人類學雜誌
Online ISSN : 1884-765X
Print ISSN : 0003-5505
ISSN-L : 0003-5505
89 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 埴原 和郎
    1981 年 89 巻 4 号 p. 401-418
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    本稿は現代日本人の骨および歯の性別判定について,判別関数による方法を概観したものである。骨の性別判定に判別関数を最初に応用したのは PONS(1955)であるが,その後埴原(1958)がはじめて日本人の骨を使って計算して以来,わが国でも多くの研究が行なわれ,広く利用されるようになってきた。本稿では性別判定のための判別関数の利用法についてその概要を説明し,合せて従来報告されている日本人についての判別係数や的中率などを表示した。同時にこの方法の利用ならびに判別係数の計算に関して2•3の注意事項を述べ,判別得点の信頼確率の計算法を紹介した。
  • III. 古墳時代
    井上 直彦, 郭 敬恵, 伊藤 学而, 亀谷 哲也
    1981 年 89 巻 4 号 p. 419-426
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    すでに報告した鎌倉時代および後期縄文時代(井上ほか,1981A,B)につづいて,古墳時代人骨にみられる歯科疾患像について調査を行った。資料は,東京大学総合研究資料館,人類先史部門所蔵の古墳時代人頭骨105体のうち,保存状態が良好で紛失歯が比較的少ない,永久歯咬合期あるいは混合歯咬合期の上顎歯列弓22例と,下顎歯列弓21例とであった。これらのうち17組の上下顎は対をなしていて,咬合状態が再現できるものであった。
    資料数が,この時代の齲蝕の性格を代表させるためにはやや少ないと思われるので,ここでは,今後の研究に備えて単にデータを記録しておくことを主な目的として報告した。しかし,鎌倉時代,後期縄文時代,および厚生省による現代の資料との比較によって,この時代の齲蝕が,おおよそつぎのような性格のものであったであろうことが推測された。すなわち,齲蝕の頻度と分布様式は縄文時代に近いが,重症度はやや高く,病因的には口腔内環境汚染型と考えられるが,縄文時代とは異なり, discrepancy の影響が加わっているように思われた。
  • その集団構造について
    片山 一道, 工藤 敏行, 鈴木 庸夫, 松本 秀雄
    1981 年 89 巻 4 号 p. 427-438
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    報告者らは,山形県酒田市に属する飛島でヒトの身体形質でみられる地域的変異について調査研究を行い,各種の資料を得ることができた。本報では,かかる地域的変異の分析に必要な,人口構造および婚姻構造に関する資料を提示するとともに,いくつかの集団遺伝学的パラメーターを推定することによって.3集落(勝浦,中村,法木)から構成される飛島集団で考察可能な,遺伝学特性を明らかにした。さらに,これまでに報告された,日本の他の島嶼地域でみられる集団構造との間で比較を行った。主な成績は,以下のように要約できる。
    1.近年の人口変動は,明治以前の恒常状態の維持,明治初期から1950年に至る人口増加,1950年以降の過疎化による人口減少,として要約でき,トカラ諸島,八重山諸島,さらには,三重県の離島地域での知見と相似した特徴がみられた。
    2.集落内婚率は,勝浦76%,中村60%,法木84%で,また島内婚率は飛島全体でで82%あった。これは,島外から強い遺伝的隔離を受けているのみならず,集落間でも通婚は稀で,集落は各々単位集団として,交互に遺伝的隔離が存在することを示唆するものである。このように,小島であるにもかかわらず,遺伝的階層構造をもつことが明らかにされた。
    3.有効な集団の大きさは,ライトの方法によって,勝浦で120,中村で80,法木で68,飛島全体で259と推定された。
    4.有効な移入率は,勝浦で12%,中村で19%,法木で6%,飛島全体で13%と推定された。
    5.平均近交係数は,同姓婚の出現頻度に基づいて,勝浦で0.0500,中村で0.0387,法木で0.0452,飛島全体で0.0509と推定され,極めて高い数値を示した。
    6.ライトの隔離係数は,勝浦と中村はそれぞれ14.4と15.2と推定され,遺伝的浮動の影響が無視できないことを,また,法木では4.2と推定され,遺伝的浮動の強い影響を受けていることを示した。
