日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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最新号
令和7年7月
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第133回学術大会/シンポジウム2 「クラウンブリッジにおける補綴材料を再考する~金属・陶材・ジルコニアは臨床でどのような影響を与えるか?~」
  • 伴 清治
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 123-129
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     モノリシックジルコニア冠は,その高い硬度から対合歯を摩耗させやすいと誤解されることが多い.しかし,摩耗は修復物の硬さだけでなく,表面処理や微細構造にも影響される.本研究では,異なる修復材料の摩耗特性を評価するために摩擦係数を測定した.その結果,鏡面研磨されたジルコニアは低い摩擦係数を示し,対合歯の摩耗を最小限に抑えることが明らかになった.一方,グレージング処理や粗研磨を施したジルコニアは摩擦係数が上昇し,対合歯の摩耗を促進した.また,二ケイ酸リチウムなどの他の修復材料も,表面構造や均質性が摩擦挙動に大きく影響することが示唆された.これらの結果から,ジルコニア修復物の使用において対合歯の摩耗を抑制するためには,咬合調整後の鏡面研磨仕上げが不可欠であることが示された.本研究結果は海外の報告とも一致し,ジルコニアの適切な表面仕上げが対合歯の摩耗リスクを低減するうえで重要であることを示唆している.

  • ~歯冠修復材の予後に変化は許容されるべきか~
    永田 省藏
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 130-135
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     口腔領域における諸機能については,正常機能(オルソファンクション)における歯牙および修復物では,力による悪影響は比較的少なく,個別の機能力に応じた咬合面の変化に止まる例が多い.しかし,パラファンクションの例では過度な力による影響は大きく,術後経過において歯牙および修復物のトラブルが多く認められる. 咬合接触や力学的な不具合から,修復物の破損や脱落,二次カリエスや歯牙の外傷など修復歯に被害が生じることがある.これらの原因は,修復材の性質が歯牙および歯列の経年的な変化に適応しなかったことによると考えられる.

     今回は,咬合の推移に注目し,長期に修復材としての役目を果たす例,トラブルをきたした例から,修復材料の物性に必要な要件を検討する.

◆企画:第133回学術大会/メインシンポジウム 「補綴歯科治療と栄養治療の新たな連携戦略」
  • −日本補綴歯科学会と日本栄養治療学会の連携深化を期待して−
    鍋谷 圭宏, 石井 良昌
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 136-141
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     高齢者は身体的・精神的・社会的な能力が低下し,経口摂取量が減少して低栄養に陥りやすい.サルコペニアやフレイルという疾患概念も注目され,高齢者ではがんなどさまざまな疾患の予後不良因子になる.今後は,これらのリスクを併せ持つ高齢者人口の減少と,患者個々の状態に応じた適切な栄養治療が必要である.「口から食べる」ことは最も重要なMedical Nutrition Therapyであり,患者の心の支えにもなる.そのためにも健康な歯と口腔機能の維持は重要で,歯科を含む多職種連携の下で栄養治療を行う必要がある.今後,日本補綴歯科学会と日本栄養治療学会が専門的知識を共有し,特に高齢者の「口から食べる」ことに貢献できることを期待したい.

◆企画:第133回学術大会/シンポジウム3 「セラミック修復最前線」
  • 佐藤 洋平
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 142-148
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     各種セラミックス材料の開発と接着技法の確立により,新しい概念の補綴装置が登場している.かつて失活した臼歯はフルカバレッジクラウンにするのがセオリーだったが,咬合面のみを被覆し,わずかにベベルを付与するオクルーザルベニアという補綴手法が注目を集めている.侵襲の少ない治療法だが,耐破折強度は高い.また,従来型のラミネートベニアもより形成量を減じた低侵襲ラミネートベニアと称される手法も応用されている.これらの治療法は直接修復と比較して侵襲が多いとされる間接修復の欠点を補うMI(ミニマムインターベンション)修復でありつつ,より永続性の高い治療として発展が期待される.

◆企画:第133回学術大会/シンポジウム4 「英語論文の執筆・査読,国際学会発表の勘どころ」
  • 猪越 正直
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 149-154
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     本稿では,大学院生や若手研究者を対象に,英語論文執筆の基本から投稿,査読対応までを体系的に解説する.英語論文執筆には一定の作法があり,その習得が重要であるが,学ぶ機会が限られる場合も多い.本稿では,論文の構造や執筆方法,投稿準備,査読コメントへの対応方法を具体的に示し,初学者にもわかりやすく英語論文作成の流れを理解できるよう配慮した.また,近年発展が著しい機械翻訳や人工知能(AI)を活用した論文作成支援ツールの適切な利用法についても考察する.本稿が,若手研究者の英語論文執筆の効率化と質の向上につながれば幸いである.

