口唇, 口蓋裂の治療において, その内容をより良い形で進めていくために, 母親および家族の患者に対する認知的, 感情的側面ならびに行為的側面の変化について, 日常生活において最も患者と密着度の高い母親に対し, 時系列的変化の視点より, 各治療段階において自由記述方式による質問調査を行っているが, 今回は口唇裂, 口蓋裂手術後について, 口唇裂(Cleft lip)104名, 口蓋裂(Cleft palate)71名, 口唇・口蓋裂(Cleft lip and palate)218名, 計393名について集計を行い, 以下の如き結論を得た.
1.手術が施行されることにより, 母親および家族の心理的圧迫は大幅に軽減される.この傾向は, 口唇裂手術においてとくに著明であった.
2.母方の祖父母は, 術前より患者の母親に対して協力的で, 術後も著しい変化はみられなかった.
3.父親の姉妹の中で, 術前より利己的で, 患者の母親に対して非協力的な場合は, 術後もあまり変化はしていなかった.
4.近所の人々の態度は, 比較的無関心であり, 今だにこうした疾患に対する啓蒙は, 充分とはいえないことが推測された.
5.母親の心配事項は, 術後においても容貌に関するものが多く, 一次形成手術後は一応安心するものの, 完全でないことに対する不安が残るものと思われる.また, 口蓋裂単独群では手術後も言語に対する不安をもつものが多く, 術直後に言語判定のできぬことが原因と思われる.また, 歯列矯正, 顎の成長といった口腔機能の改善への不安をもつものも多く, 手術後は, これらの母親の不安に対する心理的対応が重要だと思われた.
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