人類學雜誌
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88 巻, 4 号
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  • ベッダ族の事例
    安部 国雄
    1980 年 88 巻 4 号 p. 345-364
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    1979年スリランカのベッダ族の調査を行ない,男88人,女83人の生体観察と計測の資料を得た。計測結果をその居住地によって森林と農村の2地域に分けて,地域によるベッダの形質の変異を検討すると共に,SARASIN et al.(1892-3),HILL(1941),STOUDT & MARETT(1961)の調査結果と比較して年代による形質の変異を検討した。
    地域差については,森林ベッダは農村ベッダに比較して,身長が小さく,より長い頭型,より低い顔型より広い鼻型を有しており,年代差については,比較の可能な測度(身長,頭長,頭幅,顔幅,顎幅)と示数(頭示数,顎示数)を,約40年の間隔でそれらの推移をみると,各測度や示数の平均値はいずれも少し増大するが,その差異は大きいものではないことが明らかになった。
  • 佐藤 陽彦, 高崎 裕治, 大中 忠勝, 山崎 昌広, 槍木 暢雄
    1980 年 88 巻 4 号 p. 365-374
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    6名の男子大学生を被験者にして,乾球温度と相対湿度がそれぞれ15°C•50%,20°C•50%,35°C•30%,35°C•80%の4つの人工環境条件のもとで一定の作業を行わせた。作業には自転車エルゴメーターを用い,20分間の中等度作業後続けて4分間の強作業を行わせた。作業前安静時,作業中,回復期につき,換気量,酸素摂取量,炭酸ガス排出量,心拍数を連続測定した。作業中と回復期全体の総酸素摂取量は35°C•30%RHの時が15°Cと20°Cの時より多かった。換気量については35°C•80%RHの時が他の3つの条件の時より有意に高い値を示した。心拍数も35°C•80%RHの時が他の時より高かった。高温における湿度の影響は作業中よりもむしろ回復期に強く現われ,作業中と回復期の全体でみた諸測定機能の温熱条件間の差異には回復期における相違が大きく寄与していた。20°Cの安静値以上の作業中と回復期の総心拍数(全心負担)に対する安静値以上の作業中と回復期の総酸素摂取量(全酸素負担)の比は,35°C•80%RHの時が15°Cと20°Cの時より有意に低い値を示した。4つの温熱条件をOxford Indexで表わすと, Oxford Indexと作業中及び回復期の全心負担は直線関係を示した。
  • 伊藤 良作, 猪口 清一郎, 木村 忠直, 神津 正明
    1980 年 88 巻 4 号 p. 375-386
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    霊長類骨格筋の機能的特徴を検討するためにカニクイザル成獣10頭(_??_:6, _??_ :4)の右側僧帽筋について頭側部,中間部,尾側部の3部位における白筋線維と赤筋線維の比率の算出,および筋線維の太さの計測を行った。筋線維の分別はSudan Black B染色によった。その結果,筋線維の太さは一般に,白筋線維が赤筋線維よりも,雄の方が雌よりも,また,尾側部は雌雄とも他の部位よりも,それぞれ大であった。さらに,体重の増大に伴って大きな筋線維が出現する傾向が認められ,この傾向は白筋線維に著明であった。また,筋重量との間には順相関の傾向が認められた。以上の筋線維構成上の特徴はサルの運動性の特徴と一致するように思われた。
  • 岩本 光雄
    1980 年 88 巻 4 号 p. 387-396
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    1975年から79年にわたる前後3回のエチオピアにおけるヒヒ調査の過程で,筆著ならびに筆者との共同調査者が得た実際的情報,ならびにヨーロッパの学者による近年の関係情報をもとに,エチオピアにおけるキイロヒヒ以外の3種についての改訂分布図を提示し,キイロヒヒについても若干言及した。そのあと,エチオピア国内で生じている'異種'ヒヒ間の混血と関連して,霊長類における種と種の境界問題に関して論じ,現在行われている種の分類は,踏襲しておくべきものであろうと結論した。
  • 池田 次郎, 多賀 谷昭
    1980 年 88 巻 4 号 p. 397-410
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    全国の地方集団,男性706,女性609を用い,6項目の生体計測値からみた日本列島の地域性を多重判別分析法を用いて検討し,次の結果をえた。i)最も明瞭な地域差は,北海道,本州•四国•九州を含む本土,および南西諸島の間に存在する。ii)本土集団のなかでは,南九州がやや特異な地域である。iii)東中国,近畿,東海,南関東の集団と,奥羽,北陸の集団との差は,比較的顕著である。iv)北海道,南西諸島間の差は大きく,本土集団のうち両集団に近いのは,前者には奥羽,次いで北陸,信越であり,後者には北陸,信越,次いで南九州である。v)地域性は,女性より男性でより明瞭であるが,その傾向は完全に一致する。
  • 横断的データへの主成分分析法の適用による評価
    河辺 俊雄, 高井 省三, 穐吉 敏男, 大塚 柳太郎, 鈴木 継美
