男子16名,女子21名(9歳~15歳)の縦断的調査による手部X線写真を用いて,手骨の長径,幅径の発育について,相対成長の観点から考察し以下のことが明らかになった。
1)指骨,中手骨の19個の長管骨の長径•幅径の個人の縦断発育は単相 Allometry で表わせた。
2)平均発育の立場から,男女間で相対成長係数の平均値に有意差のみられるものは少ないが,女子は各指骨,中手骨において殆ど男子より大きく長径優位の発育傾向である。
3)女子の変異係数は男子より大きい傾向にあり,指骨が中手骨より大きい。一方,男子では指骨より中手骨で大きくなっており,指骨と中手骨の相対的な大きさが男女で逆になっている。
4)等成長•不等成長の観点から,個人別の等•優•劣成長分布の男女別の頻度から,男子では各 row を構成する骨は同様な発育傾向を示すが,女子では辺縁側と軸側の発育が異なる傾向にある。
5)個人の19個の長管骨の相対成長係数の大きさの順序(成長勾配)は,多くの者と類似した成長勾配を有する者から,全く個別的な成長勾配を有する者まで多岐にわたった。男子より女子の方が類似した成長勾配の持ち主が多く,女子の発育がより規則的である。平均発育の順序と類似した順序を有する者は非常に少なく,平均発育と個人発育の立場の相違を如実に示した。
6)個人の19個の指骨,中手骨の発育を要約するため主成分分析を行い,第1主成分として,相対成長係数の大きさの因子。第2主成分として,中節骨•基節骨と末節骨•中手骨の対立因子の二つを得た。個人別主成分得点の二次元散布図から,第1,第2主成分ともに女子の取り得る範囲は男子より大きく,女子の変異は大きい。
変異係数,19個の手骨の成長勾配,主成分得点から個人の発育をみると,女子の発育は男子より個人間の変異は大きいが,成長勾配は男子より類似しており等質な発育をしている。
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