ヒトの皮脂(前腕から採取したもの)132例について,脂肪酸の分析を行ない,年令的相関関係を検討した。
皮下脂肪その他体内脂肪に通常みられるパルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸等の脂肪酸については,皮下脂肪に多量にみられたオレイン酸は,比較的少なく,逆に皮下脂肪に少ないステアリン酸が多量にみられ,皮下脂肪とはその脂肪酸組成が大いに異なる。これを年令的にみると,皮下脂肪は,明らかにパルミチン酸対オレイン酸の割合が,年令と共に増加していく傾向があるのに対し,皮脂には顕著な傾向がみられなかった。
皮脂の特徴である分枝脂肪酸の中,ペンタデカン酸のグループ(イソペンタデカン酸,アンテイソペンタデカン酸)において,イソ,アンテイソ両者の比が,イソの方が多いA型と,アンテイソの多いB型との二つのタイプに分れた。これを年令別に検討してみると,1-6才および50-82才の年令群には,B型が存在せず,7-11才,30-49才では,A型がB型より多いのに対し,18-29才の若い年令群では, B型がA型の倍以上と圧倒的に多かった。
各年令群のA型とB型について,パルミチン酸対ステアリン酸の比およびパルミチン酸対オレイン酸の比をみると,B型では,7-11才,18-29才において,パルミチン酸対ステアリン酸の値が非常に高かった。
ステアリン酸,オレイン酸のグループとペンタデカン酸のグループとの関係では,ステアリン酸の多いものにB型が多い。これは,18-29才の年令群に圧倒的に多く,20才代の特徴といえる。
以上の結果から,皮脂分泌の盛んな若い時期に,ステアリン酸の多くアンテイソペンタデカン酸の多い皮脂が分泌されていることが判明した。
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