    1980 年 88 巻 4 号 p. 411-422
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    児童•生徒に対して,生体計測値および体格指数について主成分分析法を用いて分析を行い,年齢との関係について検討を加えた。奄美大鳥の名瀬市において著者らが行った生体計測の結果にもとづき,年齢7-18歳の男子名474,女子455名の,7項目の生体計測値および8種の体格指数を分析データとして用いた。主成分分析の結果,男女問に大きな差異は認あられず,1以上の固有値を示す3主成分の累積寄与率は90%を越えた。Varimax回転後の負荷量行列から,第1-3主成分は,それぞれgeneral body size,体格皮下脂肪厚の因子と判断された。各主成分の年齢との相関を主成分得点から判定すると,第1主成分は強い関連を示し,第2および第3主成分は年齢と独立,すなわち年齢による偏りが少ない特徴を示した。第1主成分との相関の高い(主成分負荷量の高い)比体重およびQuetelet (Kaup)指数は,体格をあらわす指標として用いる場合年齢を考慮する必要が大きく,他方Rohrer指数,Livi指数,ponderal指数および標準体重との比は年齢による影響が相対的に少ないものと考えられる。第2主成分およびそれと直交する第3主成分の両者に関運が認められた皮下脂肪厚については,単に肥満をあらわす指標としてのみ理解することはできない。
  • 木村 邦彦, Ronald SINGER
    1980 年 88 巻 4 号 p. 423-438
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    ナミビァの3~17歳の男49名,女61名のホッテントットと,白人との混血であるナミビァのレオボス•バスターと南アフリカのケープ•カラードの1~21歳の男124名,女113名の,手のX線像から計測された第二中手骨の中央での緻密骨質幅の成長が,実測値のほか,長経と幅径との相対値を併せて,暦年齢とTW2骨格年齢とから論じられた。成績は,主にアメリカ黒人と白人,そして日本人の結果と比較されている。骨質幅は一般に男より女で,またホッテントットよりレオボス•バスターで厚い。比較された4集団では,アメリカ白人と黒人が最も大きい値を,ホッテントットが最も小さい値を示した。ホッテントットと白人との混血集団はアメリカ人とホッテントットの中間の値を示した。radial ratioと長径に対する骨質幅の比はアメリカ黒人よりも白人でやや大きい。この比でもホッテントットは4集団中最も小さいが,レオボス•バスターはアメリカ黒人と大きい差はない。
  • 豊増 翼, 松本 秀雄
    1980 年 88 巻 4 号 p. 439-442
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    388名の大阪在住集団より得た血球試料について等電点分画法によりPGM亜型検索を行った。互いに優劣のない常染色体上の4つの対立遺伝子PGM11a, PGM11b, PGM12a, PGM12bによって説明される10表現型と,7例の稀れな表現型を見出したが,後者は澱粉ゲル電気泳動法による7-1型と6-1型に同定された。推定遺伝子頻度はPGM11a, O.6907, PGM11b,0.0889, PGM112a,0.1662, PGM12b,0.0451, PGM1var,0.0090である。東京,神奈川,三重などの集団における報告と今回の結果には有意差を認めなかった。等電点分画法の応用により,ヒトの変異に関する研究への本酵素多型検索の寄与は更に大きくなるものと期待される。
  • G. AUE-HAUSER, 岡島 道夫, R. WYTEK
    1980 年 88 巻 4 号 p. 443-454
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    第II, III, IV, V指の指関節部屈曲シワを1型(シワが1本のM型と2本のD型の両者)と2型(3本以上からなるT型)に分類し,さらに通常の位置から離れたところにシワがある場合をE型(extra crease)とし,シワが指節のほぼ中央に存在する場合をE+型とした。日本人男子203人,女子201人について調べた結果,4本の指の末節部(遠位側指関節)と第II,V指の基節部(掌指関節)のシワでは1型の出現が顕著であった。E型は第III指基節部にもっとも多く現われ, E+型は稀であるが出現するのは主として中節部である。一般的に男の方が1型の出現が高くなる傾向がみられた。
    各指について,3つの指節(指関節)のシワを連記の形(triplet)で表示して頻度を求めると,男女の間および左右の間で同じ傾向がみとめられた。また,男女おのおの300人のウィーン住民についての検査でも同様の成績が得られたが,いくつかの指節において日本人の方が1型の頻度が高い値を示した。
  • 中嶋 八良, 斉藤 恵, 村田 繁子
    1980 年 88 巻 4 号 p. 455-466
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    5,000例の日本人供血者血球試料についてYta 抗原を,またそのうちの70例についてはYtb 抗原を同時に,検査したが,Yt(a-)型やYt(b+)型はみつからず,日本人の間ではYtb 遺伝子がないか或いは稀にしか存在しない事が示唆された。
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