この研究はニホンザルのアカンボ期 (Bグループ), コドモ期 (Jグループ) のわんばくあそび (rough and tumble play), グルーミング行動, およびマウンティング行動における個体関係を中心に, その社会的発達とあそびのもつ社会的役割の考察を行なった。わんばくあそびの出現する頻度は, Bグループではメスの方が多く, Jグループではその逆になり, オスの方が多くなる。マウンティングはわんばくあそびに比べると, 出現頻度はきわめて少ないが, アカンボ期からすでにオス特有の行動として表われている。グルーミングは母親から受ける頻度が最も多く, 被調査個体の年令では, まだ十分なグルーマーの役割を果すことはJグループでも少ない。母親以外のグルーミングの相手は, きょうだい間, 中でも姉と弟妹間がほとんどである。
わんばくあそびの相手個体は, Bグループでは同年令個体間で行われたものが84, 5%を占め, 同年令以外の相手個体ではきょうだいが最も多い。Jグループでは, 同年令個体間と, 年令差±2歳以内の個体間では, ほぼ期待値に近い値を示し, 大差はない。それ以上の年令差のある個体との間には, あそびはほとんど行われない。
わんばくあそび, マウンティング, グルーミングともに, どの行動も期待値と比較すると血縁関係による偏りは大きい。3つの行動を比較すると, 血縁関係による偏りは, グルーミング, わんぱくあそび, マウンティングの順に少なくなっている。青年期後半になると, あそびは消滅するが, マウンティングやグルーミングはオ
トナ社会の秩序系に組みこまれるといった観点から, この問題を考察した。
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