  • 押味 貴之
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 155-160
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     近年,生成系AIの普及により英語論文の執筆や読解の難易度は大きく低下したが,国際学会における発表や質疑応答の難易度は依然として高い.またポスター発表においては,発表者と聴衆の双方向性が求められ,口頭発表とは異なる発表スキルが必要とされる.本稿では,効果的な発表原稿の作成法,3MT形式に基づく発表構造,聴衆との対話を楽しむための姿勢,そして座長との協働による質疑応答への対応法について具体例を示しながら解説する.さらにポスター発表での聴衆への話しかけ,レイアウト改善の工夫,そして国際学会におけるネットワーキング技術についても紹介し,英語が苦手な発表者でも国際学会を楽しめる方法を提示する.

◆企画:第9回補綴歯科臨床研鑽会/臨床セミナー1 「インプラント関係:硬軟組織再建,抜歯前から始まる補綴戦略」
  • 飯田 吉郎
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 161-167
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     前歯部のインプラント治療は機能的な回復だけでなく,高い審美的な結果が求められる.そしてその審美的な結果は,長期にわたり安定して維持されなければならない.しかし, 抜歯後に生じる唇側骨の持続的な吸収は,前歯部インプラント周囲組織の安定を困難なものとしており,前歯部インプラント治療の成功の鍵は,この唇側骨の持続的な吸収への対応と制御にあるといえる.そこで本稿では,抜歯前の唇側骨の健全性と唇側歯根の状態に留意し,抜歯即時埋入か待時埋入かという判断に加え,Partial Extraction Therapyの応用の可否を考慮した治療戦略を解説していく.

◆企画:令和6年度 東京支部学術大会/特別講演 「超高齢社会におけるデジタルデンティストリー」
  • 岩城 麻衣子, 羽田 多麻木, 金澤 学
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻3 号 p. 168-175
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

     デジタル技術と医療機器プログラムの進展により,「デジタルデンティストリー」と呼ばれる分野が急速に発展している.デジタルデンティストリーは,これまでの歯科医療の在り方を大きく変える可能性を秘めており,高齢者を含む幅広い患者層に対して,より迅速かつ正確な診断と治療の提供が可能となることが期待されている.本稿では,主に医療機器プログラムとデジタルデンチャーについて,これまで著者らが行ってきた研究を紹介しながら,超高齢社会における歯科医療の役割を再考し,口腔の健康が全身の健康にどのように寄与できるかについて皆様と情報共有させていただく場としたい.

専門医症例報告
  • 星 美貴
    原稿種別: 症例報告
    2025 年17 巻3 号 p. 177-180
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は65歳の男性.上顎前歯部口蓋側歯肉に生じた扁平上皮癌に対し,上顎部分切除術が計画されたことから,術前に術後即時顎補綴装置(ISO)を製作し,術直後より装着した.その後,術後6か月に充実型顎義歯を装着した.

    考察:通法通りにISOを装着し,創部の治癒状況を確認したうえでISOに人工歯部と栓塞部を付与することで,審美性と構音機能の速やかな回復が得られた.この手法により術後の機能障害を段階的に解決し,患者の心理的サポートにつながったと推察された.

    結論:顎義歯装着までの間に改変したISOを装着することにより,審美性と構音機能の早期回復が実現し,患者の早期社会復帰を支援することができた.

  • 平田 祐基
    原稿種別: 症例報告
    2025 年17 巻3 号 p. 181-184
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:54歳の男性.上顎右側前歯の痛みを主訴に来院された.診査の結果,2| に歯根破折を認めたため抜歯した.765|67|56 の可撤性部分床義歯は装着時の違和感で使用していないとのことであった.上顎前歯部中間欠損および両側遊離端欠損,下顎左側臼歯部中間欠損による咀嚼障害と診断し,インプラントを用いた固定性補綴装置によって咀嚼機能の回復を図った.

    考察:可撤性補綴装置装着時の違和感が強い症例に対し,インプラント支持による固定性補綴装置を装着することで,患者の高い満足度を得ることができたと考える.

    結論:上下顎欠損歯列に対してインプラントを用いた固定性補綴装置は口腔関連QOLの改善に有効であることが示唆された.

  • 岸本 卓大
    原稿種別: 症例報告
    2025 年17 巻3 号 p. 185-188
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は50歳の男性.上顎前歯部の固定性橋義歯が繰り返し外れることを主訴に来院した.歯冠高径が低く,全顎的に補綴装置の保持力の獲得が困難であったため,治療用義歯を用いた咬合挙上により歯冠高径を改善することで審美性の改善を図った.

    考察:咬合挙上は治療用義歯により段階的に行い,可撤性および固定性の暫間補綴装置の各段階において十分な経過観察期間を設定し慎重に評価したことで,高い満足度とともに長期的に良好な経過が得られたと考えられる.

    結論:前歯部のクリアランスが不足した症例に対し,咬合挙上により歯冠高径を修正することで,良好な結果が得られた.

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