    7.結論として,飛島の遺伝的構成は,強い遺伝的隔離のため,遺伝的浮動の影響を受けており,周囲の集団と飛島の間でのみならず,飛島の3集落間においても,身体形質に地域的変異がみられる可能性が示唆された。
  • 20才代,30才代,40才代の比較
    森沢 佐歳, 松田 健史, 武田 公男
    1981 年 89 巻 4 号 p. 439-456
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    北陸地区在住日本人の下顎骨を20才代,30才代,40才代とに男女別に3大別し,おもに左側面輪郭図より計測し年令差を検討した。
    1)最も加令的変化の著しいものはオトガイ隆起の突出度であり,男女性とも20才代より30才代にかけてその突出は弱くなるが,40才代で男女性によって差がみられ,男性では強くなり,女性では弱くなる。
    2)下顎頭の形態は男性で加令的に丸味を帯び,女性では20才代,30才代の短楕円形より,40才代の長楕円形に変化する。
    3)男性では,下顎底接線に対する歯槽縁線の傾斜が30才代で強くなり,下顎体が40才代で高くなる。女性では,加令的に下顎枝が高くなり,左右側の下顎角の幅が狭くなる。
  • 木村 邦彦
    1981 年 89 巻 4 号 p. 457-478
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    12~18歳の458組の一卵性と78組の二卵性双生児の合計1072枚のX線写真を基に,K 法, TW1法と TW2法による骨格年齢による骨格成熟の遺伝性が,対内相関係数,百分率偏差,百分率偏差(改),遺伝性指数,F比と遺伝•環境比から考察された。手部骨格は高年齢児ではすでに成熟を終っているので,男では12~14歳,女では12歳の資料を中心に検討されている。各方法による骨格年齢の成績は相互に高い相関を示し,男女とも同様の高い遺伝性を示唆している。
  • plagiocephalyの症例について
    鈴木 隆雄, 池田 次郎
    1981 年 89 巻 4 号 p. 479-492
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    頭蓋縫合は出生時によく発達しており,出生後の脳の急速な成長によく対応して,頭囲を充分に拡大させるが,脳の成長が完成し始めるに従って,縫合部は線維性結合を開始し,生涯にわたりその癒合を完成させてゆくことは広く知られている。
    この頭蓋縫合が出生前あるいは出生後の早い時期に何らかの原因によって部分的あるいは全体的に癒合した場合,脳の成長との間に不均衡を生じて頭蓋に変形をきたす場合がある。この変形が特に著しく病的な場合にこれを Craniosynostosis あるいは Craniostenosis (頭蓋縫合早期癒合症あるいは頭蓋狭窄症)と呼んでいる。この疾患は古くより認識された疾患であり,現代でも小児科や脳外科等の臨床医により研究されている。
    本論は craniosynostosis と古病理学的に診断された小児頭蓋について,その肉眼的および X 線像による形態を中心に,臨床報告を基礎とした分類,病因論,発生頻度,合併症等について記載した。
    問題となる頭蓋は1924年,清野謙次博士により樺太•魯礼において発掘された金属時代アイヌと推定される小児頭蓋(No.641)で,現在京都大学理学部自然人類学講座に保管されているものである。
    頭蓋においては三主縫合に早期癒合が認あられ特に右側冠状縫合,矢状縫合,右側人字状縫合はいずれも完全に癒合消失している。頭蓋,顔面には著しい変形が生じている。
    X 線像では臨床上 craniosynostosis によく出現するとされる「指圧痕(digital impression)」力朝瞭に出現し,更に蝶形骨変形等が認められた。
    このような特徴ある頭蓋縫合早期癒合症,特に plagiocephaly については,これからも容易かつ正確に古病理学的診断を行なうことの出来るように,3つの診断基準を定めた。
    最後に,本症は遺伝的素因が大きく影響していると考えられるが,前述のような古病理学的診断基準によって診断される古人骨の症例はこれからも当然増加してゆくものと思われ,その際には遺伝的要因を加味した古疫学的側面からの研究が必要となってくるものと考えられる。
  • 河内 まき子, 埴原 和郎
    1981 年 89 巻 4 号 p. 493-504
