人類學雜誌
Online ISSN : 1884-765X
Print ISSN : 0003-5505
ISSN-L : 0003-5505
81 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 3.マカク血液蛋白多型の特徴
    石本 剛一
    1973 年 81 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    本論文は前篇で観察されたさまざまなマカク集団の血液蛋白変異を総括的に考察したものである。マカク全体としてヒトに類似する血液蛋白の多型性比率がみられたが集団間で変異性の程度が著しく異なることが特徴的であった.マカク血液蛋白変異はその表現型分布から数種に分類しうるが大別すると次の2群になる.第一はTf,Hb,PGDなどのように大陸産マカクに多様な変異型を認めるに対して,島喚性サル集団では一般に単一表現型を示すような形質,第二はPHI,Diaのようにマカク属のそれぞれの種に特異的な遺伝子をもち,しかも特有な遺伝子分布を示す形質である。第一群は地理的隔離と淘汰が表現型分布に影響を与えた可能性もあるが第二群はおそらく淘汰に関係ない突然変異と遺伝的浮動の結果と推論された。とくにニホンザルで変異遺伝子分布が群れ間で著しい相違のあることを見出したが,この事実はマカクの生態的隔離が,同一種内においても群れの遺伝的構成に著しい相違をもたらすことを示すもので遺伝的浮動の影響が大きいと見なされた。さらに遺伝子置換距離を指標としてマカク集団間の系統関係を推測する試みがなされている。
  • 乗安 整而
    1973 年 81 巻 1 号 p. 14-24
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    日本人のBrachymesophalangia5について,成人男女を対象に従来の判定基準(第5指中節骨長の末節骨長に対する比が1以下)に代る示数を,判別函数の利用により求あることを試みた。得られた判別函数によるBrachymesophalangia5の頻度は,男3.2%,女13.7%であった。この結果から,男では,長径でもっとも相関の高い第5指中節骨長と第4指中節骨長の比MP5L/MP4Lと,第5指中節骨の長径と幅径の比MP5B/MP5Lが,Brachymesophalangia5の判定にもっとも適していると考えられ,それぞれ<0.55,>0.60の判定基準が得られた。しかし女では,判別函数による判定は可能であるが,有効な示数の判定基準を得るにいたらなかった。
  • VI.下顎大臼歯
    酒井 琢朗, 花村 肇
    1973 年 81 巻 1 号 p. 25-45
    発行日: 1973年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    下顎大臼歯のエナメル•ゾウゲ境には,頬側面辺縁隆線,頬側cingulum, cingulumprotoconid crest,横走隆線等の原始的形質が,境界の明らかな鋭い隆線として出現する.これら形質の形態とその周囲浮彫像は,Teilhardina,ゴリラ,AustralopithecusあるいはSinanthropus等の下顎大臼歯エナメル質表面のものときわめて良く類似している.Protostylidはエナメル•ゾウゲ境においてはしばしば結節としての形態を失いcingulum状を呈する。エナメル•ゾウゲ境において,頬側cingulumの遠心上昇部はhypoconulidの頂点に終り,この咬頭がcingulumから由来したものであることを示している.このほか,metaconidの咬合面隆線,第6咬頭,舌側中間副結節等の形態を観察した.
feedback
Top