5月から11月にかけてHomoeothrix janthinaを優占種とする藍藻群落から12月から4月にCymbella spp.,Gomphonema spp.を主とする珪藻群落へと遷移する季節パターンを示した。
     群落のPC: PN比およびPN: PP比の値を,河川付着藻類の最大成長速度の指標としてHillebrand and Sommer(1999)が提唱する比を尺度として付着藻類群落の栄養状態を評価した。調査期間を通して全地点から得られた付着藻類群落のPCとPN比およびPNとPP比はそれぞれ,7-8と10-20の範囲に分布のピークがあり,平均値は7.2と22.3であった。これらの結果は,矢作川の付着藻類群落が窒素とリンのいずれに関しても強い欠乏状態ではないことを示唆している。
  • 関根 一希, 末吉 正尚, 東城 幸治
    2013 年 74 巻 2 号 p. 73-84
    発行日: 2013/05/10
    公開日: 2014/05/15
    ジャーナル フリー
     オオシロカゲロウは国内広域の河川中・下流域に棲息し,幼生は河床の砂礫に潜って生活する。羽化は初秋 (1週間から数週間程度) の日没後にみられるが,極めて同調性の高い羽化であり,交尾飛翔・群飛が認められ,大発生に至ることもある水生昆虫である。1970年代から本種における大発生は日本各地の河川において報告されてきたが,本種の棲息状況に関しては,羽化個体において評価されるに留まっており,河川内の詳しい分布は十分には把握されていないのが現状である。理由としては,1) 短い亜成虫・成虫期間 (長くても2時間程度),2) 短い羽化時期,3) 短い幼生期間 (約半年を休眠卵で過ごす),4) 典型的なハビタットは比較的大きな河川の中下流で,かつ河床の砂礫に潜る生活型であることがあげられる。このような状況から,本研究では,本種の大発生が1928年と最も古い記録 (志賀直哉の小説「豊年蟲」としての記録) として残され,現在も規模の大きな発生が続いていて,個体群規模も大きな長野県・千曲川を調査地として,幼生ステージにおける分布調査を実施した。その結果,羽化量調査による先行研究と同様,最も多くの羽化個体が認められた平和橋粟佐橋調査区において,体サイズの大きい幼生が高い個体密度で棲息することが確認された。一方,平和橋粟佐橋調査区より上流や下流側では,個体密度や体サイズなど現存量の低下が認められた。羽化量調査により分布が認められないとされていた犀川合流地点よりも下流側においても,幼生の棲息が認められた。しかし,幼生の体サイズは小さく,比較的貧栄養的な犀川の合流により千曲川の汚濁度が低下し,幼生の餌であるデトリタス量が低下したことに原因があるのかもしれない。
  • 青木 美鈴, 浜崎 健児, 山田 誠
    2013 年 74 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2013/05/10
    公開日: 2014/05/15
    ジャーナル フリー
     紀伊半島の河川に生息するテナガエビ,ミナミテナガエビ,ヒラテテナガエビを対象に,mtDNA CO I領域の部分塩基配列を用いたPCR-RFLP法による種の判別法を検討した。形態形質により同定できた各種合計62個体のmtDNA CO I領域の部分塩基配列をPCRによって増幅し,制限酵素Bsp1286Iで処理して得た制限酵素切断片パターンは,種によって明らかに異なり,種内変異は認められなかった。また,形態形質では同定できなかった95個体の制限酵素切断片パターンは,全て3種のいずれかのパターンと一致した。これらの結果から,本手法は,紀伊半島の河川に生息するテナガエビ属3種の同定に有効であり,形態では同定が困難な若齢個体や雌個体の種の判別法として活用できることが明らかとなった。
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