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    生体計測における誤差をどう処理するかは,特に多数の計測者が計測した資料を分析する際には重要な問題となる。本論文では同一被験者を著者の一人が計測した結果(MK)と多数の計測者が計測した結果(ST)とを比較することにより,後者がどの程度信頼できるかを検討した。被験者は13-14才の男子中学生238名,計測項目は身体20項目(Table1)である。ST グループの計測者相互間および MKと ST 全体との間にsystematic な差があるか否かを,分散分析法を用いて検定した。 Systematic な計測者間の差が実際にどの程度重要な意味を持つかを検討するため,各項目めSTシリーズの全分散を計測者内誤差分散,計測者間誤差分散,および個人差による分散に分け,全誤差分散の占ある割合を調べた。また,集団間の比較にしばしば用いられるマハラノビス汎距離,ペンローズの size および shapedistance に計測誤差が及ぼす影響を検討した。結果は以下のとおりである:
    1) ST グループの計測者間相互に有意な差が認められなかったのは(5%水準)胸囲,寛上最小囲,手長の3項目, MK と ST 全体との間に有意な差が認められなかったのは(5%水準)寛上最小囲と膝関節高のみであった (Table3)。
    2)誤差分散が全分散の20%を越える項目は,前腕最小囲,足幅,手幅,上腕長(間接),膝関節高,前腕長(間接),手長(間接)の7項目であった (Table4)。
    3)生物学的距離に影響を与えるのは主として systematic な誤差であり,これは形に関する距離と大きさに関する距離の両方に影響を与える。誤差の影響は大きな計測者間誤差を示す項目,大きな誤差分散を持つ項目を除くことにより大幅に小さくなる。
    4) Systematic な誤差の大きさを正確に知ることができない場合は,情報の重複や損失という観点のみからではなく,誤差という点からも項目の選択を行なうべきであろう。
    5)上前腸骨棘高のようにしばしば計測される項目に大きな誤差が認められたことからみて,生体計測は計測器さえあれば誰にでもできるという安易な考えは慎むべきであろう。
  • (2)発掘人骨(弥生時代•古墳時代)
    池田 次郎
    1981 年 89 巻 4 号 p. 505-514
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
  • その後の集団並びに家族調査成績
    中嶋 八良, 斎藤 恵, 村田 繁子
    1981 年 89 巻 4 号 p. 515-518
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    著者の1人(中嶋,1976)は,さきに東京在住の日本人における Diego 血液型の分布について報告したが,この論文では Di(b-)型供血者を確保する事を主な目的として,その後さらに東京及び千葉県在住者から集めた2,397例の赤血球試料について Diego 血液型をしらべた成績を記録する。今回の調査で推定されたDia 遺伝子の頻度(東京0.047,千葉0.048)は,さきに東京で得たそれ(0.043)とよい一致を示した。参考までに他の日本人集団について推定されている Dia 遺伝子の頻度も紹介した。また,221家族(子供328人)について Diego 血液型をしらべた成績も記録した。
  • 各地方集団間の距離
    埴原 和郎
    1981 年 89 巻 4 号 p. 519-522
    発行日: 1981年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    現代日本人頭骨研究班は,文部省科学研究費補助金の交付を受け,1979-80年に,国内12地方の現代日本人男性頭骨について計測ならびに観察を行なった。それらの基本的統計量はすでに報告されているが(下記の報告書),ここでは各地方集団間の計測値に基づく距離を計算し,報告する。この計算に用いた計測は本文に記した33項目であり,計算した距離は MAHALANOBlS の D2,Q-モード相関係数,PENROSE の大きさ距離(CQ2)および形態距離(CZ2)である。
    基本的統計量については下記の報告書を参照されたい。
    現代日本人頭骨研究班編:現代日本人頭骨の地理的変異に関する総合調査報告,1981年3月。(タイプ•オフセット版)
feedback
Top