人口流動が小さく,社会経済的基盤に大きな差がないと考えられる,ほぼ同じ学級編成による同一年齢層の標本採取を企て,次の5標本群において印象採得を行った.標本は秋田県立沼館高等学校3年生206名,鹿児島県立種子島高等学校3年生190名,昭和46年の長崎県巌原市立巌原小学校1年生から昭和57年の長崎県立巌原高等学校3年生までの12年間にわたって累年調査した122名,沖縄県立与勝高等学校3年生225名ならびに台湾嘉義市私立教志商工高等学校197名である.これら5標本群の各個人の上下顎硬石膏模型を資料とし,スライディング•キャリパを用いて最小0.01mm 単位で上顎と下顎歯列弓の左右両側において中切歯から第一大臼歯まで24本の歯の歯冠近遠心径と第一小臼歯から第二大臼歯までの歯冠頬舌径の計測を行った.これらにっいて分析し,次の結果を得た.
1)同一人による2回計測の計測誤差は他の報告と比較しても十分に小さく,計測誤差は無視できる.
2)歯冠幅径•歯冠指数の主成分分析より,計測値の変異は切歯•犬歯•小臼歯•大臼歯の4主成分に集約された.
3)歯冠幅径の類似度により,5集団は対馬系,秋田•沖縄系,及び種子島•台湾系の3系に分類された.
4)先史時代の歯冠幅径との比較では,対馬系は弥生人に,種子島•台湾系は縄文人に近かった.
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