騒音が, 小学校生徒の身体発育に悪影響を及ぼしていることが, 著者等の調査で明らかとなり, 反応時にも何らかの影響一反応の遅延等一が予想され, 成長過程および男女性間におけるその差異から抵抗性についての解析の可能性が示唆されたので, 1966年7月, 厚木ジェット機基地飛行場周辺居住の, 前記調査と同一小学校生徒を対象に, 飛行場からの距離によるその居住区分と聴覚性発声反応時との関係を中心に調査し, 次の結果を得た。
1.成長にともなう反応型の変化
反応時の分布は, 低学年では平坦に拡がっているが, 成長にともなって, 分散が少く集中し, そのpeakは反応時の短い方へと移行する (幼若型・成人型) 。
2.飛行場からの距離による生徒の居住区分と反応時との関係
(1) 飛行場から遠距離に住むY校6学年生徒では, 男女とも, 反応時に居住地域による差がほとんどなく, 成人型を示した。
(2) 飛行場に近接して居住するS校6学年生徒では, 飛行場に近い居住者群の反応時が, 遠い群に比して強い幼若型の傾向を示し, この傾向は, 男子生徒でことに甚しかった。
(3) SおよびY校6学年生徒を比較すると, S校生徒の反応時が強い幼若型傾向を示し, この傾向は女子に特に甚しかった。
(4) (2),(3) から, Y校生徒とS校の特に飛行場に近い生徒との間には, 男女とも甚だしい差異があらわれた。
上記の結果およびS, Y校生徒の生活環境調査の結果から, 聴覚性発声反応時に見出された上記の関係は, 主としてジェット機騒音によるものと判定し, これが反応の正常な発達を阻害しているものと結論された。
3.成長過程および男女性における抵抗性の差異
小学校生徒の反応時への騒音の影響については, 成長過程による差異, 男女性による差異とも明瞭には見られなかった。
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