人類學雜誌
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80 巻, 4 号
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  • 生駒 栄喜
    1972 年80 巻4 号 p. 283-299
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    すでに, mid-digital hairの両手の相称性,個体差,性差および人種差などについては知られている.その発毛頻度は概してEuropeanやAmerican whiteは日本人よりも高く,NegroやEskimoは日本人よりも低いと報告されている.本研究では,男子7081名と女子8276名から成る日本人,朝鮮人,台湾人,カナダ人および67頭のサルを用いて,digital hairを観察し, mid-digital hairのみならず,proximal digital hairをも併せて,人類学上意義あることが認められた.また,digital hairは季節的に変化することもある.発毛頻度はP4,P3, P5, P2, P1, M4, M3, M5, M2の順で,濃さの順位も同じである.このうち,ほとんどすべての個体のP2, P3, P4, PSは有毛,M2は無毛であって,P1, M4およびM3のdigital hairは個体差,性差,人種差が顕著である.P1のdigital hairの発毛頻度の人種差は,Ojibwayは最も低く,次いで日本人,朝鮮人で,ヨーロッパ系カナダ人は最も高率である.そして,mid-digital hairについても同様の現象が見られた.その他,同じ人種でも,居住地域が異り,生活環境を異にする集団ではdigital hairの発現が僅かに異ることがある.
  • アシの人類学事始め
    椿 宏治, 田村 端
    1972 年80 巻4 号 p. 300-318
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    日本人のアシは太く,シナ人のそれは細い.生活様式の相違からと思っていたら,そうではなく,先天的な要素が濃く,民族的特性を示す1つの指標たり得ると気付いて,台湾,ボルネオ,タイ,ラオス,インド,日本の10ethnic group について調べた結果,日本人東京と Ami, 日本人沖縄と Kadazanが割に近くて1つの群Aをなすと見てよく,Thai, Lao, Yaoが又1つの群Bを,Gond, Bharia, Todaのインド群が又1つの群Cをなすと考えてもよいのを見出した.尤も沖縄とYaoは,ことにこの後者はAとBの両面的性質を示す所もあるけれど.
  • 新分析法
    木村 邦彦
    1972 年80 巻4 号 p. 319-336
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    手のX線像による骨格成熟の判定には,近年,GREuLIc H と PYLE (1950 & 1959)の骨格年齢法とAcHEsoN (1954)の Oxford Method, TANNER ら(1959 & 1962)の TANNER-WHITEHOUSE methodなどの骨格成熟点法とが,もっともよく用いられている.本論文では,1959年に木 L 幌で調査された6~18歳の男女266名と,1963年と1970年に東京で調査された0~6歳の男女158名と7~12歳の男女496名の,右または左手の X 線像を資料として,骨格成熟点法の一新法を考案し,日本人の骨格成熟について考察している.新法では,その骨格成熟過程の特徴から,全手骨を指節骨と中手骨,手根骨,前腕骨遠位端の3骨区域に分け,各骨区域が等しく骨格成熟点に関与するように工夫されている.各骨の粗成熟点には GREULICH & PYLE(1959)の indicator が用いられ,各骨区域の合計粗点の完成値に対する百分率値,骨区域単位が求められ,骨区域単位の平均値を各個体の骨格成熟点とする.従って骨格成熟点は0~100の値を示す.
    新法による骨格成熟点の各年齢の平均値の変化曲線は,他の方法の発育曲線に比べて,はるかに直線的である.さらに月年齢と骨格成熟点の間には,性,地方を問わず,有意な(P=0.01)回帰関係が認められる.それぞれの資料について回帰方程式が求められ,骨格成熟係数と始原成熟指数とが比較され,東京の資料には有意な性差が,また女子では東京と札幌の間に地方差が認められた.さらにこれらの差は年齢とともに大きくなる傾向が見られた。
    これらから,骨格成熟判定の新法が,特に横断的資料に基づく,比較発育学的研究により有効な方法であることが確わめられた.
