人類學雜誌
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90 巻, 1 号
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  • 遠藤 萬里, 高橋 秀雄
    1982 年 90 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    長骨を力学的に解析する場合,その断面形態の力学的諸特性値を知ることが重要である。しかし,それらを手で測定することは容易でない。近年,計測機器や計算機器の発達にともない,この測定作業が容易になってきた。それとともに,長骨骨体断面の力学的諸特性値を論ずる論文が急速に増加し,人類学領域でも多く見られるようになった。しかし,その測定法を具体的に論述してある報告は非常に少ない。したがって,あらたに測定しようとする者にとっては不便な状況にある。本報告は長骨骨体断面形態の力学的諸特性値とその機態形態学的意義について解説し,それを測定計算するさまざまな方法とそれに要する諸機器について具体的に述べたものである。長骨骨体の断面のような不規則図形の測定は工学や物理学ではあまり必要がないので,本報告に類するものがない。したがって,本報告で述べている方法や計算式の一部は今までどの分野でも公表されていないものである。
    断面形態の諸特性値とは図心点位置,面積,断面2次モーメント,主軸位置,主断面2次モーメント,極モーメント,回転半径,断面係数などである。しかし,面積,図心点,断面2次モーメントが得られれば,他の特性値は導出できる。上記の特性値を得るには,任意の直交座標をつくり,その軸まわりの0次,1次,2次のモーメントを測定演算する。この場合単軸まわりの測定法と直交2軸まわりの測定法がある。単軸まわりの測定から主軸や主断面2次モーメントを求めるには,特別な演算式を使う。任意の軸まわりのモーメントを求める場合,測定法はさまざまである。本報告では測定法,測定器,演算式の各種の使いやすい組合せを考えた。
  • IV. 室町時代
    井上 直彦, 郭 敬恵, 伊藤 学而, 亀谷 哲也
    1982 年 90 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    すでに報告した鎌倉時代,後期縄文時代,および古墳時代(井上ほか,1981A, B, C)につづいて,室町時代人骨にみられる歯科疾患像に関する調査を行った。
    資科は,東京大学総合研究資料館人類先史部門所蔵の室町時代人頭骨127体のうち,保存状態が良好で紛失歯が比較的少ない,永久歯咬合期あるいは混合歯咬合期の上顎歯列弓24例と,下顎歯列弓17例とであった。これらのうち,16組の上下顎は対をなしていて,咬合状態が再現できるものであった。
    観察対象となった資料の数が必ずしも十分ではないので,ここではあまり多くの考察を加えず,むしろデータを記録しておくことを主な目的として報告した。しかし,すでに報告した各時代に関する知見や厚生省による現代の資料との比較によって,この時代の齲蝕がおおよそつぎのような性格のものであったであろうことが推測された。すなわち,齲蝕の頻度と分布様式は鎌倉時代に近いが,重症度はさらに低く,病因的にも discrePancy の影響が主体となっているように思われた。
  • 横山 真太郎
    1982 年 90 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    著者が先に提示した局所筋エネルギー代謝量の推定方法(YOKOYAMA,1980a)に基づき,11項目の静的姿勢保持中の身体主要5筋群のエネルギー代謝量を推定した。そのために,各個人毎に11項目の総エネルギー代謝量並びに推定対象5筋群の代表筋とその他13筋計18筋の表面誘導筋電図積分値の同時測定を行なった。それらを既知数とする6元1次連立方程式を解き,局所筋エネルギー代謝量を求めた。
    被験者として21~23歳の青年男子4名を用いた。今回の推定対象筋群は脊柱起立筋群,臀筋群,後下腿筋群,前大群筋群,後下腿筋群で,いずれも総筋重量に多大な割合を占めるものであった。姿勢項目は1)爪先立ち;2)登り坂上立位;3)緊張立位;4)弛緩立位;5)下り坂立位;6)中腰姿勢•膝関節約180°;7)中腰姿勢•膝関節約120°;8)中腰姿勢•膝関節約90°;9)深前屈姿勢;10)俺坐位;11)仰臥位であった。
    それらの結果の平均値,標準偏差,変動係数を Table 4にまとめた。
    Kcal/h という普遍的単位をもつ局所筋代謝量の観点から過去の筋電図学的研究より示唆されていた5筋群の特性,姿勢の特性に関して検討を加えた。また,過去の静的姿勢保持の持続時間の測定結果と考え合せ,筋群一側当りの局所代謝量が10Kca1/h を越えるとその姿勢の長時間保持が不可能となることを示唆した。
  • ゴンド語族とテルグ語族との比較
    安部 国雄
    1982 年 90 巻 1 号 p. 37-52
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    インド中央州バスタール地方の原住民ムリア,アブジュマリア,バイソン•ホーン•マリアの3部族(ゴンド語族)と,アンドラ州ハイデラバードとビサカパトナム2地域住民(テルグ語族)の生体計測的形質を比較検討して次の結果を得た。
    (i)バスタール3部族相互の間の諸形質は互によく類似している。(ii)2地域のテルグ語族相互の諸形質の間に地域差は認められない。(iii)これらゴンド語族の測度の大部分はテルグよりも小さく,より長い頭型とより広い顔型に傾むくが,前者の鼻幅が大きく,従って鼻示数の著しく大きいことが両者の形質の間で最大の差異である。
    しかし両語族の形質のこれらの差異は,両語族の人種的差異を示すほどのものではなくて,中央インドのドラビダ系言語族或いは同一人種系統での変囲内に止まるものであると考える。
  • Hideo TAKAHASHI
    1982 年 90 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    有限要素法(Finite Element Method)という応力解析の手法を導入し,現代人大腿骨の近位部への応用を試みた。この手法によって得られた主応力の方向と大腿骨のX線写真上で見られる海綿質の方向について,差の検定を行い,von MEYER の仮説(海綿質の流れは主応力方向と一致する)に対して,初めて定量的分析を加えた。
    有意差はない(P=0.93)という結果が得られたが,分散がやや大きく(σ=15.5°),この任意性がモデルの精密化によって克服されるのか,あるいは生体固有のものなのかという判断は以後の分析を待たねばならない。しかし,大腿骨近位端において,その一般的な形状は力学的に適応したものであろうどいうことが示され化石標本の機能的解釈への応用が期待される。
  • 渡辺 聰子, 和田 洋, 欠田 早苗
    1982 年 90 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    発掘骨の資料は収集が偶発的であるたあに,地方差の検討も計画的には行えない。近世のものでも保存状態の不良のものが多く,人類学的資料として使用に耐えないものが多い。
    今回の報告は,中国地方における近世の頭蓋についてゞある。男性では,長頭傾向が明らかで,高径がわずかに小さく,頬骨弓巾や鼻巾がやや大きい値を示している。また,舌下神経管二分,インカ骨,副眼窩下孔,副オトガイ孔の出現頻度が低いという特徴を除いては,畿内の近世の頭蓋との間に大きな変異はなさそうである。近世中国地方人に関する記載は少いので,少数例ではあるが報告し,今後の研究の一助としたい。
  • 百々 幸雄, 松崎 水穂
    1982 年 90 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    北海道上ノ国町洲崎館跡より15世紀中葉の珠洲焼系の擂鉢を被って発見された成年男性頭骨は,形質人類学上,和人頭骨とみなすことができる。顔面部には現代的な特徴も見受けられるが,脳頭腎の著しい長頭性や鼻根部の扁平性は,中世的な特徴を表わしていると思われる。
  • (3)発掘人骨(歴史時代•時代不明)
    池田 次郎
    1982 年 90 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 1982年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
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