  • 2.赤血球酵素
    石本 剛一
    1972 年80 巻4 号 p. 337-350
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    6種マカク約1000例の血液試料からマカク集団に特徴的な変異を示すことの見出された5種赤血球酵素 acidphos phatase (AP), phospho gluco mutase (PGM), 6-phospho gluconate dehydrogenase (PGD), phosho hexose isomerase (PHI), NADH diaphorase(Dia)に関する知見がまとめられている.マカク赤血球酵素変異の様相はヒトの場合と全く異なりヒトで多型を示す AP,PGM は一部マカク集団を除きむしろ単型的であった.一方ヒトで比較的変異性に乏しい PGD, PHI, Dia にはマカクで特異な変異性を示す多型の存在することが明らかにされている.
  • ヒトの生態系の時間一空間構造と その形成に関与する性的年令的役割について
    煎本 孝
    1972 年80 巻4 号 p. 351-373
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    ヒトの適応と生存と云う視点から,ヒト個体,及び,ヒト個体群(集団)の,それらを包む環境に対する関係について明らかにしたいと考え,千葉県千倉町川口地域集団を対象として,海産物採集漁獲活動を中心とする生業活動につき,野外調査を行ない,直接観察を基本として記載した.
    特に地域集団内における性的一年令的分業の問題(HERsKovITs, 1952, pp. 124-152)を,その集団が,自然環境の中で生存する時の,性一年令による仕事の配分と云う生態学的問題として捉えることにより,ヒト個体の行動を通して形成される,ヒト個体群(集団)と自然環境との間の全体的な関係であるヒトの生態系と,それを構成する要因(WATANABE,1964,PP. 1-164.)とについて,焦点が向けられた.その結果は,次の様に要約される.
    (1)隣接する地域集団から独立した活動域を有する「川口地域集団」において,岩礁帯と云ら自然環境に特異的な,いくつかの採集漁獲活動が見られ,その活動様式の種類に応じて,具体的な活動集団が存在する(Table 1).
    (2)これらの活動集団は,各々,異なる性一年令構成を持ち(Tables 2-1,2-2),さらに,その自然環境に働きかける活動を通して,それぞれ独自の活動時間(Fig. 3),及び,活動空間を利用する(Fig. 7).
    (3)従って,「川口地域集団」の,これをとりまく自然環境との間の全体的な関係は,各々の種類の活動集団をその単位とする生態系の時間一空間構造として,具体的に統合される(Fig. 8).しかも,各活動集団を構成する各個体の資質として最も基本的な生理学的背景である性的一年令的特徴が,「川口地域集団」内における活動(仕事)の配分を通して,この生態系の時間一空間構造の形成に関与していることが,指摘された.
    最後に,ヒトの適応と生存の問題についての研究は,自然環境に対する地域集団全体の活動の構造と,その中におけるヒト個体の具体的な行動を中心に行なわれる必要があることについて考察された.
  • 福島 靖夫
    1972 年80 巻4 号 p. 374-380
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    縄文時代の遺跡と考えられる五遺跡,宮古島,蝦島,姥山,伊川津,寄倉から出土した人骨から樹脂包埋によって研磨標本を作り,観察を行った.寄倉以外はいずれも貝塚遺跡であるが,保存状態は各遺跡について様々である.全体として保存はかなり悪く,最も保存の良いと思われる姥山についても,骨組織本来の層板状構造はかなり破壊されてしまっている.特に最も保存の悪い伊川津ではわずかにハヴァース管もしくはフォルクマン管と思われる構造が見られるのみで,偏光顕微鏡下でも膠原線維による複屈折像はほとんど観察できない.又,寄倉出土人骨の内,焼けた骨には特に層板状構造が良く保存されているようだが,膠原線維はそれ程残っていない.
  • 真野 哲三, 乗越 皓司, 小山 直樹
    1972 年80 巻4 号 p. 381-383
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
  • Using Giemsa-Stain Techniques
    Momoki HIRAI
    1972 年80 巻4 号 p. 384-389
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
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